ブルーカーボンによるCO2の固定(Ⅳ)

火力発電

 ブルーカーボン生態系を多く保有するオーストラリアや米国は、ブルーカーボンの研究が積極的に進められている。しかし、世界的にマングローブ林が主たる対象となっており、オーストラリアなどが国連の認定を得ている。しかし、海藻・海草に関しての実績は、ほとんどないのが現状である。

海外におけるブルーカーボンの動向

  欧州委員会では、水資源に関わる経済活動や「ブルーエコノミー」の観点から、海藻養殖や海洋資源としての海藻の利活用に向けた取り組みが主体である。
 豪州、米国、英国、マルタの4か国では、ブルーカーボン生態系による温室効果ガス排出・吸収量を算定・報告しており、ブルーカーボン先進国といえる。

 一方、海外では、ブルーカーボンの「ボランタリークレジット制度」が整備されてきている。ボランタリークレジットは、NGOなどの民間セクターが認証するカーボンクレジットの仕組みである。
 国内JBEも、「Jブルークレジット」によるCO2の吸収・貯留だけでなく、それに伴う漁獲量の増加や水質浄化、生物多様性の増加などの利益も含めた「ボランタリークレジット」を発行している。

 以下には、ブルーカーボン生態系を多く有する国々での、ブルーカーボン生態系の特徴や取り組みがについてまとめる。

オーストラリア

 オーストラリアのブルーカーボン生態系は、海草藻場の面積は世界1位(52,051㎢)であり、マングローブ林の面積が世界2位(9,780㎢)、塩性湿地の面積が世界2位(13,259㎢)と、ブルーカーボン大国といえる。
 温室効果ガス排出・吸収量としてマングローブ植林、塩性湿地の消失、海草藻場の消失について算定しており、年間のCO2吸収量は約30万トンCO2である

 2015年12月のパリ協定が採択された中に、オーストラリア政府が中心となり「International Partnership for Blue Carbon」を設立した。
 オーストラリアは、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の湿地ガイドラインを用いてブルーカーボン(沿岸湿地に関連)を自主的に報告しており、ブルーカーボン生態系によるCO2排出量削減の数値目標を示している数少ない国の一つである。

 一方で、オーストラリアは、膨大なブルーカーボン生態系を保全することでクレジットを創出し、自国のCO2排出のオフセットに利用することで、火力発電などによるCO2排出量削減には非協力的との批判もある。

米国

 米国のブルーカーボン生態系は、塩性湿地の面積が世界1位(18,849㎢)である。IPCCの湿地ガイドラインを用いてブルーカーボン生態系としてマングローブ、干潟の創出・消失について算定しており、年間のCO2吸収量は約1,000万トンCO2である。

 近年、非営利団体「Restore America’s Estuaries (RAE)」を中心にした多くの湿地再生プロジェクトが、米国海洋大気庁(NOAA)も協力して進められている。
 また、マサチューセッツ州ヘーリング川河口部の再生活動に関して、カーボンオフセットプロジェクトによるボランタリークレジットの実証試験(Voluntary carbon market)が実施されている。

中国

 中国沿岸では、1950年~現在までにマングローブ、塩性湿地、海草藻場などのブルーカーボン生態系は9,236~10,059㎢が消滅し、現在、天然のものが1,326~2,149㎢、再生・造成されたものが2~15㎢ある。また、海藻養殖は1,252~1,265㎢で、天然のものと同程度の面積と報告されている。
 年間のCO2吸収量は海草藻場が15.18万トンCO2、塩性湿地が96~272万トンCO2、マングローブが39.9万トンCO2と推定されている。これらは日本とほぼ同程度の規模である。

 近年、中国の海藻養殖生産量は約1,800万トンと1位のインドネシアの1,000万トンを引き離して世界一となり、海藻養殖をブルーカーボンとして算入することに関心は高まっている。しかし、養殖された海藻は主に食用であるため、海藻の収量をバイオ燃料生産や土壌改良用のバイオ炭生産に利用する必要がある。 

インドネシア

 インドネシアのブルーカーボン生態系は、マングローブ林面積が42,550㎢、海草藻場面積が30,000㎢と広大であり、インドネシアのマングローブは世界の23%を占めるともいわれている。マングローブの保全による年間のCO2吸収量は2億トンCO2推定されており、中国についで海藻養殖の生産量が世界第2位である。

 ブルーカーボンのポテンシャルが高いインドネシアは当然ブルーカーボンへの関心も高く、インドネシア・ブルーカーボン戦略フレームワークが「国家中期開発計画(RPJMN)2020-2024」で策定されており、開発・計画、海洋政策、漁業、天然資源保全の各担当機関で実施される予定である。
 大統領令でも、2045年までに182万ヘクタールのマングローブ生態系を回復させることを目標に掲げており、これを達成するためには年間6万ヘクタールを修復する必要があると数値目標を掲げている。インドネシアはブルーカーボンを国の温室効果ガスインベントリに統合することをめざしている。
 しかし、現状ではマングローブの伐採が植林や再生の速度を上回り、減少が止まらないとの指摘がある。

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