CO2回収システム搭載船とは?(Ⅱ)

船舶

 国内では、2020年8月に三菱造船、川崎汽船、日本海事協会が、国土交通省海事局の補助事業で陸上用のCO2回収装置を実船搭載して試験運転すると発表した。”CC-Ocean (Carbon Capture on the Ocean)”プロジェクトである。

 一方、欧州を中心に船上CCS搭載積極的な取組が始まった。2019年10月にデンマークの海事研究開発センターを中心に「DecarbonICE」プロジェクト立ち上げられた。将来的にバイオ燃料などと組み合わせ、排出するCO2よりも回収するCO2の量が上回る「カーボンネガティブ」も構想に入れている。

船上CCS搭載に関する取り組み

 2018年、三菱造船がゼロエミッション船の構想を公表した。メタンやメタノールを燃料とするエンジンを開発し、航行中に発生するCO2を回収して船内タンクで液状にして貯蔵し、寄港時に回収したCO2を使い再生可能エネルギーによる電力でメタンやメタノールを合成して使用するサイクルである。

図3 三菱造船によるゼロエミッション船の検討(2018年度実施:船上CCS搭載)

 2020年8月、三菱造船、川崎汽船、日本海事協会は、国土交通省の補助事業で陸上用のCO2回収装置を実船搭載して試験運転すると発表した。2年間のCO2回収小型デモプラント(CO2回収能力:0.1t/日)による試験(”CC-Ocean (Carbon Capture on the Ocean)”プロジェクト)である。
 三菱造船が液体アミンによる化学吸収法の小型デモプラントを製造して、川崎汽船の石炭運搬船「CORONA UTILITY」(積載重量トン数:8.8万トン)に搭載し、合計7か月間の実証試験を行う。日本海事協会はHAZID(HAZard IDentification:潜在危険および想定災害について判定)検証を行う。

図4 CC-Ocean プロジェクトでのCO2回収デモプラントのイメージと装置概要

 一方、欧州を中心に、船上CCS搭載に関しては積極的な取組が始まっている。

 2019年12月、日本郵船は国際的な「DecarbonICE」プロジェクトに参加したと発表した。このプロジェクトは、2019年10月にデンマークの海事研究開発センターと世界各国の海運会社、造船所などにより立ち上げられた。
 船舶から排出されるCO2を運航中に回収してドライアイスに変換し、深海へドライアイスを送り込み、液状や水和物として安全・永続的に海底堆積物中に貯蔵する。将来的にはバイオ燃料などと組み合わせ、排出するCO2よりも回収するCO2の量が上回る「カーボンネガティブ」も構想に入れている。

 2021年10月、ノルウェーのソルバングは、欧州の舶用機器大手バルチラと共同で、船上CCS搭載の実証試験を行うと発表した。ソルバングが運航する21000m型エチレン船「Clipper Eos」にパイロットシステムを搭載し、CO2排出量の70%削減を目指す。丸紅も用船者の立場で協力する。

 また、2022年7月、ドイツのIonada(イオナダ)はLNG船を対象とする船舶搭載用のCO2回収システムを開発した。モジュラー式のCO2回収システムの特許を取得し、中空糸膜コンタクターを開発・製造・販売する。設置面積は従来の50%で、消費電力は30%に抑えられるとしている。

 2022年7月、シンガポール船主イースタン・パシフィック・シッピングは、尾道造船で建造中のミディアムレンジ型プロダクト船2隻に排ガス浄化装置とCO2回収装置を2023年春までに搭載と発表した。
 オランダのエンジニアリング会社バリューマリタイム(VM)と契約し、CO2は特殊な化学物質と反応させ、特殊なコーティングを施した燃料油タンクの一つに貯蔵する。この液体物は入港時にポンプでくみ上げ、バージまたはトラックでCO2のエンドユーザーまで輸送される。
 搭載船のCO2排出量の40%を回収し、将来的には90%超を視野に入れる。回収率40%は貯蔵タンク容量で決まり、2週間運航による搭載船のCO2排出量に相当する。CO2は主にロッテルダムで降ろして温室植物の成長促進に利用し、長期的には合成燃料を製造して自社での再利用も想定している。

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