サバティエ反応メタネーション装置は、サバティエ反応(CO2+4H2→ CH4+2H2O)に基づくもので、INPEX/大阪ガス、カナデビア(旧日立造船)、IHI、デンソー、アイシン、日本特殊陶業、豊田自動織機などが、メタネーション装置を商品化・開発している。
サバティエ反応メタネーション装置の開発動向
2019年10月、INPEX(旧国際石油開発帝石)とカナデビアは、メタネーション試験設備を長岡鉱場の越路原プラント敷地内に完成させた。プラントで天然ガス生産時に付随するCO2と、固体高分子型水電解装置(PEM、32Nm3/h)により製造された水素から合成メタンを製造する。
カナデビア製のプレート型メタネーション反応器は、熱回収効率が87%と高く、運転温度:200℃、運転圧力:0.7MPaであり、生成ガス(メタン濃度:91.2%)をガス精製器を通して高濃度化(99.6%)が可能である。合成メタン製造能力:8Nm3/hで、4500h以上の安定製造を確認している。
2021年10月、INPEXと大阪ガスは、大規模メタネーション装置(製造能力:約400Nm3/h)導入のNEDOプロジェクト(~2025年度末)を開始した。INPEX長岡鉱場の越路原プラントからCO2を回収貯留し、メタネーション設備を接続し、製造した合成メタンはINPEXの都市ガスパイプラインへの注入をめざす。
並行して、実証機(製造能力:1万Nm3/h)と、商用機(6万Nm3/h)の検討を進める。
2022年3月、東京ガスは横浜テクノステーションで、メタネーション実証試験を開始した。主に太陽光発電の電力で英国ITM Power製の固体高分子型水電解装置(30.9kg/h、圧力:1MPa未満)により水素を製造し、横浜市清掃工場の排ガスから三菱重工業製のCO2分離回収装置で得られたCO2をトレーラーで受け入れる。
カナデビア製の多管シェル&チューブ型メタネーション装置(製造能力:12.5Nm3/h)でメタン合成を行う。2020年代中頃に数百Nm3/hに拡大し、2030年にガス販売量の1%に合成メタンの導入をめざす。
2022年6月、カナデビアが、小田原市環境事業センターのごみ焼却施設から排出されるCO2を回収貯留し、LPガスの改質水素と反応させるメタネーション実証装置の運転を開始した。排ガスからのCO2分離にはエア・ウォーターの技術を活用し、合成メタンの製造能力:125Nm3/hである。
2022年8月、日本特殊陶業はメタネーション装置を開発し、2023年4月から小牧工場で実証実験を行う。自社のゼオライト膜でガスエンジン排ガスからCO2を回収貯留し、水電解で得られた水素と反応させて1Nm3/h(0℃、1気圧)の合成メタンを製造し、自社のガスエンジン燃料として再利用する。
将来的に、製造能力:4Nm3/hのメタネーション装置を開発し、2030年に中小規模工場へ販売する。製造コストは100円台/Nm3と、現状の1/3程度に引き下げる。
2022年9月、豊田自動織機は高浜工場でメタネーション実証実験を始めた。ボイラから排出されるCO2を回収貯留し、化石燃料由来のグレー水素と混ぜて合成メタンを製造し、別ボイラの燃料として循環利用する。将来は太陽光発電によるグリーン水素へ切り替え、全工場にメタネーション設備を導入する。
2022年10月、IHIは、合成メタンを製造できる「小型メタネーション装置」の販売を開始。2019年5月からシンガポール科学技術庁化学工学研究所と共同で開発した触媒技術をベースとしたシェル&チューブ型反応器で、製造能力:12.5Nm3/h、外形寸法は幅2250×長さ6100×高さ2850mmである。
2023年3月、デンソーが街や工場から排出されるCO2を回収し、メタン合成して再利用する「CO2循環システム」を公表した。CO2回収率:99%、CO2からメタンへのSOEC変換効率:99%以上とし、メタン合成時の排熱を水素製造に利用して効率アップをはかる。
2023年5月、アイシンは、西尾ダイカスト工場南棟でCO2を分離・回収して利用する「資源循環システム」の評価を開始した。アルミ溶解炉の排ガスからCO2を化学吸収法で分離回収(0.024トンCO2/日)し、回収したCO2からメタンガスを合成(12Nm3/日)する。生成したメタンは溶解炉の燃料の一部として循環利用する。
2023年8月、大阪ガス・ENEOSは、大阪港湾部で合成燃料の量産を計画。2030年までに6000万m3/年の製造をめざし、大阪ガスが近隣工場から11万トン超/年のCO2を回収、ENEOSがオーストラリアなどで製造した安価なグリーン水素をトルエンと結合させて2万トン/年のH2を輸入する。
しかし、グリーン水素の調達は輸入頼みで、合成メタンの生産コストは240〜250円/Nm3(0℃、1気圧)と試算され、現在のLNG価格の5倍と高価で商用化には低コスト化が必須である。
2024年5月、IHIは、東邦ガス知多e-メタン製造実証施設向けに「メタネーション標準機」を納入。東邦ガスでは製造能力:5Nm3/hで運転する。2030年には大型装置(数千~数万Nm³/h)の商用化も予定している。
また、2022年、JFEスチールから実証機(500Nm3/h)を受注しており、高炉排ガスからのCO2回収(20トン/日)も含めて2025年の稼働を予定する。吸熱反応のCO2回収と発熱反応のメタネーションを組み合わせ、エネルギー効率を高める。
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