2020年代に入ると、急速にバイオマス発電所へのCCS設備の導入が始まる。基本的にバイオマス発電所はCO2排出量が実質ゼロとみなされるため、付帯されたCCS設備が稼働すれば大気中のCO2を減らす「ネガティブ・エミッション(負の排出)」発電所となる。
バイオマス発電所へのCCS設備の導入
バイオマス発電所からのCO2排出量を減らす取り組みは、ベックス(BECCS:Bio Energy with Carbon dioxide Capture and Storage)と呼ばれている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書でも、BECCSが脱炭素の有効な手段になる可能性を指摘している。
急速に進む導入状況
2020年10月、環境省プロジェクトで、東芝エネルギーシステムズはグループ会社のシグマパワー有明が所有する福岡県大牟田の三川発電所(出力:5万kW)で、CCS実証設備(500トン/日)の運転を開始した。主燃料はパーム椰子殻(PKS)で、排出されるCO2の50%以上の回収を目指す。
2021年6月、三菱重工エンジニアリングと英国電力大手Drax Groupは、ノース・ヨークシャー州のバイオマス発電所で、「Advanced KM CDR Process」を長期間使用する契約を締結した。
2024年にCCS設備の建設を開始し、2027年の稼働を目指す。CO2回収量を約800万トン/年(2万トン/日)以上とし、現在世界最大とされる北米プロジェクトの約5倍に相当する。
2022年2月、日本製紙とタクマは、北海道苫小牧市の勇払バイオマス発電所(出力:7.5万kW)で、バイオマス発電に適した高効率CCS設備の開発を2023年から始めると公表した。苫小牧CCS実証試験センターのCO2地下貯留施設と組み合わせて、2030年の導入・稼働を計画している。
バイオマス発電メーカー大手のタクマは、アミンを溶かす溶媒に一般的な水を使わない方式を採用し、100℃以下でも効率的にCO2を分離できるとし、必要な熱量を1.5GJ/トン-CO2と従来比半減を目指している。
2022年6月、三菱重工エンジニアリングは、太平電業から受注した小型CO2回収装置の商用初号機の稼働を発表した。「ひろしま西風新都」のバイオマス発電所(出力:7000kW)に導入され、CO2回収量は0.3トン/日で、CO2排出のほぼ全量を回収して構内の農業ハウスで活用する。
小型CO2回収装置はモジュール化を実現し、設置面積:全長5m×全幅2mで、製造工場からトラック輸送し短期間で設置することができる。
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