米国では、2018年12月にグーグル系Waymo(ウェイモ)が完全無人化ではないが、レベル4の自動運転タクシーを実用化している。カリフォルニア州、アリゾナ州、フロリダ州などで、州法による規制・許可に基づいて自動運転の公道実証が進められてきた。
米国の開発動向
米国では、カリフォルニア州、アリゾナ州、フロリダ州などで、州法による規制・許可に基づいて自動運転の公道実証が進められてきた。
2022年3月、世界の自動運転開発企業が集う米国カリフォルニア州で、ウェイモとCruise(クルーズ)が無人走行と有償による商用展開許可を取得した。両社はサンフランシスコなどで住民を対象としたパイロットプログラムや無料サービス実証を進めてきた。
これを受けて、2022年3月、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、ハンドルなどの手動制御装置を備えない新規格の自動運転車の実用化を見据え、国としての統一した法整備に向けて連邦自動車安全基準(FMVSS)の改訂に動き出した。
テスラ・モーターズ
2015年、運転支援機能「オートパイロット」を搭載した半自動運転車を発売した。その後、オートパイロットの改良を続けており、現在は全4車種に搭載している。
2019年4月、Robotaxi(ロボタクシー)事業へ参入し、2020年半ばまでに完全自動運転車を100万台以上生産すると公表した。テスラ車をリース契約したオーナーが、TESLA NETWORK(テスラネットワーク)に登録することでマイカーをロボタクシー化する構想も発表した。
2020年10月、一部のオーナーを対象に「Full Self Driving(FSD)」の提供を開始した。名称は完全自動運転であるが、実際は運転操作の主体が運転者であるレベル2相当の自動運転「Advanced Driving Assistant System(ADAS)」である。
技術の進化に合わせて無線ソフトウェアの更新(OTA)でアップグレードし、自動運転に徐々に近づけていく方針としており、対象者も徐々に拡大している。
2023年1月、カリフォルニア州で改正自動車法が施行され、テスラの「FSD」という名称が実質的に使用できなくなった。自動運転機能だと誤解させる名称をメーカー側に使わせないためである。
グーグル傘下のウェイモ
自動運転タクシーの商用化では、Google系の自動運転開発企業であるWaymo(ウェイモ)が先行した。
2018年12月、世界初のレベル4自動運転タクシーの有料商用サービス「Waymo One」をアリゾナ州フェニックス郊外で開始した。当初はセーフティドライバー同乗のサービスで、2019年10月に一部ユーザーを対象に無人自動運転タクシーを導入し、2020年10月に対象を一般ユーザーに拡大した。
2019年1月、ミシガン州経済開発公社から、自動運転車を製造する承認を得た。パートナー企業の Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)やJaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)から、購入した車両をレベル4自動運転車に改良する。
2019年6月に日産自動車、ルノーと、2020年6月にボルボ・カーズと、2020年10月にはダイムラートラックと、それぞれパートナーシップを締結した。
2020年3月、第5世代Waymo Driverを発表した。300m超の範囲を360°カバーする高解像度LiDARや、歩行者や500m以上離れた標識などを識別可能な長距離カメラと360ビジョンシステムなどが搭載され、より高精度での物体検知・認識を可能にした。
2021年8月、カリフォルニア州サンフランシスコで、一般市民を対象とするセーフティドライバー同乗の自動運転タクシーのサービスプログラム「Waymo One Trusted Tester」を開始した。2023年2月には同州ロサンゼルスでも走行テストを開始すると発表した。
2022年7月、テキサス州で自動運転トラックによる家庭用家具配達サービスを実験的に実施すると発表した。期間は2022年7〜8月にかけての6週間。家具家電のオンラインストア「Wayfair」と提携する。
2023年8月、ウェイモの申請を受けたカリフォルニア州が、サンフランシスコでの終日有料の自動運転タクシーサービスの営業運行を承認。対象となる自動運転車の数に制限はない。
GM傘下のクルーズ・オートメーション
2016年、米国ゼネラル・モーターズ(GM)に買収されたCruise Automationは、社名をGM Cruiseに変えた。ソフトバンクや本田技研工業などから総額72.5億ドルを調達した。
2017年末、米国都市部におけるロボタクシーサービスを、2019年に開始すると発表したが、2019年7月には、安全を重視するためとして延期した。
2020年1月、GMクルーズは、カリフォルニア州サンフランシスコでバンタイプの無人自動運転車「Origin(オリジン)」を発表した。運転席が無いため広い空間で対面6人乗り、レベル4相当のモデルで、低速オンデマンドバスなどのサービス形式が考えられている。
2021年1月、Microsoftとの戦略的提携によりクラウドサービス「Azure」を自動運転技術で活用すること、GM、GMクルーズ、本田技研工業が、日本での自動運転サービス事業の協業に合意したことを発表した。
2021年4月、自動運転タクシーの独占的運行契約をドバイ道路交通局と結び、2023年からドバイで自動運転タクシーの運行を開始すると発表。車両には「Origin(オリジン)」を使い、緊急時でも人による対応を前提としない自動運転レベル4以上の技術で運行する。
2022年2月、カリフォルニア州サンフランシスコで、一般向けにセーフティドライバーが同乗しない自動運転車による移動サービス「ロボタクシー」の受け付けを無償で始めた。公式サイトで登録し、順番が来れば誰もが乗車できる。
2023年6月、サンフランシスコで「完全無人タクシー」の有償運行が始まった。同年12月には、アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンでも、サービスを開始した。
2023年10月、GMクルーズが全ての車両のドライバーレス運行を一時停止すると発表した。カリフォルニア州陸運局が、州内重大事故により運行許可を停止してから2日後の公表である。
同社は、10月上旬のピーク時に全米で400台のロボタクシーを運行していた。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、クルーズのロボタクシーが歩行者を負傷させた2件の事故について調査している。
フォード・モーター
2016年、レベル4自動運転車を2021年までに実用化し、配車サービス向けに供給し、モビリティサービス企業への転換計画を発表した。2017年にAIシステム開発の米国スタートアップArgo AIを買収し、2018年6月にフォルクス・ワーゲングループと戦略的提携を締結した。
2020年6月、ハンドルを放して自動走行できる運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト」を初搭載したスポーツ車「マスタング・マッハE」など、複数モデルを2021年秋に発売すると発表した。
2022年5月、フォルクスワーゲンと共同出資した自動運転タクシーのサービス「アルゴAI」を、フロリダ州マイアミとテキサス州オースティンで展開すると発表。しかし、同年10月、レベル4の先進運転システム(ADAS)の開発計画を中止し、レベル2と3の自動運転車に注力すると発表した。
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