無人自動運転車の開発現状(Ⅵ)

自動車

 2023年10月、本田技研工業は米国ゼネラル・モーターズ(GM)と共同で、2026年初頭から東京都内で自動運転タクシーサービスを始めると発表。2024年前半にGM、GMクルーズとの3社でタクシー事業の合弁会社を設立し、共同開発したレベル4「クルーズ・オリジン」を使用する。

国内の開発動向

 2016年5月、警察庁が「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」、2017年6月、「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」を公表した。

 また、2018年9月、国土交通省は「自動運転車の安全技術ガイドライン」、2019年6月、「限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン」を策定した。

 その後、2019年の通常国会で「道路運送車両法」と「道路交通法」の改正案が可決され、2020年4月の改正法施行により、自動運転レベル3が国内で解禁された。道路交通法では自動運転レベル3まで、道路運送車両法ではレベル4までを見据えた改正である。

本田技研工業

 2021年1月、GM Cruise Holdings(GMクルーズホールディングス)、General Motors(ゼネラルモーターズ)と2018年10月に結んだ資本・業務提携関係に基づき、日本における自動運転モビリティサービス事業に向けた協業を行うことで基本合意した。
 本田技研工業は、日本での共同開発の一環として、GMの「Bolt」をベースとしたクルーズの試験車両を活用した技術実証を、2021年に国内で開始した。

 2021年3月、世界初の自動運転レベル3量産車「レジェンド」を発表した。高速道路で指示なしで複数車線の自動走行を可能とする自動車線変更機能や、渋滞時に運転者が周辺監視を行う必要がない技術を実現している。今後、一般道に拡大していく方針である。

 2022年4月、帝都自動車交通と国際自動車との協業により、東京都心部での自動運転サービスの提供に向けた検討を開始した。2020年代半ばの実現を目標に掲げている。

 2023年10月、米国GMと共同で、2026年初頭から東京都内で自動運転タクシーサービスを始めると発表した。2024年前半にGM、GMクルーズとの3社でタクシー事業を運営する合弁会社を設立し、本田技研工業が過半を出資する。本田技研工業がGMと共同開発したレベル4「オリジン」を使用する。
 サービスは数十台からスタートし、都内の法人タクシーの1.7%に相当する500台規模での運用を見込む。その後、順次台数を増加させ、サービス提供エリアの拡大を目指す。

図11 自動運転タクシーサービスで使う「オリジン」
出典:本田技研工業

日産自動車

 2018年2月、DeNAとの協業により、無人運転車を活用した新交通サービス「Easy Ride」の実証実験を神奈川県横浜市で開始した。2019年2月、事前予約方式からオンデマンド配車方式に変え、2021年にはNTTドコモのAI運行バスを組み合わせた実証実験を行った。

 2019年6月、日産自動車とルノーは、米国ウェイモと無人自動運転サービス事業で独占契約を締結した。日本とフランスで事業の可能性を検討し、中国を除く他の海外市場でも事業化を検討する。ウェイモのノウハウを活用し、3社で自動運転タクシー荷物配送サービスの早期実用化を図る。

トヨタ自動車

 2018年1月、米国ネバダ州ラスベガス「2018 International CES」で、移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス(MaaS)専用次世代EV「e-Palette Concept」を出展した。  
 すなわち、電動化、コネクティッド、自動運転技術を活用した車両で、新たなモビリティサービスを実現するモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)の構築を推進するため、技術パートナーとしてAmazon.comDidi ChuxingPizza HutUber Technologiesとアライアンスを締結した。

 2021年4月、高級車「レクサスLS」に独自の自動運転コンセプト「Mobility Teammate Concept」に基づく高度運転支援技術「Advanced Drive」を搭載して発売した。
 Advanced Driveは、レベル2+の先進運転支援システム。前方LiDARや深層学習ベースのAI技術、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新など、新技術を取り入れて安全性を高めた。

図12 トヨタ自動車のレベル2自動運転技術を搭載した「レクサスLS」
出典:トヨタ自動車

 2023年11月、中国上海市の国際輸入博覧会で、レベル4自動運転EV「bZ4XZ、ロボタクシー」の試作車を展示した。中国の新興企業「小馬智行(ポニー・エーアイ)」の自動運転システムを搭載し、将来的に自動運転タクシーとして中国市場への投入を目指す。
 両社は2019年に提携し、レクサスなどをベースにした自動運転タクシーの実験車両を数百台保有しており、北京や上海など中国4都市の一部で試験運行している。

自動運転サービスの実証実験

表2 自動運転の実現に向けた取り組み 出典:国土交通省

 2017年6月に協業を開始したロボットベンチャーZMPとタクシー事業者日の丸交通は、遠隔自動運転システムの公道実証実験を進め、2018年8月に営業実証実験を行い、2019年に空港リムジンバスと自動運転タクシーを連携させた都市交通インフラの実証実験を行った。

 2018年12月、名古屋大学発スタートアップのティアフォーは、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発を手掛け、標準化を推進する国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」の設立を発表するなど、世界展開を本格化している。

 2020年10月、ティアフォー、Mobility Technologies、損害保険ジャパン、KDDI、アイサンテクノロジーは、ユニバーサルデザイン仕様の「JPN TAXI」を基に自動運転システムの実装を進めており、5Gによる遠隔監視システムで複数台の車両を監視する公道実証を西新宿エリアで実施した。

 2022年2月、大成建設など9社は、新宿駅西口エリアで自動運転車サービスの実証実験を行った。東京都は「未来の東京戦略」の一環で2025年無人自動運転による移動サービスの実現を掲げており、大成建設は2023年度に5Gによる自動運転サービス開始を目指している。
 実施ルートは、新宿駅西口の地下ロータリーから出発し、都庁~新宿中央公園前を経由して、地上側の新宿駅西口中央通りで下車する。乗車と下車は既存のバス停留所を使用し、実験では安全を考慮してセーフティードライバーが乗車するレベル2での運行であった。

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