既に、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を原料とし、触媒(Ni、Ruなど)を用い、500℃程度で熱化学反応でメタンを合成するサバティエ反応メタネーションが開発され実用化されている。再生可能エネルギーの電力を使いメタンを合成するサバティエ反応メタネーションの変換効率は55~60%である。
最近は、水(H2O)とCO2を原料とし、電気化学反応により80℃程度のPEM型メタネーションで変換効率70%超、800℃程度のSOEC型メタネーションにより変換効率85~90%をめざす開発などが行われている。
メタネーション技術とは
メタネーション技術の分類
「2050年カーボンニュートラル」に向け、再生可能なクリーンエネルギーに転換していくグリーントランスフォーメーション(GX)が政府により推進される中で、注目を集めているのが「メタネーション技術」である。
現在、メタネーション技術は、実用化されている熱化学法が主流であるが、低コスト化のために革新的メタネーション技術の開発を加速しており、電気化学法、バイオ法、光化学法などが研究開発されている。
メタネーション技術の概要
サバティエ反応メタネーション
1902年、フランスのPaul Sabatier(ポール・サバティエ)は、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を原料とし、500℃程度でニッケル(Ni)触媒を用い、熱化学反応でメタン(CH4)を合成するメタネーション技術を見出した。最近では、アルミナ上にルテニウム(Ru)触媒を担持させた高効率触媒も開発されている。
メタネーションは、サバティエ反応(CO2+4H2→ CH4+2H2O)に基づくもので、INPEX/大阪ガス、カナデビア(旧日立造船)、IHI、デンソー、アイシン、日本特殊陶業、豊田自動織機などが、メタネーション装置を商品化・開発している。
PEM型メタネーション
水素(H2)と水(H2O)を原料とし、80℃程度で固体高分子電解質膜(PEM)水電解装置により、メタン(CH4)を合成するメタネーション技術である。電気化学反応(CO2+4H2O→CH4+2H2O+2O2)に基づくもので、東京ガスが総合効率70%超をめざし、実用化に向けて量産化と低コスト化の開発が進めている。
また、東京ガスと宇宙航空研究開発機構は、PEM水電解と220℃程度の低温サバティエ反応を直接組み合わせた「ハイブリッド・サバティエ法」の開発を進めている。電気化学反応(CO2+4H2O→CH4+2H2O+2O2)に基づき、総合効率80%超をめざして開発を進めている。
SOEC型メタネーション
水素(H2)と水蒸気(H2O)を原料とし、800℃程度で固体酸化物型電解セル(SOEC)水電解装置により、メタン(CH4)を合成するメタネーション技術である。電気化学反応(3H2O+CO2→CO+3H2+2O2、CO+3H2→CH4+H2O)に基づくもので、大阪ガスが総合効率85~90%をめざし、量産化と低コスト化の開発を進めている。
バイオ・メタネーション
バイオメタンは、下水汚泥や生ごみ、家畜ふん尿などバイオマス由来のバイオガス(CH4:60%、CO2:40%)から、CO2を分離・精製したガスである。マイナス160℃で液化したものは、液化バイオメタン(LBM:Liquefied Bio Methane)と呼ばれ、容積を1/600に圧縮できる。
東京ガスと大阪ガスは、メタン生成菌による生物反応によりCO2とH2をメタンに変換するバイオメタネーションの開発を進めている。また、大阪ガスはバイオガス中のCO2を原料として生物反応によりメタネーションする技術や、バイオガスから生物反応や化学反応により合成メタンを製造する技術の開発も進めている。
光化学法メタネーション
基礎研究段階であるが、千葉大学では、金属ニッケルと酸化ジルコニウムの光触媒により、CO2 をメタン(CH4)へ還元する反応が①②③の手順で進むことを明らかにしている。
①CO2が酸化ジルコニウム表面でHCO3として吸着。②酸化ジルコニウムと紫外線の作用でHCO3が還元されてCOが発生。③水素とCOがニッケル表面で熱により反応してCH4が発生する。変換効率は不明である。
コメント