石炭火力でのバイオマス混焼問題(Ⅲ)

再エネ

 2023年4月、環境NGO (90団体)が、石炭火力発電のバイオマス混焼および専焼化は気候変動を加速させ、森林生態系を破壊すとして、「廃棄物以外の燃料を使うバイオマス発電を再生可能エネルギーの対象から外し、補助金等による支援を行わないこと」などを、政府に求める共同声明を発表した。

 大規模バイオマス発電や石炭火力発電の混焼に使われる木質バイオマス燃料は、大部分が東南アジアや北米からの輸入であり、森林破壊を招く可能性が高い。

環境NGOによるバイオマス発電の反対

国際環境NGO FoE Japan

  2021年12月、国際環境NGO FoE Japanが、「石炭火力発電によるバイオマス混焼の問題点」について声明を発表した。その要点は以下の3点である。

■石炭火力発電によるバイオマス混焼へのFIT適用を廃止すべき:
 2013年~2017年にFIT認定を受けた石炭火力発電のバイオマス混焼設備の一覧表を公表。2018年以降、新規のFIT認定はなく、2019年度以降、バイオマス混焼はFITの新規認定対象から除外された。
 2021年8月時点で、FIT認定を受けた大手電力会社、製鉄・製紙会社の石炭火力発電所は38件にのぼる。うち32件は、非効率石炭火力発電(亜臨界圧:Sub-c、超臨界圧:SC)である。
■非効率石炭火力発電のバイオマス混焼による見掛け上の高効率化を阻止すべき:
 「省エネ法」では、バイオマス混焼により、非効率石炭火力発電を見掛け上高効率化することが認められている。そのため、2020年7月時点の大手電力会社の非効率石炭火力発電設備(Sub-c:98基、SC:20基)も、今後、バイオマス混焼化に移行する可能性が高い。
■同じ熱量を得るのにバイオマス(木材)の炭素排出係数は石炭より高い:
 「日本国温室効果ガスインベントリ報告書2021年」(国立環境研究所)によると、発電に利用される輸入一般炭の排出係数は24.3(t-C/TJ)であるのに対し、バイオマス(木材)は29.6(t-C/TJ)と石炭よりも高い。

環境NGO (90団体)の共同声明

 その後、2023年4月、環境NGO (90団体)が、石炭火力発電のバイオマス混焼および専焼化は気候変動を加速させ、森林生態系を破壊すとして、「廃棄物以外の燃料を使うバイオマス発電を再生可能エネルギーの対象から外し、補助金等による支援を行わないこと」などを、政府に求める共同声明を発表した。

■石炭火力発電所でのバイオマス混焼が増加する現状:
 現在、FIT認定を受けるバイオマス発電設備のうち40件が石炭火力発電のバイオマス混焼で、うち35件は非効率石炭火力発電(Sub-C、SC)である。政府は、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現政策で石炭火力発電所等の燃料転換にバイオマス混焼を含めている。
 そのため、バイオマス混焼で使用される木質ペレットの輸入量は過去10年で61倍に増え、2022年には約441万トンに達した。木質ペレット輸入量のさらなる増加が予想される。

図6 木質ペレットの月別輸入量と価格(2024年4月) 出典:財務省「貿易統計」、林野庁

■石炭火力発電のバイオマス混焼とバイオマス専焼への転換は「カーボンニュートラル」か?
 木質バイオマス発電は火力発電である。バイオマス燃料の燃焼で、長時間をかけて蓄えてきたCO2が大気中に放出され、伐採された森林が元の状態に回復する保証はなく、森林が放出されたCO2を回収し終えるには長い年月を要する。さらに、伐採・加工・輸送の各段階において、化石燃料由来のCO2が発生する。
 「ライフサイクル全体におけるCO2排出量」と「森林の回復に要する年月」を考慮すると、バイオマス発電を「カーボンニュートラル」とみなせず、気候変動を加速させる大きなリスクである。
■石炭火力発電でのバイオマス混焼・専焼は石炭火力発電よりCO2排出量が多い!
 産業技術総合研究所の試算では、発電効率38%の石炭火力発電所のCO2排出係数は0.84kg-CO2/kWhであるが、バイオマス5%混焼の場合には0.85kg-CO2/kWhへと増える。さらに、石炭火力のバイオマス専焼への転換および改修の場合には1.03kg-CO2/kWhへと増加する。
■木質バイオマス発電の推進は森林破壊を招く可能性が高い!
 大規模バイオマス発電や石炭火力発電の混焼に使われる木質バイオマス燃料は、大部分が東南アジアや北米からの輸入である。バイオマス燃料生産による森林減少・劣化や生物多様性喪失などの影響は大きく、破壊された森林の回復は容易でなく、質的に再び同じ生態系に回復することは不可能である。

図7 バイオマス発電のCO2排出量〜燃焼のCO2排出量 出典:産業技術総合研究所

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