燃料電池バスの開発状況

自動車

 2018年3月、大型FCバス「SORA」の型式認証をFCバスとして国内で初めて取得し、販売を開始した。東京オリンピック・パラリンピック2020に向けて、東京都を中心に100台以上のFCバス導入が予定されていることも、併せて公表。価格は約1億円/台である。

 FCバスに関しては、2021年開催の東京オリンピック・パラリンピック対応もあり、2020年の目標である100台をクリアし、2023年2月時点で124台に達している。しかし、2030年の目標である1200台の見通しは立っていない。FCトラックに比べて、国内メーカーの生産の遅れが問題である。

主要メーカーの開発動向 

トヨタ自動車

 2018年3月、大型FCバス「SORA」の型式認証をFCバスとして国内で初めて取得し、販売を開始。今後、東京オリンピック・パラリンピック2020に向けて、東京都を中心に100台以上のFCバス導入が路線バスとして予定されていることも公表。価格は約1億円/台である。
 屋根上に「MIRAI」のFCスタックを2台分(出力:114kW×2)と、70MPaの高圧水素タンクを「MIRAI」の5台分(10本、容積:600L)を配置し、走行用電動機(出力:113kW×2)、ニッケル水素電池が搭載されている。最高速度:70km/h、航続距離:200kmで、定員:79人である。

図17 トヨタ自動車の大型FCバス「SORA」

 2018年9月、トヨタ自動車と、Toyota Motor Europe(TME)は、ポルトガルでバスを製造・販売するカエタノ・バス(CaetanoBus)に、燃料電池システムを供給すると発表した。
 2020年6月、カエタノ・バスは、2020年度中にもFCバスの実用化を目指すと発表。左ハンドルの試作車はポルトガル、ドイツ、フランスで、右ハンドルは英国とアイルランドで、それぞれ2020年末頃に実証実験を行う予定。

いすゞ自動車と日野自動車

 2022年2月、いすゞ自動車と日野自動車は、合弁会社であるジェイ・バスで2024年度からBEVフルフラット路線バスの生産を開始すると発表。また、BEVフルフラットをベースに、次世代路線バスとしてFCバスの企画・開発に向けた検討の開始をいすゞ自動車、日野自動車、トヨタ自動車で合意した。
 現時点で唯一のFCバスであるトヨタ自動車の「SORA」の後継で、EVバスとFCバスの部品の共通化によるコストの低減を図り、新世代のFCスタックを採用する。「SORA」はジェイ・バス小松事業所で生産される。 

東京R&D

 2022年1月、新潟県は2020年から東京R&D と小型FCバスの開発・製造を進めておりに、完成した小型FCバスを新潟交通が運行したと発表した。日野自動車の「ポンチョ(ロング1ドア、郊外型)」がベースで、定員:26人、最高速度:80km/h、約5分間の水素充填で航続距離:約110kmである。

FCバスの導入状況

 政府は、2030 年までに乗用車換算で 80 万台程度(水素消費量:8万トン/年程度)の普及を、水素ステーションは、2030 年度までに 1000 基程度の整備目標の確実な実現を目指すとしている。
 FCバスに関しては、2021年開催の東京オリンピック・パラリンピック対応もあり、2020年の目標である100台はクリアし、2023年2月時点で124台に達している。しかし、2030年の目標である1200台の見通しは立っていない。

図1 水素ロードマップ 出典:第六回水素・燃料電池の普及に係る自治体連系会議

 2018~2023年、FCバス「SORA」の路線バスとしての導入は、東京都を皮切りに、大阪府、大阪市、名古屋市、横浜市、神戸市、豊田市などに広がり、民間でも、京浜急行バス、宮城交通、神姫バス、京王バス、東急バス、南海バスなどが運行を開始している。
 「SORA」の車両価格の約1億円については、国が約5千万円を補助し、関連の都道府県と市町村の補助金や民間からの寄付などの支援を受けている。導入規模は、東京都を除き1台~数台程度。

FCバスの課題

 2018年3月、トヨタ自動車が大型FCバス「SORA」の販売を開始し、2021年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京都に納入されて以降、FCバスに関する大きな動きは見られない。

 いすゞ自動車と日野自動車の合弁会社であるジェイ・バスは、次世代のFC路線バスの企画・開発に向けた検討を開始すると発表した。しかし、2022年3月の日野自動車のエンジン不正問題の発覚の影響を受けて開発の遅れが危惧される。

 一方、IEAによれば、中国の燃料電池車の普及台数は約1.37万台である。そのほとんどは大型燃料電池車セグメント(FCトラックとFCバス)である。中国には世界のFCトラックの 95%以上と、FCバスの 85%近くが存在する。
 2012~2013年頃に、北京億華通、福田汽車、宇通客車はカナダのハイドロジェニックスから、金龍客車はカナダのバラードからFCスタックの技術供与を受けて、FCバスを開発している。用途も、路線バス長距離バス通勤バスなどを実用化している。

 最大の課題はFCバス価格である。安価な蓄電池をベースとした低コストの中国製EVバスが導入されている現状を見ると、FCバスに関しても全く同じ構図が見えてくる。政府は法規制と国内産業育成のための支援策をタイムリーに発動する必要がある。
 普通乗用車と異なりバスの買い替え寿命は20~30年と長い。一度、導入されて都市交通システムに組み込まれて中国製FCバスが実績を積むと強敵となる。特に、FCバスが有効とされる長距離バスに関しては、国内メーカーは手付かずの状況にある。 

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