何故、日本は石炭火力で批判されるのか?(Ⅰ)

火力発電

 日本が石炭火力発電で批判されるのは、欧州を中心に先進諸国が石炭火力発電の抑制・廃止する中で、依然として石炭火力発電を推進し、発展途上国での建設支援を続けているためである。

 高効率石炭火力発電でも、高効率LNG火力発電(GTCC)の約2倍の温室効果ガスを排出することから、国際的な脱炭素化トレンドに逆行する。日本政府は2050年カーボンニュートラル実現を宣言しているが、石炭火力発電の抑制・廃止には後ろ向きである。

欧米の脱石炭火力発電所

 2020年以降の世界的な気候変動対策の強化により、欧州を中心に「脱石炭火力発電所」と「再生可能エネルギーシフト」が急速に進み、石炭火力発電の世界市場は急速に縮小を始めた。

フランスは2021年、英国は2025年、カナダイタリアは2030年までに、石炭火力発電所の廃止
●石炭火力発電の割合が高いドイツも段階的廃止の完了時期を2030年に前倒し
米国は豊富に産するシェールガスを燃料とするLNG火力発電への移行が進む見通し

 ロシアのウクライナ侵攻による燃料不足から、欧州においても石炭火力発電への一時的な回帰が見られたが、石炭火力発電への各国の拒否反応は根強く、抑制・廃止の方針は継続されている。

日本の石炭火力発電の抑制

 遅ればせながら、2020年7月、経済産業省は石炭火力発電所(140基)を対象に、1990年代前半までに建設された114基の非効率発電所のうち小容量の100基程度を、2030年までに段階的に休廃止すると発表した。石炭火力発電量に上限を設定し、徐々に上限を引き下げて発電容量を縮小する。

 欧州の先進諸国からの批判をかわし、積極的に温暖化対策に取り組む姿勢を示そうと目論んだが、実質的なCO2排出量の削減効果が少なく不評に終わった。あまりにも打つ手が遅く、石炭火力発電の全廃に向けて動き出した欧州に比べて手緩い感は否めない。
 加えて、新型大容量の高効率石炭火力発電所の26基に関しては維持・拡大、LNG火力発電の拡大方針を表明したことから、やぶ蛇状態になっている。

生き残りを目指す日本の石炭火力:
JERAは碧南火力発電所において、燃焼してもCO2を排出しないアンモニア燃料に着目し、石炭とアンモニアを混焼させることで、CO2排出量の段階的な削減を追求している。将来的にはアンモニアサプライチェーンを構築し、100%アンモニアによる専焼発電を目指す。
Jパワーは松島火力発電所で石炭ガス化技術の商用化を目指す。既存インフラを生かしながら、石炭ガス化設備の付帯工事を2024年から着手し、2026年度の運転開始を予定する。将来的には、排出されるCO2の回収・貯留装置を付帯しゼロエミッション化を目指す。

インド・東南アジアのエネルギー事情

 今後、経済発展により電力消費が飛躍的に伸びるインドや東南アジアを中心とした多くの途上国では、低コストの石炭火力発電所の増設が見込まれている。
 インドネシアは、石炭火力の設備容量を2021年の4200万kWから2030年には6000万kWまで、ベトナムは、2020年の2100万kWから2030年には3000万kWまで拡大する予定である。今から建設が始まる発電所も多く、日本は高効率石炭火力発電技術の市場と期待している。  

 また、途上国もカーボンニュートラルに向けて動き始めている。インドネシアは2060年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標を掲げ、インドも長期戦略の中で再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニアを石炭火力で混焼する計画を立てている。いずれも日本が先行する技術である。

 一方、途上国でも再生可能エネルギーの導入は始まっており、世界的にみても石炭火力発電との価格競争で遜色のないレベルに達しているため。しかし太陽光発電は中国・韓国メーカーの参入により低価格化が急速に進み、風力発電は欧米メーカーが高いシェアを維持している

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