蓄電池導入の最大の課題は低コスト化である。EV用蓄電池のリユースや安価な中国産蓄電池の導入の声が聞こえるが、政府による具体的な方策は示されていない。
また、定置型蓄電池と需要地点を結ぶ送電線の空き容量が少ないことも大きな問題である。政府は、「日本版コネクト&マネージ」による送電線の空き容量の活用を進めており、系統用蓄電池の普及にも有効である。
系統用蓄電所の実現に向けた動き
系統用蓄電池導入の課題
■蓄電池の低コスト化
蓄電池導入の最大の課題は低コスト化である。第6次エネルギー基本計画では産業用蓄電池の発電コストを約24万円/kWh(2019年度)から、6万円/kWh程度(2030年度)に下げる目標を掲げている。しかし、第7次エネルギー基本計画では低コスト化目標が掲げられていない。
EV用蓄電池のリユースや安価な中国産蓄電池の導入の声が聞こえるが、具体的な方策は出されていない。
一例として、住友商事は2021年度に実施した系統用蓄電池補助金を活用し、2023年9月、北海道千歳市に「EVバッテリー・ステーション千歳」を完工した。新規民間事業者が広域送電系統(特別高圧帯)へ調整力を提供する国内初の「系統用蓄電システム」(出力:6,000kW、容量:23,000kWh)である。
日産自動車との合弁会社であるフォーアールエナジーが提供するリユースEVバッテリーを定置用蓄電池として活用し、経済的価値の高い設計でシステム化されている。
■空き容量の少ない送電線の課題
定置型蓄電池と需要地点を結ぶ送電線の空き容量が少ないことは大きな課題である。再エネ大量導入に向けた系統整備/調整力の確保のため、電気事業法の改正により北海道エリアでは「系統用蓄電池」が増加し、送電線の運用容量の制約による系統混雑の発生が懸念されている。
実際に、北海道エリアでの系統用蓄電池の接続検討申込は、2022年7月末時点で61件/160万kWにのぼる。これは、北海道エリアの年間平均電力需要(約350万kW)の半分に迫り、北本連系設備60万kW、新北本連系設備30万kW、新々北本連系設備(2027年度末運開予定)30万kWの合計120万kWを上回る。
2024年3月の調査では、送電網への接続検討を表明した事業者は約4000万kWに上るが、契約手続きに至ったのは330万kWに留まる。事業可能性を探るための申し込みが多く、事業者が蓄電池を設置する地域での送電線の空き容量が不十分で調整に手間取っていることも指摘されている。
経済産業省は、「日本版コネクト&マネージ」による送電線の空き容量の活用を進めている。従来の系統接続の考え方や運用方法を見直し、系統の「隙間」に注目し既存系統を最大限活用する方策である。連系線を使った他地域への送電が主目的であるが、増設が進むであろう「系統用蓄電池」の普及にも有効である。
系統用蓄電池の実証事業&事業参入
2022年の電気事業法の改正を受けて、系統用蓄電池の実証事業・事業参入の発表が相次いでいる。2023年度の国内の系統用蓄電池の導入量は約150万kWhであったが、2030年度には約2400万kWhまで増える見通しで、政府や自治体が補助金などで普及を後押ししている。
2023年12月、経済産業省は大型蓄電池設置への補助を拡充すると発表。新電力や再エネ事業者などの投資金額の1/3~1/2程度を補助し、複数年(2〜5年)にわたり支援できる新制度で、2024年度予算案に数百億円を盛り込むとした。
2024年3月、東京都は、東京エリアの電力系統に直接接続する定格出力:1000kW以上の定置型蓄電池の導入に必要な経費の一部を助成する事業「再エネ導入拡大を見据えた系統用大規模蓄電池導入支援事業」(2024年~2030年、助成金の申請は2028年度まで)を開始した。2024年度の予算は130億円である。
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