現在、多くの自動車メーカーや関連企業が、無人自動運転車の市場拡大に注目している。「自動運転車(AV:Autonomous Vehicle)」や「ロボットカー(Robotic Car)」のほか、「無人車(Driverless car)」という表現あるが、基本的に同じものである。
一方、国内では大きな変化があった。「2024年問題」を乗り切るための方策として、国土交通省が個人タクシーの年齢を80歳まで引き上げたほか、タクシー運転者としての「外国人労働者」の受け入れ拡大の方針である。本当に、このような対策で日本の将来は大丈夫であろうか?
無人自動運転とは
無人自動運転タクシーの商用サービスが米国で始まり、最近では中国北京でも商用サービスが始まったとの情報がある。一方、国内では2023年4月に改正道路交通法が施行され、自動運転レベル4(限定領域での自動運転化)が解禁されたが、未だ実証試験の段階にある。
世界のタクシー業界が大きな変革を進める一方、国内でも大きな変化があった。「2024年問題」を乗り切るための方策として、国土交通省が個人タクシーの年齢を80歳まで引き上げたほか、タクシー運転者としての「外国人労働者」の受け入れ拡大である。このような策で日本の将来は大丈夫であろうか?
何故、自動運転なのか?
国土交通省は自動運転の効果として、① 死亡事故の大部分は「運転者の違反」に起因しており、自動運転の実用化により交通事故を削減、②地域公共交通の維持・改善、運転者不足への対応、渋滞の緩和・解消などを上げており、自動車メーカーの国際競争力の強化を期待している。
そのため、2025年度を目途として「自家用車の高速道路でのレベル4の実現」、「限定領域での移動サービスを50カ所程度で実現」、2025年度以降には「物流サービスの高速道路でのレベル4の実現」を目標に掲げた。
自動運転が実現することで、夜間も含めた24時間ライドシェアサービスが可能になる。特に、多数のセンサーが広範囲の情報を収集し、人工知能(AI)で意思決定を行うために、走行環境に変化が生じない限り悪天候でも安定走行が可能で、運転を重ねるごとに自動運転技術が改善し続けられる。
現在、移動サービスの一つである自動運転タクシーの実現が、世界的に注目を集めている。運転席に運転者がいなくても自動運転で走行するタクシーは、ロボタクシーとも呼ばれている。運転者不在のため人件費が抑えられ、将来的には運行コストが1/10以下になるという調査結果もある。
最も興味深いのは、乗客にとって自動運転タクシーのサービスは、現在の配車アプリを利用する時と変わらない点である。すなわち、乗客はスマートフォンに乗降場所を指定してでタクシーを呼び、決済処理の後に降車するシンプルな方法で利用できる。
今後、自動運転の実用化・普及のためには、車両の技術開発のほかに、走行環境の整備、社会受容性向上などの総合的な取組みが必要である。特に、最近では自動運転者に関する①安全と安心、②地域の理解、③事業の継続性などの社会受容性に関する問題が議論され始めている。
自動運転に必要な技術
自動運転では、自動車を運転するための3要素である「認知」「判断」「操作」をシステムが自動で行う。すなわち、カメラやセンサー、全地球測位システム(GPS)などにより周辺環境を認知し、得られた情報を人工知能(AI)などが判断し、アクセルやブレーキ、ハンドルなどを操作する。
そのため、自動運転の実現には、多くの先進技術の開発が不可欠とされている。
認知(認識技術、位置特定技術、通信技術)
認識技術は、周辺の車両、障害物、歩行者、道路状況を人の目に代わり認識する。カメラ、レーザー、赤外線、超音波などのセンサーを複数活用し、対象物との距離計測や立体視をリアルタイムで行う。多くのスタートアップが、光リモートセンシング(LiDAR)開発に挑戦している。
位置特定技術は、GPS(全地球測位システム)やQZSS(準天頂衛星)を用いて位置測定を行うほか、道路に敷設した磁気マーカーを車両底部の磁気センサーで計測する方法がある。
得られた位置情報を、高精度3次元地図に交通情報などをリアルタイムに付加する「ダイナミックマップ」と合わせることで、より精度の高い自動運転が可能になる。
通信技術は、自動運転車が収集した情報を自車だけで完結させず、常にサーバーと接続してビッグデータを活用し、情報更新して安全運転につなげる。路車間通信(V2I)、車車間通信(V2V)、遠隔型の自動運転など、第5世代移動通信システム「5G」を使った実証試験が進められている。
判断(AI技術、予測技術、プランニング技術)
AI技術は、カメラやLiDARなどで得られた画像や自車の走行状況などを予測・解析し、車をどのように制御すべきかを人の頭脳の代わりに判断する。人工知能(AI)が予測アルゴリズムや意思決定アルゴリズムなどに基づいて判定する。
予測技術はAIにも関わるが、歩行者や自転車の飛び出しなどの事故リスクや、天候や路面状況などに災害情報も加味して発生しうる危険性などを予測し、自動運転により減速や一時停止、迂回などの処理につなげる安全走行に不可欠な技術である。
プランニング技術はAIにも関わるが、近くを走る走行車や障害物、歩行者、自転車などの位置を認識することで、どの走行車線やルートを走行したら最も安全であるかをリアルタイムに算出し、実際の走行経路に反映させる。
基盤技術(セキュリティ技術、HMI技術、遠隔監視技術)
高度なセキュリティ技術は、通信技術で常に外部とつながる自動運転車(コネクテッドカー)では不可欠である。自動運転車がハッキングされた場合、情報の流出だけでなく大きな危険を伴う物理的な損害も予想される。
ヒューマン・マシンインターフェース(HMI)技術は、自動運転から手動走行に切り替える場合やトラブルなどで緊急停車する場合など、乗客と自動運転車はコミュニケーションを図る必要がある。また、周囲の歩行者とコミュニケーションを図る技術開発も進められている。
遠隔監視技術は、運行状況管理や緊急事態対応に必須である。無人自動タクシーなどの移動サービス車には緊急停止ボタンなどが取り付けられるが、次世代高速通信5Gにより管制センターで複数車両を常時監視し、必要に応じて制御する仕組みが使われている。
自動運転のレベル
自動運転は、運転支援システムを含めてどの程度の自動運転が可能かの技術水準によりレベル分けされている。米国自動車技術会(SAE:Society of Automotive Engineers)が、2014年1月に発表した6段階のレベル表示が主流となり、各国で広く採用されている。
日本の国土交通省はユーザーが自動運転車の機能を過信せずに正しく理解し、適切な運転が行えることを目的として、自動運転レベル0~5の呼称を策定している。ただし、自動運転レベル0は「自動運転を実現するための技術(運転自動化技術)が何もない状態」と定義されている。
自動運転レベル1は、「アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、部分的に自動化された状態」と定義されて、運転操作の主体は運転者であり、対応車両は運転支援車と呼ばれる。
自動運転レベル2は、「アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方が、部分的に自動化された状態」と定義されて、運転操作の主体は運転者であり、対応車両は運転支援車と呼ばれる。
自動運転レベル3は、「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」と定義され、対応車両は条件付自動運転車(限定領域)と呼ばれる。ただし、運転者は自動運行装置の作動中も直ちに運転操作を代われる状態でなければならない。
自動運転システムが作動する走行環境条件(ODD:Operational Design Domain)下で、アクセル・ブレーキ操作やハンドル操作を自動運行装置が担う。
自動運転レベル4は、「特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」と定義され、運転操作の主体は自動運行装置で、対応車両は自動運転車(限定領域)と呼ばれる。
自動運転レベル5は、「自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態」と定義され、運転操作の主体は自動運行装置で、対応車両は完全自動運転車と呼ばれる。
日本の自動運転
レベル1~2は運転操作の主体が運転者であるが、レベル3~5になると運転の主体が自動運行装置に移るためレベル3以上が自動運転と位置付けられる。2021年3月、レベル3(高速道路での自動運転車)「レジェンド」を本田技研工業が販売開始したことで、日本の自動運転時代が始まった。
今後の目標を、政府は2025年度を目途に、高速道路でのレベル4の実現、普及拡大に置いている。また、2027年度までにレベル4を全国100カ所で実現するとした。
2022年10月、警察庁は特定条件下での自動運転「レベル4」の運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法を2023年4月1日から施行すると公表。人口減が進む地域での遠隔監視による特定ルートの無人走行バスなどを想定し、政府は2025年度を目途に全国40カ所に拡大する目標を掲げた。
レベル4相当の自動運転を特定自動運行と定義し、移動サービスを始める場合、都道府県公安委員会に運行計画を提出し事前許可を受け、安全運行の確認や事故対応などのため車両内か遠隔監視場に特定自動運行主任者を配置することが義務付けられた。
2022年12月、北海道上士幌町は、ソフトバンク子会社のBOLDLY(ボードリー)と共同で、バスに乗車するオペレーターが交差点などでのみ手動で操作する「自動運転レベル2」による定期運行を開始した。
フランス製のBEV(乗車定員8人)を使い、指定ルートを20km/h未満で走行する。市街地約3.5kmを約30分で巡回する「道の駅循環線」の運行が、2023年6月に市街地と郊外を結ぶ約4kmの「西団地・北団地循環線」が加わった。月、木、土曜に6~8便/日の運行で、2024年1月末までの1年余で利用者数は延べ1606人。
2023年3月、国土交通省中部運輸局は、福井県永平寺町の「永平寺参ろーど」のうち約2km区間を運行する車両を、全国で初めて道路運送車両法に基づきレベル4自動運転車と認可した。自動運転を継続することが困難な場合(故障、天候の急変など)には安全に運転を停止する。
ヤマハ発動機製の電動カートを産業総合研究所が改造して自動運転機能を追加し、道路に敷設した電磁誘導線上を追従しながら時速:12kmで走行する。2023年4月1日より改正道路交通法に基づく許可を得て、運転者なしで自動運転移動サービスを開始した。
2023年1月、「永平寺参ろーど」の荒谷停留所から志比停留所に向け運行中の自動運転車が、人が乗っていない自転車と接触した。接触事故によるけが人はなく、事故原因について調査を行い、十分な安全対策が確認できるまで自動運転の運行を中止した。
2024年1月、茨城県つくば市は、自動運転バス導入に向け初の実証実験を始める。KDDI、筑波大学、関東鉄道、自動運転用高精度地図のアイサンテクノロジー、自動運転ソフトのティアフォー、損害保険ジャパンとSOMPOリスクマネジメントなどと協力し、実用化に向けた課題を検討する。
筑波大学周辺の1周約4kmのルートで、1月19〜30日の平日、オペレーターが乗り込み、状況に応じて手動運転に切り替える「レベル2」の自動運転バスを1日7便運行する。10人乗りEVバスは、センサーで安全を確認しながら20km/h未満で走る。事前に利用者を公募し、無料で乗車できる。
2024年1月、群馬県は前橋市と共同で1月18〜21日に自動運転バスの実証実験をすると発表。JR前橋駅と県庁間(往復3km)の公道で、午前9時〜午後6時、1時間に2往復走行し、システムの動作確認やデータ取得を行う。群馬大学発スタートアップの日本モビリティが協力。「レベル2」で実施し、関係者以外は乗車できない。
2024年2月、高松市と屋島山上交流拠点施設「やしまーる」の指定管理者イーストは、一般客を乗せた自動運転の実証実験を実施。2月23日~3月3日の午前10時~午後4時、1日6便で山上駐車場から屋島スカイウェイの展望スペースまで約2kmを往復する。運行は「BOLDLY(ボードリー)」に委託する。
オペレーター1人が同乗し、ドアの開閉や緊急時の操作などをする自動運転レベル2の運行で、最高時速は20km/h未満。乗客定員7人のエストニア製小型EVバスを使用する。
2024年2月、福岡市は半導体商社マクニカが提供する自動運転車「ARMA(アルマ)」による自動運転の実証実験を実施。2月17日~3月3日まで1日6便程度で、JR箱崎駅周辺の公道約4kmを時速20km/h未満で、運賃は無料で、中型免許を持つオペレーター1人が乗車して「レベル2」の自動運転で運行する。
車両には15人乗車できるが、実験では定員を8人に限定し、商業施設や飲食店など5か所にバス停を設置し、デジタルマップから事前に乗りたい日時や人数を予約できる。
2024年4月、石川県加賀市が公道で自動運転EVバスの実証実験を始めた。特定条件下で完全自動運転する「レベル4」対応の車両を使い、北陸新幹線の加賀温泉駅と山代温泉総湯を結び、中間「イオン加賀の里店」で客を乗せる。走行距離は往復10kmで、1日計6〜7便を運行している。
使用する車両「EVO」は、フランスのゴーサンと半導体商社マクニカの合弁会社が開発・生産し車両価格は約8000万円、最高速度:25km/hで、乗客は8人の他に操作者と保安員が乗り「レベル2」運行である。測位衛星システム(GNSS)と、レーザー光で障害物との距離を測定するLiDAR(ライダー)で得た情報で自動走行する。
米国の開発動向
米国では、2018年12月にグーグル系Waymo(ウェイモ)が完全無人化ではないが、レベル4自動運転タクシーを初めて運行した。アリゾナ州、カリフォルニア州、フロリダ州などで、州法による規制・許可に基づいて自動運転の公道実証を行ったのである。
2022年3月、世界の自動運転開発企業が集まる米国カリフォルニア州で、ウェイモとGM Cruise(ジーエム・クルーズ)がドライバーレス走行と有償による商用展開許可を取得した。既に、両社はサンフランシスコなどで住民を対象としたパイロットプログラムや無料サービス実証を進めている。
以上の動向から、2022年3月、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、ハンドルなどの手動制御装置を備えない新規格の自動運転車の実用化を見据え、国としての統一した法整備に向けて連邦自動車安全基準(FMVSS)の改訂に動き出した。
テスラ・モーターズ
2015年に運転支援機能「オートパイロット」を搭載した半自動運転車を発売した。テスラはオートパイロットの改良を続けており、現在は全4車種に搭載している。
2019年4月、Robotaxi(ロボタクシー)事業へ参入し、2020年半ばまでに完全自動運転車を100万台以上生産すると公表した。テスラ車をリース契約したオーナーが、TESLA NETWORK(テスラネットワーク)に登録することで、マイカーをロボタクシー化する構想も発表した。
2020年10月、一部のオーナーを対象に「Full Self Driving(FSD)」の提供を開始した。名称は完全自動運転であるが、実際は運転操作の主体が運転者であるレベル2相当の自動運転「Advanced Driving Assistant System(ADAS)」であった。
技術の進化に合わせて無線ソフトウェアの更新(OTA)でアップグレードし、自動運転に徐々に近づけていく方針で、対象車も徐々に拡大している。
2023年1月、カリフォルニア州で改正自動車法が施行され、テスラの「FSD」なる名称が実質的に使用できなくなった。自動運転機能だと誤解させるような名称をメーカー側に使わせないためである。
2023年12月、「モデル3」「モデルY」など主力4車種の「オートパイロット」と呼ぶシステムに関して、米国で203万1220台のリコール(回収・無償修理)を届け出た。同システムは「レベル2」にあたり、当局が指摘したのは、ドライバーの誤使用を防ぐための対策不足である。
NHTSAは危険を招きかねない状況でドライバーに警告を鳴らす機能などが不十分と指摘した。テスラはソフトウエアアップデートを通じて修正する。
2024年4月、自動運転向け人工知能(AI)開発に100億ドル(約1兆5800億円)の投資を表明。2025年と2026年にも、それぞれ80億〜100億ドルの投資を計画し、8月には自動運転タクシー「ロボタクシー」を公表する。低価格EVを含む次世代車両をベースに自動運転サービスを拡大し、中国での実用化をめざす。
一方、同社の運転支援システムに関して、同4月に米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)がシステムに起因する約200万台のリコール(回収・無償修理)を再調査すると発表した。調査の結果次第では戦略に影響する可能性もある。
2024年10月、カリフォルニア州で、開発中の自動運転タクシー「サイバーキャブ」の試作車を発表。2人乗りのEVで、運転席はなくハンドルなどもなく、AI(人工知能)が車を動かす。2026年にも生産を開始し、価格は3万ドル(約450万円)以下にする。カリフォルニア州などで「レベル4」での運行を想定している。
2025年にカリフォルニア州とテキサス州で一部のEVに自動運転機能を持たせると表明した。
グーグル傘下のウェイモ
自動運転タクシーの商用化では、Google系の自動運転開発企業であるWaymo(ウェイモ)が先行した。
2018年12月、世界初のレベル4自動運転タクシーの有料商用サービス「Waymo One」をアリゾナ州フェニックス郊外で始めた。当初はセーフティドライバー同乗のサービスで、2019年10月に一部ユーザーを対象に無人自動運転タクシーを導入し、2020年10月に対象を一般ユーザーに拡大した。
2019年1月、ミシガン州経済開発公社から自動運転車を製造する承認を得た。パートナー企業 Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)やJaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)から購入した車両をレベル4自動運転車に改良する。
2019年6月に日産自動車、ルノーと、2020年6月にボルボ・カーズと、2020年10月にはダイムラートラックと、それぞれパートナーシップを締結した。
2020年3月、第5世代「Waymo Driver」を発表した。300m超の範囲を360°カバーする高解像度LiDARや、歩行者や500m以上離れた標識などを識別できる長距離カメラと360ビジョンシステムなどが搭載され、より高精度での物体検知・認識を可能にした。
2021年8月、カリフォルニア州サンフランシスコで、一般市民を対象とするセーフティドライバー同乗の自動運転タクシーのサービスプログラム「Waymo One Trusted Tester」を開始した。また、2023年2月、同州ロサンゼルスでも走行テストを開始すると発表した。
2022年7月、テキサス州で自動運転トラックによる家庭用家具配達サービスの実験的な実施を公表した。期間は2022年7〜8月にかけての6週間で、家具家電のオンラインストアWayfairと提携し、配送に自動運転トラックを使用する。
2023年8月、ウェイモの申請を受けたカリフォルニア州が、サンフランシスコにおける終日有料の自動運転タクシーサービスの営業運行を承認した。レベル4で、対象となる自動運転車の数に制限はない。
2024年3月、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)が、ロサンゼルス市や同市周辺での営業を承認した。米国では自動運転タクシーの安全性を懸念する声が出ているが、ウェイモが対策を強化したことを評価した。同社が本社を置くカリフォルニア州マウンテンビュー市などシリコンバレーの大半も営業地域となる。
2024年6月から利用者制限はなくなり、誰でも利用可となる。現在、商業運転中の全米3都市の利用回数は10万回/週にのぼり、親会社アルファベットは今後数年間でさらに50億ドルを投資して事業拡大をめざす。
2024年10月、ウェイモと韓国の現代自動車は、複数年にわたる提携を発表した。米国ジョージア州で組み立てられるEV「IONIQ(アイオニック)5」にウェイモの自動運転技術を搭載し、2025年後半までに路上テストを始め、数年以内にウェイモのロボタクシーサービス「ウェイモ・ワン」で利用可能にする。
ウェイモは米国で唯一ロボタクシーの有料サービスを提供し、アリゾナ州フェニックス、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルスで毎週10万回以上の利用がある。これまで英国ジャガー・ランドローバーを使い約700台保有し、中国の浙江吉利控股集団の高級EVブランド「ZEEKR(ジーカー)」でも試験を進めている。
2024年11月、サンフランシスコ、フェニックスに次いでロサンゼルスでも自動運転タクシーサービスの一般提供を始めた。利用登録すれば誰でも有料で乗車できる。提携するライドシェア大手のウーバーテクノロジーズを通じ、2025年に南部テキサス州オースティンと南部ジョージア州アトランタでもサービスを始める。
ロサンゼルス市では2024年3月から、先行して一部の利用者に自動運転タクシーを提供していた。専用アプリをダウンロードし、利用登録を済ませるとすぐにスマートフォンで自動運転タクシーを呼べる。ロサンゼルス中心部の200km2の範囲を運行する。
GM傘下のGMクルーズ
2016年、米国ゼネラル・モーターズ(GM)に買収されたCruise Automationは、社名をGM Cruiseに変えた。ソフトバンクや本田技研工業などから総額72.5億ドルを調達した。
当初、2017年末に米国都市部におけるロボタクシーサービスを、2019年に開始すると発表したが、2019年7月には、安全を重視するためとして延期した。
2020年1月、GMクルーズは、カリフォルニア州サンフランシスコでバンタイプの無人自動運転車「Origin(オリジン)」を発表した。運転席が無いため広い空間で対面6人乗り、レベル4相当のモデルで、低速オンデマンドバスなどのサービス形式が考えられている。
2021年1月、Microsoftとの戦略的提携が発表され、クラウドサービス「Azure」を自動運転技術で活用していくことを明らかにした。また、GMとGMクルーズ、本田技研工業の3社が、日本での自動運転モビリティサービス事業に向けた協業に合意した。
2022年2月、カリフォルニア州サンフランシスコで、一般向けにセーフティドライバーが同乗しない自動運転車による移動サービス「ロボタクシー」の受け付けを無償で始めた。公式サイトで登録して、順番が来れば誰もが乗ることができる。
2021年4月、自動運転タクシーを独占的に運行する契約をドバイ道路交通局と結び、2023年からドバイで自動運転タクシーの運行を開始すると発表した。車両にはオリジンを使い、緊急時でも人間による対応を前提としないレベル4自動運転(高度運転自動化)以上の技術で運行する。
2023年6月、サンフランシスコ全域で「完全無人タクシー」の有償運行を開始した。ウェイモとGMクルーズの自動運転タクシーが、24時間営業で走っている。同年12月には、アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンでもサービスを開始した。
2023年10月、クルーズがすべての車両のドライバーレス運行を一時停止すると発表した。カリフォルニア州の陸運局が、州内重大事故により運行許可を停止してから2日後である。
同社は、10月上旬のピーク時に全米で400台のロボタクシーを運行していた。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、クルーズのロボタクシーが歩行者を負傷させた2件の事故報告を調査している。
2024年6月、GMクルーズに8億5000万ドル(約1330億円)を投資すると公表。クルーズは自動車メーカー以外などからの資金調達も検討する。2023年10月にカリフォルニア州で起きた事故で業務を停止し、今年5月に西部アリゾナ州のフェニックスで試験走行を再開し、テキサス州のダラス、ヒューストンで試験走行を再開した。
2024年7月、傘下の自動運転企業「GMクルーズ」で自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」の自社開発中止を発表。今後はGMの小型EV「シボレー・ボルト」を使い開発を続ける。車両の開発コストが重荷となっており、各国で進む自動運転に関する法規制への対応が難しいと判断した。
「クルーズ・オリジン」は、ステアリングホイールやペダルがない自動運転タクシーの専用車両として開発してきた。日本では、GMクルーズと無人タクシーサービスで提携を決めた本田技研工業も導入する計画であった。本田技研工業は、日本での事業は続け、使用車両は様々な選択肢を検討中とした。
アリゾナ州フェニックスなど一部地域で、運転席に監視員が座る状態での試験走行を進めており、有料サービスの再開時期を探っている。
フォード・モーター
2016年、レベル4自動運転を2021年までに実用化して配車サービス向けに供給し、モビリティサービス企業への転換計画を発表した。2017年にAIシステム開発の米国スタートアップArgo AIを買収し、2018年6月にフォルクス・ワーゲングループと戦略的提携を結んだ。
2020年6月、ハンドルを放して自動走行できる運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト」を初搭載したスポーツ車「マスタング・マッハE」など複数モデルを、2021年秋に発売すると発表した。
2022年5月、フォルクスワーゲンと共同出資した自動運転タクシーサービス「アルゴAI」を、フロリダ州マイアミとテキサス州オースティンで展開すると発表。しかし、同年10月、レベル4の先進運転システム(ADAS)の開発計画を中止し、レベル2と3の自動運転車に注力すると発表した。
欧州の開発動向
2016年4月、欧州連合による自動運転分野の協力に関する「アムステルダム宣言」で、2019年までに自動運転の実用化や導入に関する欧州統一の枠組み構築を目指し、欧州共通の戦略を策定するとした。加盟各国は国連欧州経済委員会と連携し、国内法の採択、国境間を超えた大規模実証実験を行う方針である。
2018年5月、欧州委員会は完全自動運転社会を2030年代に実現する新ロードマップを発表。2020年代に都市部での低速自動運転を可能にし、2030年代に完全自動運転が標準となる社会を目指す。
ドイツ
2017年6月、自動運転技術の妨げとなる法的障害を除去した改正道路交通法が施行された。自動運転機能を有する車の公道での自動運転を実現できるよう、運転者が一定の条件下でシステムに車両操縦を任せられる新規定が盛り込まれた。
2021年6月、レベル4自動運転が可能となる法律を世界で初めて施行し、公道でのレベル4自動運転を可能にする「自動運転車両の認可及び走行に関する政令」を成立させた。
フォルクスワーゲン(VW)
2018年6月、米国フォードとの自動運転の提携を開始し、同年7月には通信用半導体開発の米国Aquantia(アクアンティア)とNVIDIA(エヌビディア)、ドイツ自動車部品大手のボッシュとコンチネンタルと業界団体「NAV Alliance」を発足した。
2022年10月、VWグループが自動運転技術に関する方針を公表した。同年2月に発表したボッシュとの自動運転ソフトウエア開発を進め、2023年に都市部と郊外、高速道路でのレベル2自動運転での走行、加えて高速道路でのレベル3自動運転での走行を目指すとした。
また、中国では、北京地平線機器人技術研発(Horizon Robotics)との協力を進める。
BMW
インテルやモービルアイなどのパートナー企業と自動運転技術の開発を進め、2017年頃から、高速道路での渋滞時に運転者の負荷を軽減し安全に寄与する運転支援システム「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」の実装を進めてきた。
2018年3月、BMWグループとダイムラーは、モビリティ・サービス提供に関する協力を発表し、2019年2月にカーシェア、ライドヘイリング、パーキング、チャージング(充電)、マルチモダリティの5合弁会社を設立した。
2019年3月、共同で自動運転開発を行うと発表し、同年7月に戦略的長期提携を締結した。その後、運転支援システム、高速道路での自動運転、自動駐車などの共同開発を発表したが、2020年6月、協業を成功させる適切な時期ではないとし、個別に開発を進めることを公表した。
2022年2月、4 ドア・クーペEV「BMW i4(アイフォー)」の販売を開始した。BMW i4 には、国内認可取得モデルとして初めて導入した「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」が搭載された。
メルセデスベンツ
2023年6月、レベル3自動運転システム「ドライブ・パイロット」が、米国カリフォルニア州運輸局(DMV)から許可を取得した。高速道路での使用を目的に、自動運転システムの標準生産車への導入許可を取得した最初の自動車メーカーである。同社は、2023年1月にネバダ州でも同レベルの許可を得ている。
「ドライブ・パイロット」は米国市場で、2024年モデルのメルセデス・ベンツの「Sクラスセダン」と「EQSセダン」にオプションとして提供され、2023年後半以降に顧客に引き渡される予定である。
フランス
2019年12月、人や物の移動を最適化するモビリティ基本法、いわゆるMaaS(Mobility as a Service)法が可決・公布され、円滑な交通社会を構築する過程で自動運転車導入の検討が始められた。
2022年9月、レベル3自動運転での公道走行が一定条件下で解禁された。歩行者や自転車の通行が禁止されている中央分離帯のある高速道路で、時速:60km/hを限度に渋滞時に自動車線維持装置(ALKS)による自動運転を可能とした。ただし、運転者は常に運転に戻れる状態でなければならない。
NAVYA
2014年設立のスタートアップNAVYAは、完全自動運転タクシー「AUTONOM CAB(オートノムキャブ)」を開発し、2018年に製品化した。ハンドルやブレーキがない6人乗りで、ライダー、カメラ、レーダーなどで周囲を監視し、非常停止ボタンや緊急時のハンドブレーキなどを備えている。
2021年1月、日本でマクニカが無人運転シャトルバス「NAVYA Evo(ナビヤエヴォ)」の販売を開始した。NAVYA Evoは、2021年12月時点で25カ国において200台以上が販売されている。
2023年4月、NAVYAはGaussinによる事業の一部買収と清算が行われ、現在は上場廃止を発表している。
その他の海外開発動向
中国
2017年4月、「自動車産業中長期発展計画」で、2020年までに動力電池やコネクテッドカー分野の製造業イノベーションセンターを建設して国際競争力の強化に努めるとし、「次世代AI発展計画」で自動運転を重点分野と位置付け、リードする企業として百度(Baidu、バイドゥ)が選定された。
百度が主導する自動運転開発プロジェクト「阿波羅(Project Apollo、アポロ計画)」は、自動運転車向けソフトウェア・プラットフォームをオープンソース化し、2017年4月の発表後、100を超える世界の自動車メーカーやサプライヤーがパートナーとして参画している。
既に、バス車両メーカー金龍客車がレベル4車の量産化、大手自動車メーカー第一汽車や米国フォード、スウェーデンのボルボ・カーなどもレベル4システムの開発を進めている。
2018年1月、「知能自動車創新発展戦略」で、自動運転システムを搭載した知能自動車を、2020年までに中国で販売される新車の50%、2025年には100%とする目標が掲げられた。現在、北京や上海、深圳など大都市を中心に実証環境が整い、自動運転タクシーの実用化が急加速されている。
関係当局は、セーフティドライバーなしでの公道走行の許可を、多くの企業に出し始めている。
中国では2019年頃から公道実証が本格化
IT大手の百度(バイドゥ)の他、配車サービス大手の滴滴出行(Didi Chuxing、ディディチューシン)、スタートアップでは日産自動車などが出資する文遠知行(Weride、ウィーライド)、トヨタ自動車が支援する小馬智行(Pony.ai、ポニー・エーアイ)やMomenata(モメンタ)、アリババが支援するオートX(AutoX)などが、無人自動運転タクシーの実証実験や商用化を開始している。
2022年8月、深圳で自動運転タクシーの試験走行が日常の風景になりつつあると報じられた。登録済みの自動運転車であれば走行できるが、セーフティードライバー1人の乗車は義務付けられている。
深圳当局は、自動運転車で運転者がハンドルを握っていた場合の事故責任は運転者にある。運転者不在の場合には車両オーナーが責任を負う。車両の欠陥が原因の事故では、オーナーはメーカーに補償を求めることができるなど、事故時の法的責任を巡る枠組みを整えている。
一方、自動運転車の製造コストが下がらなければ商業的に見合わないとし、低コスト化とデータ収集を目的として、自動運転車の大量生産が始められている。
2022年3月、百度は量産型自動運転タクシーの製造コストを48万元(約870万円)に引き下げることに成功したと発表した後、2022年7月にはハンドルが取り外せる自動運転車を発表した。価格は25万元で、2023年から自動運転タクシーに活用する計画とした。
2022年6月、百度は2022年末までに予約販売を始めるレベル4自動運転技術を搭載したEVの多目的スポーツ車(SUV)「ROBO-01」のコンセプト車を公開した。百度と中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団の共同出資子会社の集度汽車がEVの開発や製造を担う。
高速道路や駐車場だけでなく、市中走行でも高度な自動運転技術を利用でき、U字型ハンドルを採用し、運転席は助手席と一体的に設計され、3次元対応の大画面に走行状態などを表示する。
2024年11月、百度が武漢市で無人運転タクシーの商用サービスを始めたのは2022年8月で、郊外の開発特区に限定していた。しかし、2024年6月、武漢市内全体に拡大し、「レベル4」相当の無人運転車両は400台、武漢市の総面積の35%に相当する3000km2以上、人口の半数強である770万人をカバーする。
2024年5月、中国自動車メーカーの江鈴汽車集団と共同で、約20万元(約400万円)の自動運転車の開発を発表した。現行車両から部品の調達コストを6割削減した。さらに車両基地を自動化することでコスト削減を図る考えで、2025年には無人運転事業の黒字化を見込む。
2024年11月、中国の自動運転タクシー新興、小馬智行(ポニー・エーアイ)は、国有自動車大手の北京汽車集団系と組み、2025年に北京市で自動運転タクシーのサービスを拡大する。
トヨタ自動車が出資するポニー・エーアイは、北京市、上海市、広東省広州市、同深圳市で自動運転タクシーを運行しており、北京汽車集団傘下の北京新能源汽車と組み、同社の「アークフォックス(極狐)」ブランドのEV「アルファT5」をベースに、「レベル4」のタクシーを開発する。
自動運転技術開発で新興の深圳元戎啓行科技(ディープルート)は、高速道路や一般道路での運転支援技術を車メーカーに提供し、中国で2万車以上に搭載されている。中国の車メーカー長城汽車から1億ドル(約150億円)の出資を受け、配車アプリの運営会社などと組み、量産や海外展開を加速する。
韓国
2018年12月、国土交通部は第5世代移動通信システム「5G」を活用した自動運転車の走行試験用に、疑似都市「K-City」を構築したと発表した。また、レベル3に必要とされる安全基準を策定し、2020年7月から基準を満たした車両の販売を許可している。
現代自動車
2019年9月、自動車部品大手の米国Aptiv(アプティブ)と自動運転技術の提携を発表した。両社がともに20億ドルを出資して2020年には米国に合弁会社Motionalを設立し、2022年からレベル4自動運転タクシーを事業者らに提供する計画である。
2024年5月、クラス8燃料電池トラック「XCIENT」を2020年に市場導入し、世界8カ国で商用運用されている。90kWの水素燃料電池システム2個と350kWのモーターで駆動し、航続距離は約720kmである。
このXCIENTにPlusが開発したレベル4自動運転技術「Plus SuperDrive」を搭載すると公表。同システムは、欧米やオーストラリアでは導入されており、LiDAR、レーダー、カメラなどのセンサーを組み合わせている。
また、現代自動車は水素サプライチェーンのブランド「HTWO」を立ち上げ、水素の生産から利用まですべての分野で商業化をめざし、韓国内で食品残渣などの有機廃棄物を水素に変換するパイロットプロジェクトを実施し、モビリティーだけでなく定置用電源や産業機器、電解装置など様々な用途をめざしている。
42dot
2022年3月、2019年設立のスタートアップ42dot(フォーティートゥドット)が、起亜自動車のEVを使用して、ソウル市内で有料の自動運転タクシーサービスを開始した。自動運転車やドローン、ロボットなどを駆使し、人と物の移動全てを自動運転化することを目指している。
イスラエル
2020年7月、車載向け画像認識チップなどを開発しているインテル傘下のMobileye(モービルアイ)は、日本の高速バス大手のWILLERと戦略的パートナーシップを結び、日本、台湾、ASEAN地域で自動運転タクシーの商用展開を公表した。
2021年8月、Mobileyeは、自動運転タクシー車としてEV仕様の「Mobileye AV」を発表した。このMobileye AVを使い、インテル傘下のMoovit(モービット)が、2022年にドイツとイスラエルでサービス展開を開始する。既に、ドイツで自動運転車の商用展開のための試験認可を得ている。
日本の開発動向
2016年5月、警察庁が「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」、2017年6月、「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」を公表した。
2018年9月、国土交通省は「自動運転車の安全技術ガイドライン」、2019年6月、「限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン」を策定。
その後、2019年の通常国会で「道路運送車両法」と「道路交通法」の改正案が可決され、2020年4月の改正法施行により、レベル3自動運転が国内で解禁された。道路交通法では自動運転レベル3まで、道路運送車両法ではレベル4までを見据えた改正である。
2024年4月時点で、一般道で自動運転の通年運行は全国で16カ所にとどまり、「レベル4」事業は1カ所である。政府は自動運転の事業化加速で、2025年までに全都道府県で自動運転バスなどの通年運行事業の実施をめざし、自動運転に必要な審査を従来の11カ月から2か月に短縮する見込みである。
本田技研工業
2021年1月、GM Cruise Holdings(GMクルーズホールディングス)、General Motors(ゼネラルモーターズ)と2018年10月に結んだ資本・業務提携関係に基づき、日本における自動運転モビリティサービス事業に向けた協業を行うことで基本合意した。
本田技研工業は、日本での共同開発の一環として、GM「Bolt」をベースとしたGMクルーズの試験車両を使った技術実証を、2021年に国内で開始した。
2021年3月、世界初のレベル3自動運転量産車「レジェンド」を発表した。高速道路で指示なしで複数車線の自動走行を可能とする自動車線変更機能や、渋滞時にドライバーが周辺監視を行う必要がない技術を実現しており、今後、一般道に拡大していく方針である。
2022年4月、帝都自動車交通と国際自動車との協業により、東京都心部での自動運転モビリティサービスの検討を開始すると発表。2020年代半ばの実現を目標に掲げている。
2023年10月、米国ゼネラル・モーターズ(GM)と共同で、2026年初頭から東京都内で自動運転タクシーサービスを始めると発表した。2024年前半にGM、GMクルーズとの3社でタクシー事業を運営する合弁会社を設立し、本田技研工業が過半を出資する。2026年から都心で無人タクシーサービスを始める。
本田技研工業がGMと共同開発したレベル4自動運転車「オリジン」を使用する。サービスは数十台からスタートし、都内の法人タクシーの1.7%に相当する500台規模での運用を見込む。その後、順次台数を増加させ、サービス提供エリアの拡大を目指す。
2024年2月、自動運転車両で一般の乗客を運ぶ実証実験の開始を発表。ゴルフカートを改良して開発した小型EV「サイコマ」を使い、茨城県常総市の商業施設「アグリサイエンスバレー常総」の拠点間を運行する。最大2人の乗客が利用でき、予約が必要で、貸し出す腕時計タイプの専用端末で呼び出して利用する。
実験当初は、スタッフが同乗する「レベル2」で運行、2025年に完全自動運転「レベル4」の実現をめざす。
2024年10月、GMが自動運転専用車「クルーズ・オリジン」の開発を凍結すると発表した。法規制への対応が困難と判断した。本田技研工業は「車種や台数規模なども検討していく」としている。同サービスを手がける合弁会社を2024年6月までに設立予定だったが、計画が遅れている。
日産自動車
2018年2月、DeNAとの協業により、無人運転車両を活用した新交通サービス「Easy Ride」の実証実験を神奈川県横浜市で開始した。2019年2月、事前予約方式からオンデマンド配車方式に変え、2021年にはNTTドコモのAI運行バスを組み合わせた実証実験を行った。
2019年6月、日産自動車とルノーは、米国ウェイモと無人自動運転車サービス事業で独占契約を締結した。日本とフランスで事業の可能性を検討し、中国を除く他の海外市場でも事業化を検討する。ウェイモのノウハウを活用し、3社で自動運転タクシーや荷物配送サービスの早期実用化を目指す。
2024年2月、2027年度に国内で自動運転サービスを始めると発表。オンデマンド型乗り合いサービスを想定し、2024年度に横浜みなとみらい地区でミニバン「セレナ」ベースでの実証実験を始める。
2025〜26年度には桜木町や関内を含む横浜のより広いエリアで最大20台規模での実証実験、2027〜28年度をメドに事業化させ、横浜を含む複数の市町村で数十台規模でのサービス提供を目指す。将来的には特定条件下で運転を完全自動化する「レベル4」への対応も視野に入れる。
2024年5月、開発中の自動運転車を報道陣に公開した。EV「リーフ」をベースにLiDARやカメラなど30個のセンサーを搭載する。今回公開した車両技術をもとに2024年度から横浜市内で実証運行し、2025年度以降にミニバン「セレナ」をベースにした車両を最大20台導入し、自動運転車の乗り合いサービスを始める。
2027年度以降は有料サービスの提供を始め、横浜以外に拡大する。
2024年11月、日産自動車と三菱商事は、「レベル4」自動運転やEV蓄電池の有効利用に向け、2024年度内に共同出資会社を折半出資で設立し、2025年から実証実験を始める。政府の規制緩和を踏まえて無人タクシーなども想定し、実証試験を進めている横浜市や福島県浪江町で先行導入する。
三菱商事は電池分野では、7月に本田技研工業とEV電池の再利用などを手がける新会社を設立し、10月から三菱自動車と電力料金の安い時間帯に自動でEV充電するサービスを始めた。次世代車開発で連携する本田技研工業、日産自動車、三菱自動車と、三菱商事との協力関係が強まっている。
トヨタ自動車
2018年1月、米国ネバダ州ラスベガス「2018 International CES」で、移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス(MaaS)専用次世代EV「e-Palette Concept」を出展した。
電動化、コネクティッド、自動運転技術を活用した車で、新たなモビリティサービスを実現するモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)の構築を推進するため、技術パートナーとしてAmazon.com、Didi Chuxing、Pizza Hut、Uber Technologiesとアライアンスを締結した。
2021年4月、高級車「レクサスLS」に独自の自動運転コンセプト「Mobility Teammate Concept」に基づく高度運転支援技術「Advanced Drive」を搭載して発売した。
Advanced Driveは、レベル2+の先進運転支援システムで、前方LiDARや深層学習ベースのAI技術、OTA(Over The Air)によるソフトウエア更新など、新技術を取り入れて安全性を高めた。
また、2021年の東京五輪・パラリンピックの選手村で、EVを状況に応じてオペレーターが操作する「レベル2」で運行した。
2023年11月、中国上海市の国際輸入博覧会で、レベル4自動運転EV「bZ4XZ、ロボタクシー」の試作車を出展した。中国の新興企業「小馬智行」(ポニー・エーアイ)の自動運転システムを搭載し、将来的に自動運転タクシー用として中国市場への投入を目指す。
両社は2019年に提携し、レクサスなどをベースにした自動運転タクシーの実験車両を数百台保有しており、北京や上海など中国4都市の一部で試験運行している。
2024年2月、夏にも、運転手不要のロボタクシー事業を念頭に、「レベル4」による自動運転サービスを始めることが公表された。東京・お台場に建設中の次世代アリーナ周辺を無償で運行し、2025年以降は有償で範囲を都心に広げる計画で、2023年秋から国土交通省、経済産業省、警察庁、東京都と協議してきた。
サービスは、ソフトバンクなどとの共同出資会社「モネ・テクノロジーズ」と提供する。米国のメイ・モビリティー社の自動運転システムも活用する。車両はトヨタのミニバン「シエナ」をベースに開発した。センサーや人工知能(AI)で道路や周辺の状況を監視し、危険を予測するシステムを搭載する。
いすゞ自動車
2024年4月、一定の条件下で運転手が不要になる「レベル4」の自動運転技術によるトラック・バスのサービスを2027年度から始めると発表。既に、神奈川や福岡県内の循環バスなどで実証実験を進めており、今後2年間でバス会社や物流会社などと技術、サービスの詳細を詰める。
2027年度をめどに国内と北米で、高速道路輸送などに「レベル4」のトラック・バスを投入するため、自動運転を含めた新事業領域に1兆円を投資する計画である。
2024年8月、「レベル4」の自動運転トラックを共同開発するため、米国Applied Intuition(アプライドインテュイション)との提携を発表。両社は最大5年間にわたり、日本の幹線輸送向けの自動運転技術開発を進め、2026年度にモニター実証を始め、2027年度に日本と北米でレベル4のトラック・バス事業を始める。
これまでに、イスラエルForetellix(フォーテリックス)と自動運転の検証プラットフォームを開発し、ティアフォーと国内での路線バスの自動運転化をめざす。また、米国スタートアップGatik AI(ガティックAI)とは自動運転システムを搭載できるシャシーを開発し、北米での生産と事業展開をめざす。
自動運転サービスの実証実験
2017年6月に協業を開始したロボットベンチャーZMPとタクシー事業者日の丸交通は、遠隔自動運転システムの公道実証実験や、2018年8月には営業実証実験を行い、2019年には空港リムジンバスと自動運転タクシーを連携させた都市交通インフラの実証実験を行っている。
2018年12月、名古屋大学発スタートアップのティアフォーは、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発を手掛け、標準化を推進する国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」の設立を発表するなど、世界展開を本格化している。
2020年10月、ティアフォー、Mobility Technologies、損害保険ジャパン、KDDI、アイサンテクノロジーは、ユニバーサルデザイン仕様の「JPN TAXI」をベースに自動運転システム実装を進めており、5Gによる遠隔監視システムで複数台の車両を監視する公道実証を西新宿エリアで実施した。
2022年2月、大成建設など9社は、新宿駅西口エリアで自動運転車両によるサービスの実証実験を実施した。東京都は「未来の東京戦略」の一環で「2025年無人自動運転による移動サービスの実現」を掲げており、大成建設は2023年度に5Gによる自動運転移動サービス開始を目指している。
実施ルートは、新宿駅西口の地下ロータリーから出発し、都庁~新宿中央公園前を経由して、地上側の新宿駅西口中央通りで下車する。乗車と下車は既存のバス停留所を使用し、実験では安全を考慮してセーフティードライバーが乗車するレベル2の運行である。
2024年10月、三菱電機はリゾート施設向けランドカーの完全自動運転サービスを開始する。2023年秋に西日本のリゾート施設で実証実験を行い、2025年度の早期に同施設で6台のランドカーを導入し、2030年度に国内数十カ所での導入をめざし、海外での展開も視野に入れる。
ヤマハ発動機のランドカーを改良し、アイサンテクノロジーと協業して自動運転車両を構築する。敷地内の施設間移動でオンデマンドの運行管制システムを整備する。車両には高機能センサー「LiDAR」、障害物検知のミリ波センサー、車内外を撮影するカメラ、全地球測位システム(GPS)などを搭載する。
無人バス、無人配送車、自動運転農機
無人自動運転車の開発動向は、主に自動運転タクシーに注目が集まっているが、それ以外への自動運転技術の拡大が、無人バス、無人配送サービス、自動運転農機などについて始まっている。
無人バス
既定の経路を走行する路線バスやシャトルバスは、レベル4自動運転を生かす最適のサービスである。無人バスの分野では、フランスのスタートアップNavya(ナビヤ)やEasyMile(イージーマイル)が先行している。
フランスのイージーマイル
2017年9月、イージーマイルは混在交通下における初のシャトルバスサービスを開始した。レベル4に対応した運転席のない自動運転モデルで、「EZ10」は全長4.05m、全幅1.892m、全高2.871m、最大12人乗り、最高時速:40km/hで走行する。
イージーマイルは、トゥールーズ、ベルリン、デンバー、シンガポール、オーストラリアのアデレードに拠点を設け、2021年5月時点で30カ国以上で180台以上の自動運転シャトルを走行させた。2016年にはDeNAと業務提携し、私有地で「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」を運用している。
フランスのナビヤ
2020年11月、茨城県境町で自動運転で公道を走るEVバスの定時運行がスタート。自治体が公道で走らせて定時運行するのは、国内では初めての事例となる。境町が自動運転事業の運行管理を推進するボードリー(BOLDLY、旧SBドライブ)と、輸入商社マクニカの協力で実現した。東京羽田(HICity)でも運行。
フランスのレベル3対応EV「NAVYA ARMA(ナビヤアルマ)」で境町は3台購入して、5年間分の予算として5億2000万円を計上。運行管理やそれに伴う人件費を含むパッケージで契約した。往復約 5kmを最高18km/hで走行し、運行時間は平日の午前10時から午後3時30分まで8便で、運賃は無料である。
2021年1月、国内でマクニカが無人運転シャトルバス「NAVYA Evo(ナビヤエヴォ)」の販売を開始した。NAVYA Evoは、2021年12月時点で25カ国において200台以上が販売されている。
レベル4対応車で、ハンドル無し、運転者なしで運行、全長4.78m、全幅2.10m、全高2.67m、立ち席4人を含む最大15人乗り、航続時間:9時間(航続距離:200km)、最高時速:25km/h(推奨速度18km/h以下)で走行。
レベル3自動運転バス「NAVYA ARMA」(ナビヤアルマ)は、マクニカとソフトバンク子会社のBOLDLY(ボードリー)が連携し、東京羽田(HICity)や茨城県境町などの公道や公道相当の道路で運行されている。
2023年4月、NavyaはGaussinによる事業の一部買収と、清算が行われ上場廃止を発表している。
エストニアのオーブテック
2023年12月、三重県多気町の商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」で、敷地内のホテルやレストランを結ぶ自動運転のAuveTech(オーブテック)製小型電動バス「MiCa(ミカ)」の運行を開始した。乗車料金・予約は不要、最高速度:約20km/h、オペレーターを除く7人乗り、片道2.5kmのルートを1日に14往復する。
BOLDLY(ボードリー)が国の補助を受けて実証事業を行う。当面は同乗のオペレーターが状況に応じて操作する自動運転「レベル2」で運行されるが、一定条件下で無人運転する「レベル4」に対応できる。2023年度中に車両を3台に増やし、2024年度にもレベル4の自動運転サービスを目指す。
百度(バイドゥ)
2018年7月、中国の百度(Baidu、バイドゥ)は、バスメーカーの金龍客車(Kinglong、キンロン)と共同開発したレベル4自動運転ミニバス「Apolong(アポロン)」の量産化をスタートした。運転席がなく、全長4.33m、全幅2.15m、全高2.715mで、最大時速:40km/h、中国の各都市で導入されている。
また、両社は19人乗りの中型自動運転バス「Robus」の公道実証試験を進めている。
2018年7月、ソフトバンクグループのSBドライブは、百度の日本法人バイドゥと協業し、アポロンを日本で活用すると発表した。国内で「アポロン」を中核とした自動運転運営プラットフォームの構築を検討する。
2019年7月、トヨタ自動車が出資する米国スタートアップ企業「May Mobility(メイ・モビリティ)」が、ミシガン州グランドラピッズで5人乗りの自動運転シャトルの定期運行実証をスタートした。2022年6月には、ソフトバンクと業務提携を発表している。
無人配送サービス
海外動向
物流も自動運転レベル4を生かす最適なサービスの適用分野として、大きな注目を集めている。特に、宅配を担うラストワンマイル系の配送ロボットの試験運用が世界中で始まっている。この分野は、ドローン配送サービスから無人コンビニまで、今後の幅広い発展が期待されている。
2018年4月、エストニアと米国に本社を構えるスタートアップStarship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が、英国ミルトン・キーンズで自動運転ロボットによる商品配送を開始した。2019年1月には、米国ジョージメイソン大学でもサービスを開始した。
2018年6月、ソフトバンク・ビジョンファンドから出資を受けた米国スタートアップNuro(ニューロ)は、スーパー大手のクローガーと協力し、配送用自動運転車「R1」を活用した無人配達プロジェクトを発表した。第三世代の「Nuro」の積載重量は、約500ポンド(227kg)で軽バン並みである。
2019年6月、ピザ宅配大手の米国ドミノ・ピザと提携し、自動運転車両を使ったピザの無人配達事業をテキサス州ヒューストンで開始することを発表。
2019年1月、米国Amazon.comは、同社が開発した配達ロボット「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」の宅配実証実験に着手することを発表し、実験の場を米国内で拡大させている。
2019年3月、中国の京東集団が、スタートアップのGo Further AIと共同で無人配送ロボット「超影」を開発し、配送ステーションで稼働させている。同社は「5Gスマート物流モデルセンター」を上海に建設している。
2018年1月の「CES International 2018」では、米国スタートアップRobomart(ロボマート)が店舗型の自動運転無人車両を発表した。専用アプリでRobomartを呼ぶと、無人自動運転で利用者の家の前まで来て買い物ができる。Robomartは、時速約40kmで連続130kmを走行できる。
また、スウェーデンのWheelysと傘下のHimalafy、中国の合肥工業大学が共同で、無人コンビニ「Moby Mart」の開発を進めている。
国内動向
国内ではスタートアップのZMPやHakobotが、宅配ロボットなどの実証実験を進めている。
2019年1月、ZMPが開発を進める宅配ロボット「CarriRo Deli(キャリロデリ)」を使った実証実験を、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内で実施した。また、韓国トップの宅配サービス企業であるWoowa Brothersと共同で、同年春に韓国初となる屋外ロボット配送の実証実験を行った。
カメラやレーザーセンサで周囲環境を360°を認識しながら最高時速6km/hで自動走行する。また遠隔監視・遠隔操作も可能で、全幅52cm、全長52cm、全高40cm、最大積載量50kgである。
2018年11月、スタートアップのHakobotは、宅配ロボットの実証実験用端末初号機の開発が完了して公開した。実証実験に備え開発体制強化のため、三笠製作所と業務提携を行った。
2019年6月、楽天は離島などの一般利用者に、ドローンを使った商用配送サービスを発表した。買い物が困難な離島・山間地などの過疎地域や、地上インフラでの配送が困難な地域にドローン配送サービス、一部の登録店舗ではロボットデリバリーサービスを展開している。
自動運転農機
高齢化と人手不足が進む農業分野も、各種農機の自動化・無人化に向けて自動運転技術を生かせる分野と考えられる。一方で、ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現するスマート農業の発展が国策的に進められており、今後の自動運転農機の拡大が期待される。
農機の自動運転技術は、オペレーターが登場して運転の一部をアシスト・自動化するレベル1から、あらかじめ定まった農地内を監視のもと無人状態で自動走行するレベル2、遠隔操作によって完全に無人で自動走行するレベル3までの研究開発が進められている。
基本的には、GPSや準天頂衛星(QZSS)などによるGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)と、機体に搭載したセンサー類で自己位置を特定して自動走行する。また、既定の農地内を無駄なく走行するため、マッピング技術を用いる場合も多い。
海外動向
農機メーカー世界最大手の米国Deere & Company(ディア・アンド・カンパニー)は、早くから自動操舵システムの開発を進め、2017年には農業ロボット開発を手掛ける米国Blue River Technology、2021年8月にトラクター自律化のBear Flag Roboticsを買収し、自動運転技術の開発を加速した。
2022年1月の「CES International 2022」でディア・アンド・カンパニーは、完全自律走行型のトラクターを市販向けに量産する計画を発表した。量産されるのは「John Deere 8R」である。
8Rには運転席が設置されているが、自律走行モードでは運転者は不要で、作業者はスマートフォンなどで運転が可能となり、作動状況を監視できる。6ペアのステレオカメラとAI技術により、周囲360°の障害物までの距離を算出し、1インチ(2.54cm)の精度で自動走行が可能である。
国内動向
国内における自動運転技術は、農機大手のクボタ、ヤンマー、井関農機が開発をリードしている。
2017年12月、クボタは、業界初の有人監視下で無人自動運転作業ができる先進トラクタ「アグリロボトラクタSL60A」を開発した。2018年6月、「アグリロボコンバインWRH1200A」、2020年1月、「アグリロボ田植機NW8SA」を発売した。いずれもGPS搭載農機である。
2021年5月、クボタは米国の半導体メーカーであるNVIDIAと戦略的パートナーシップを提携し、2021年11月、農機の自動運転技術を開発する米国スタートアップのAgJunction(アグジャンクション)を買収し、無人トラクターなどの開発を加速した。
2023年6月、クボタは、世界初となる無人自動運転で米や麦の収穫作業が行える「アグリロボコンバインDRH1200A-A」を発売した。現在、発売済の「アグリロボトラクタMR1000AH」、「アグリロボ田植機NW8CA」と合わせて、主要3機種に無人自動運転機をラインアップしている。
2018年10月、ヤンマーは無人自動運転農機「ロボットトラクター YT488A/498A/4104A/5113A」の販売を始めた。GNSS(Global Navigation Satellite System)ユニットを搭載し、タブレット端末での操作や、トラクター2台の協調作業時における随伴・併走する無人トラクターの操作が可能。
2018年12月、井関農機は有人監視下での遠隔無人自動運転を可能としたGNSSユニット搭載の「ロボットトラクターTJV655R」の販売を開始した。タブレットで作業登録や走行パターン、経路設定などを行えるほか、遠隔で自動走行の開始や停止を行うリモコンも用意されている。
無人フォークリフト
2022年9月、豊田自動織機は、AI搭載によるトラックや積荷の位置・姿勢を自動で認識し、自律的に走行経路を生成して荷役作業を行う自動運転フォークリフトを開発した。従来の定位置荷役に加え、トラックの停車位置や積荷の姿勢が一定でない状況下での荷役作業の自動化を可能とした。
対象物にレーザー光を照射し、その反射光で対象物までの距離を測定する「3D-LiDAR」を用いたトラック位置検出、ガイドレスでの自動運転に加え、画像認識・ディープラーニングを活用した、マーカーなどの目印が不要なパレット位置・姿勢検出技術や、パレットまでのアプローチ走行経路の自動生成方式を採用している。
2023年4月、ラピュタロボティクスは、「自動フォークリフト ラピュタAFL」の発売を開始した。地図情報を活用したより自律性の高い「SLAM誘導式」の無人フォークリフトである。磁気埋め込みや反射板の設置も不要で、AI(人工知能)が複数のフォークリフトの動きを最適化し作業効率を高め、資材の微妙なズレにも対応する。
2024年3月、三菱重工業子会社の三菱ロジスネクストは、無人フォークリフトの最新機種を報道陣に公開した。上部に搭載したレーザーが工場内の壁面に設置された反射板を検出し、正確な位置を検出する「レーザ―誘導式」を採用することで、障害物も避けて通れるなど走行の自由度が高い。
これまで無人型のフォークリフトは、床下に埋めた磁気に従って動く「磁気誘導式」が主流で、走行経路に磁気を埋め込む必要があり、安定走行できるが走行範囲が限定されていた。
ただし、1台約2000万円で、有人型の5倍程度と高価なため、国土交通省は4月から実証事業の募集を始め、必要経費の1/2を補助する。
日本産業車両協会によると、2023年の国内販売台数は有人型の約80000台に対し、無人型は約200台にとどまる。今後、低コスト化が鍵であるが、地図情報を活用したより自律性の高い「SLAM誘導式」の無人フォークリフトの普及が期待される。
今後の課題
将来に向け、自動運転技術は交通事故の削減、ドライバー不足対策などのために必須と考えられる。しかし、難しいのは利用者の自動運転に対する不安を取り除く手順である。無人タクシーや無人バスなど、利用者が増えなければ、低コスト化が進まず経済的にも成り立たない。
また、自動運転技術は車両を用いる新たなサービス・業種に応用される可能性も高い。同様に、難しいのは、利用者のあらたなサービス・業種に対する不安を取り除く方法である。無人パトカー、無人ゴミ収集車、無人救急車、無人消防車、無人鉄道、無人渡し船、、、、、。
自動運転という技術革新が重要なことは当然であるが、一方で社会的受容性を高める取り組みも必要である。社会的受容性を高める工夫をしなければ、「無人自動運転車」は拡大しない。政府は早めに社会的受容性を高める仕掛けを行う必要がある。
2023年11月、NTTは自動運転事業への参入を発表した。米国スタートアップMay Mobility(メイ・モビリティー)のレベル4自動運転システムの日本での独占販売権を得た。メイ・モビリティーに約100億円を出資し、自治体向けのコミュニティーバスを想定し、タクシーなどに車種を順次広げる。
トヨタ自動車が車両の生産を行い、2025年以降に自治体や運行事業者に提供する。既に、北米を中心に12都市で35万回以上走行させ、2021年には広島県で自動運転実証実験に車両を提供した。NTTは開発中の通信基盤「IOWN(アイオン)」を自動運転システムに組み込むことを目指している。
自動運転事業への参入は、今後も様々な分野で、色々な企業が着手するであろう。新しい技術の実現に向けてトラブル・失敗はつきものである。最初から完成度100%の技術革新などありえない。ある程度の完成度に達したら実装を進め、課題を抽出して改良・改善の積み重ねで実現を目指す。
改良・改善の積み重ねの過程で認知度を高めて、スムーズに現代社会に溶け込ませる工夫が重要である。マイナンバーカードと同じ轍を踏んではならない。