既定の経路を走行する路線バスやシャトルバスなどは、レベル4自動運転を生かす最適のサービス形態である。無人バス分野では、フランスのスタートアップNavya(ナビヤ)やEasyMile(イージーマイル)が先行する。
物流も自動運転レベル4を生かす最適なサービスの適用分野として、大きな注目を集めている。特に、宅配を担うラストワンマイル系の配送ロボットの試験運用が世界中で始まった。
無人バス、無人配送車、自動運転農機
無人自動運転車の開発動向は、主に自動運転タクシーに注目が集まっているが、それ以外への自動運転技術の拡大が、無人バス、無人配送サービス、自動運転農機などで始まった。
無人バス
既定の経路を走行する路線バスやシャトルバスなどは、レベル4自動運転を生かす最適のサービスである。無人バス分野では、フランスのスタートアップNavya(ナビヤ)やEasyMile(イージーマイル)が先行する。
2017年9月、イージーマイルは混在交通下での初のシャトルバスサービスを開始した。レベル4に対応した運転席のない自動運転モデルで、「EZ10」は全長4.05m、全幅1.892m、全高2.871m、最大12人乗り、最高時速:40km/hで走行する。
イージーマイルは、トゥールーズ、ベルリン、デンバー、シンガポール、オーストラリアのアデレードに拠点を設け、2021年5月時点で30カ国以上で180台以上の自動運転シャトルを走行させた。2016年にはDeNAと業務提携し、私有地で「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」を運用。
2020年11月、茨城県境町で自動運転で公道を走るEVバスの定時運行がスタート。自治体が公道で走らせて定時運行するのは、国内では初めての事例となる。境町が自動運転事業の運行管理を推進するボードリー(BOLDLY、旧SBドライブ)と、輸入商社マクニカの協力で実現した。東京羽田(HICity)でも運行。
フランスのレベル3対応EV「NAVYA ARMA(ナビヤアルマ)」で境町は3台購入して、5年間分の予算として5億2000万円を計上。運行管理やそれに伴う人件費を含むパッケージで契約した。往復約 5kmを最高18km/hで走行し、運行時間は平日の午前10時から午後3時30分まで8便で、運賃は無料である。
2021年1月、日本国内でマクニカが無人運転シャトルバス「NAVYA Evo(ナビヤエヴォ)」の販売を開始した。NAVYA Evoは、2021年12月時点で25カ国において200台以上が販売。
レベル4対応車で、ハンドル無し、運転者なしで運行、全長4.78m、全幅2.10m、全高2.67m、立ち席4人を含む最大15人乗り、航続時間:9時間(航続距離:200km)、最高時速:25km/h(推奨速度18km/h以下)で走行。
2023年4月、NavyaはGaussinによる事業の一部買収と、清算が行われ上場廃止を発表した。
2018年7月、中国の百度(バイドゥ、Baidu)は、バスメーカーの金龍客車(キンロン、Kinglong)と共同開発したレベル4自動運転ミニバス「Apolong(アポロン)」の量産化をスタートした。運転席なしで、全長4.33m、全幅2.15m、全高2.715mで、最大時速:40km/h、中国の各都市で導入。
両社は19人乗りの中型自動運転バス「Robus(ロバス)」の公道実証試験も進めている。
2018年7月、ソフトバンクグループのSBドライブは、百度の日本法人バイドゥと協業し、アポロンを、日本で活用すると発表した。国内で「アポロン」を中核とした自動運転運営プラットフォームの構築を目指す。
2019年7月、トヨタ自動車が出資する米国スタートアップ企業「May Mobility(メイ・モビリティ)」が、ミシガン州グランドラピッズで5人乗りの自動運転シャトルの定期運行実証をスタートした。2022年6月には、ソフトバンクとの業務提携を発表している。
無人配送サービス
海外動向
物流も自動運転レベル4を生かす最適なサービスの適用分野として、大きな注目を集めている。特に、宅配を担うラストワンマイル系の配送ロボットの試験運用が世界中で始まっている。この分野は、ドローン配送サービスから無人コンビニまで、今後の幅広い発展が期待される。
2018年4月、エストニアと米国に本社を構えるスタートアップStarship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が、英国ミルトン・キーンズで自動運転ロボットによる商品配送を開始した。2019年1月には、米国ジョージメイソン大学でもサービスを開始した。
2018年6月、ソフトバンク・ビジョンファンドから出資を受けた米国スタートアップNuro(ニューロ)は、スーパー大手のクローガーと協力し、配送用自動運転車「R1」を活用した無人配達プロジェクトを発表した。第三世代の「Nuro」の積載重量は、約500ポンド(227kg)と軽自動車並みである。
2019年6月、ピザ宅配大手の米国ドミノ・ピザと提携し、自動運転車を使ったピザの無人配達事業をテキサス州ヒューストンで開始することを発表。
2019年1月、米国Amazon.comは、同社が開発した配達ロボット「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」の宅配実証実験に着手することを発表し、実験の場を米国内で拡大させている。
2019年3月、中国の京東集団が、スタートアップ「Go Further AI」と共同で無人配送ロボット「超影」を開発し、配送ステーションで稼働させた。同社は「5Gスマート物流モデルセンター」を上海に建設している。
2018年1月の「CES International 2018」で、米国スタートアップRobomart(ロボマート)が店舗型の自動運転無人車を発表した。専用アプリでRobomartを呼ぶと、無人自動運転で利用者の家の前まで来て買い物ができる。Robomartは、時速約40kmで連続130kmを走行できる。
同様に、スウェーデンのWheelysと傘下のHimalafy、中国の合肥工業大学が共同で、無人コンビニ「Moby Mart」の開発を進めている。
国内動向
国内ではスタートアップのZMPやHakobotが、宅配ロボットの実証実験を進めている。
2019年1月、ZMPが開発を進める宅配ロボット「CarriRo Deli(キャリロデリ)」を使った実証実験を、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内で実施した。また、韓国トップの宅配サービス企業であるWoowa Brothersと共同で、同年春に韓国初となる屋外ロボット配送の実証実験を行った。
カメラやレーザーセンサで周囲環境を360°を認識しながら、最高時速6km/hで自動走行する。また遠隔監視・遠隔操作も可能で、全幅52cm、全長52cm、全高40cm、最大積載量50kgである。
2018年11月、スタートアップのHakobotも、宅配ロボットの実証実験用端末初号機の開発を完了して公開した。実証実験に備え開発体制強化のため、三笠製作所と業務提携を行った。
2019年6月、楽天は離島などの一般利用者に、ドローンを使った商用配送サービスを発表した。買い物が困難な離島・山間地などの過疎地域や、地上インフラでの配送が困難な地域へのドローン配送サービス、一部の登録店舗ではロボットデリバリーサービスを展開している。
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