BEVの航続距離と充電時間の課題
飛躍的に伸びる航続距離
2016年頃から、航続距離が飛躍的に伸びたBEVの市販が始まる。
●2016年3月に予約注文を開始した米国テスラのBEV「Model 3(モデル3)」は、2019年5月に市販が開始された。蓄電池容量:79~82kWhと大容量化し、航続距離:354~498km、価格:35000ドルである。2022年にはロングレンジAWDで航続距離:689kmを公表した。
●2016年9月に販売を開始した米国GMの「Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルト)」は蓄電池容量:60kWh、 航続距離:383km、価格:37495ドルである。
2020年3月、GMはモジュラー駆動システムと独自開発の蓄電池「Ultium(アルティウム)」を搭載する第3世代のグローバルEVプラットフォームを公開した。ピックアップトラック、SUV、クロスオーバー、乗用車、商用車など幅広い車種に対応する。
アルティウムの蓄電池容量:50~200kWhで、航続距離:最大644kmである。搭載するEVは直流急速充電(定格電圧:400V、出力:200kW)に対応し、ピックアップトラック向けは直流急速充電(定格電圧:800V、出力:350kW)機能を備えている。
●2022年7月、GMはアルティウムを搭載した電動SUVの「Blazer EV(ブレイザーEV)」を発表している。航続距離:397~515km、価格:45000ドルで、急速充電スタンドで最大190kWの充電を可能とし、10分間の充電で約125kmの航続が可能としている。
●2016年10月に販売を開始したドイツBMWの「i3」は、蓄電池容量:33~42KWh、航続距離:390km、価格:509万円であったが、2022年6月に生産を終了した。
●2022年2月16日、BMWはクーペタイプEV「i4」を発売している。基本グレードの「i4 eDrive40」は、蓄電池容量:83.9kWhと大容量化し、航続距離:590km、価格:750万円である。急速充電スタンドで150kWの充電を可能とし、10分間の急速充電で150km以上の走行を可能としている。
●2017年10月、日産自動車が新型リーフを発売し、蓄電池容量:60kWh、航続距離:280km(2012年12月初代リーフ)から400kmに伸ばし、価格も3種類のグレードで315~399万円(税込み)とした。2021年の新形リーフでは、蓄電池容量が40kWh(航続距離:322km)と60kWh(450km)の2車種が、価格:332.64~499.84万円である。ただし、50kWの急速充電器で10分の充電で50km程度の走行が可能としている。
以上から、重要なことは、BEV普及の目安とされる航続距離320kmを、各社が相次いでクリアしたことである。残された大きな課題は充電時間である。
一般のエンジン車が油に要する時間は3~5分であるが、BEVの充電時間は急速充電設備を使っても約15~30分(航続距離は80~160km)程度、普通充電設備(200V)の場合は約4~8時間(航続距離は80~160km)程度を要する。
現在、EVの蓄電池容量は10~100kWh程度であり、航続距離を伸ばすため蓄電池の大容量化が進められた。しかし、国内の普通充電設備(200V)は交流電源(出力:3〜6kW)、急速充電設備は直流電源(出力:20~50kW)が中心で、大容量蓄電池を満充電するには、より長時間が必要となる。
コメント