普及率1%に達した定置用燃料電池(Ⅴ)

火力発電

 再生可能エネルギーの電力から水電解で水素を製造する方法は、製造段階からCO2を発生せず、製造された水素は長期間の貯蔵・輸送が可能であり、風力発電や太陽光発電の出力変動対策となり、発電所の設置場所が需要地と離れている場合の送変電問題を解決するための有効な手段となる。
 そのため、2013年から経済産業省により「低コスト・高効率でCOフリーの再生可能エネルギー水素の製造技術開発」が推進された。

再生可能エネルギー由来のグリーン水素

グリーン水素とは?

 非化石資源由来の水素製造方法として、再生可能エネルギーで得られた電力を用いて水電解法による製造方法が知られている。得られた水素は「再生可能エネルギー水素」、あるいは「グリーン水素」とも呼ばれ、将来の水素社会を支える水素源として本命視されている。 

 現在、水電解法で多くの実績を有するのは、旭化成などにより大型装置が商用化されているアルカリ水電解(変換効率:70~90%)である。最近では、PEFCの逆反応を利用したコンパクトで高い変換効率(~90%)の固体高分子型水電解(PEEC:Polymer Electrolyte Electrolysis Cell)が商品化されている。
 いずれも再生可能エネルギーの大きな電力変動下でも、安定して高効率で水電解が行える装置開発と、PEECでは装置の大型化開発が進められている。

 また、SOFCの逆反応を利用した固体酸化物型水蒸気電解(SOEC: Solid Oxide Electrolysis Cell)は、作動温度が高いため熱利用が鍵となるが変換効率は極めて高く、アニオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)を使うAEM形水電解は、触媒に貴金属を使わないため、共に研究開発が進められている。

 国際エネルギー機関(IEA)によれば、水素の世界需要は運輸や発電分野で増え、2050年に約3億トンと2019年の4倍に拡大する見通しである。現状は天然ガスやナフサ由来であるが、IEAは2050年には半分近くが再生可能エネルギー由来(グリーン水素)で製造されると予想している。
 政府は2050年に水素製造装置の世界市場が4.4兆円に拡大すると予測している。一方、グリーン水素の大規模生産は、再生可能エネルギー価格の安い欧州、中東、オーストラリア、チリなどが有利で、国内では再生可能エネルギー価格が依然として高く、グリーン水素の自給自足は難しいと見て輸入に頼ろうとしている

 一方、2023年2月、欧州連合は「グリーン・ディール産業計画」で、2030年までに最低1億kW分の水電解装置を導入し、1000万トン/年のグリーン水素製造の域内生産を目標に掲げている。また、域外から年間1000万トン/年のグリーン水素輸入もめざしている。

燃料電池を使った水素製造装置の開発動向

 1993年に神鋼環境ソリューションは、固体高分子電解質膜を利用した純水を直接電気分解する「HHOG」を商品化しており、水素ステーションなど国内外で200基(2022年3月末)を超える納入実績を有する。水素製造能力:1~100Nm3/h、水素ガス供給圧力:0.82MPaGをラインアップしている。

 2015年5月、日立造船は、再生可能エネルギー利用による水素ステーション向けの固体高分子型水素製造システム「ハイドロスプリング」(製造能力:1Nm3/h、圧力:0.8MPaG)を九州大学内の水素スタンドに納入。
 2018年6月、ハイドロスプリング(製造能力:1~200Nm3/h)を発表した。風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーの急激な電力負荷変動に追従し、システム全体(2.44mW×12.2mD×2.9mH)は40フィートコンテナに収納した可搬式とした。

図13 日立造船の「ハイドロスプリング」(40フィートコンテナに格納した水素発生装置)

 2022年4月、高砂熱学工業は、石狩厚田グリーンエネルギーを設立し、マイクログリッドの運営を開始した。系統電力と太陽光発電の両方から電力を供給し、太陽光発電の余剰電力は、蓄電池および固体高分子形水電解装置「Hydro Creator」(製造能力:5Nm3/h、圧力:0.9MPaG)でグリーン水素を製造して貯蔵する。

コメント

タイトルとURLをコピーしました