この再エネ制御は、2018年10月13日(土)に九州電力エリアで離島以外では初めて行われた。2022年以降、北海道、東北、中国、四国、沖縄電力、北海道、東北エリアでも実施された。抜本的な対策が遅れたことで、「再エネ制御」の常態化が始まり、再生可能エネルギーの導入意欲が削がれている。
実際には東京電力エリアでは、2024年度までは「再エネ制御」は起きていない。しかし、毎年、東京電力は「再エネ制御」が起きる可能性を発表しており、いつ起きても不思議ではない状況にある。
再エネ制御の現状
九州電力で起きた再エネ制御
2018年10月13日(土)に起きた九州電力の再エネ制御の状況をみてみよう。当日の再エネ制御は、九州全体で約24000件の太陽光発電契約のうち、熊本県を除く6県の9759件(出力合計:43万kW)が対象となった。
週末でオフィスや工場などの電力需要が828万kWに減る見込みの中で、好天のために太陽光発電による電力量が1293万kWに達した。196万kWを中国電力などに送電し、226万kWを揚水発電や蓄電池で貯蔵したが、43万kWが余剰となったのである。
そのため、需給バランスが崩れて大規模停電につながる可能性が高いと判断し、九州電力は再エネ出力制御を決定したのである。
同様の「再エネ制御」の事態が起きる可能性が高いとして、中国電力、東北電力、沖縄電力も再エネ出力制御の準備を進めた。

再生可能エネルギーの導入に際して出力変動が問題となることは、2012年7月の固定価格買取制度(FIT)の開始以前から周知のことである。エネルギー貯蔵システム(揚水発電や蓄電池など)により制御し、他地域へ送電するなど電力量を調整することで、余剰電力を無駄なく使うことが出来る。
しかし、このエネルギー貯蔵システムの実用化には設備の立地制約があり、安全性確保に多額の投資が必要で、設置には長期間を必要とする。政府と電力会社は、この対策を先送りしてFITで再生可能エネルギーの導入を推進した結果、「再エネ制御」に至ったのである。
太陽光発電や風力発電の導入推進のためには、「再エネ制御」はマイナス効果となる。せっかく発電しても買い取り量を減らされては、新たな発電事業者は導入意欲を削がれる。電力貯蔵と連系線の強化が重要となるが、対策が遅れて出力制御率が改善されないた九州電力エリアでは、再エネ導入は頭打ちとなっている。

出典:資源エネルギー庁
東京電力の再エネ制御の発表
2022年6月26日(日)、6月にしては異例の暑さ(異常気象)で電力需要が急増した結果、政府は東京エリアへの「電力需給ひっ迫注意報」を発令した。
その後、6月30日に注意報は解除された。政府は需要面では家庭や企業から幅広く節電協力が得られたこと、供給面では太陽光発電の発電量が増えたこと、揚水発電の活用、他電力各社からの融通、さらに運転を停止していた千葉県の火力発電所が再稼働したことなどをあげている。
ところが、2023年2月、東京電力HDは太陽光や風力などで発電した電気の受け入れを一時停止する「再エネ制御」を行うと発表した。企業向けの電力需要が減る5月の大型連休中に実施する可能性があり、経済産業省の有識者会議に報告されて具体的な実施方法などの協議が行われた。
この「再エネ制御」とは太陽光発電や風力発電による電源を送配電網から遮断することで、電力会社は再エネ発電事業者から買電しないことを意味する。したがって、発電事業者は自家消費できる分以外の再生可能エネルギーを捨てることになる。
「再エネ制御」は、電力会社が再エネ発電事業者に依頼して実施する。東京電力は輪番制のルールに従い、2023年度は設備規模が大きい太陽光発電事業者から出力制御を依頼し、2024年度以降は、それ以外の事業者にも出力制御を依頼する方針で、経済産業省の有識者会議で了承された。
実際には東京電力エリアでは、2024年度までは「再エネ制御」は起きていない。しかし、毎年、東京電力は「再エネ制御」が起きる可能性を発表しており、いつ起きても不思議ではない状況にある。
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