なぜか伸びない水力発電(Ⅱ)

再エネ

 一般水力発電は燃料を必要とせず、調整池式や貯水式では昼夜・天候を問わずに24時間の発電運転が可能である。中小水力発電の設備利用率は50~58%で、地熱発電の49%で、風力発電の約22%、太陽光発電の約15%と比べてはるかに高く、電力貯蔵を必要としない特長を有する。

 また、水車と発電機は国内で調達することが可能であり、純国産エネルギーと位置付けられ、エネルギー自給率の向上に貢献する。また、中水力発電の発電コストは11円/kWhと安く、大規模なLNG火力発電の10.7円/kWhとほぼ同等である。

水力発電の分類と仕組み

水力発電の分類と重要性

  一般水力は、流れ込み式(流込式、自流式、水路式)」、「調整池式」、「貯水池式」に大別される。

 流れ込み式水力発電は、河川水をそのまま発電所に引き込んで水力発電する。豊水期や渇水期など水量変化にともない、発電電力量も変わる。また、水を貯めることができないため、豊水期には全ての水を利用できず、渇水期には発電できない問題点があるが、比較的建設コストが抑えられるメリットがある。

 「調整池式水力発電」は、調整池に水を貯水することで水量を調節し水力発電する。1日分あるいは1週間分程度の発電用水を調整池に溜めて、発電電力量を調整できる。そのため、短期間の天候の変化や電力需要の変化に対応でき、流れ込み式よりも効率的な発電が可能である。

 「貯水池式水力発電」は、河川をダムでせき止め、雪どけや梅雨、台風などによる豊水期に貯水し、渇水期に放流して発電する。四季のある日本でも、年間を通じて安定した水力発電が可能である。しかし、ダム建設には多大の建設期間・費用を要し、周辺地域の水没や環境変化などにも大きな影響を及ぼす。

 一方、国内では出力調整が苦手な原子力発電所の増設に対応し、夜間の余剰電力を貯蔵するため「揚水式水力発電所」が設置された。

 「揚水式水力発電」は、発電所の上部と下部に大きな池(調整池)をつくり、昼間の電力需要の多いときは上池から下池に水を落として発電し、発電に使った水は下池に貯める。夜間は余剰電力を使って下池の水を上池にポンプで汲み上げる。一般に発電・揚水の両方の運転に使える「ポンプ水車」が使われる。

図4 一般水力発電の主な方式と揚水発電の仕組み 出典:電気事業連合会

 一般水力発電は燃料を必要とせず、調整池式や貯水式では昼夜・天候を問わずに24時間の発電運転が可能である。中小水力発電の設備利用率は50~58%で、地熱発電の49%で、風力発電の約22%、太陽光発電の約15%と比べてはるかに高く、電力貯蔵を必要としない特長を有する。

 また、水車と発電機は国内で調達することが可能であり、純国産エネルギーと位置付けられ、エネルギー自給率の向上に貢献する。また、中水力発電の発電コストは11円/kWhと安く、大規模なLNG火力発電の10.7円/kWhとほぼ同等である。(ただし、小水力の発電コストは25.2円/kWhと割高になる。) 

水力発電の仕組み

 水力発電において、水車方式は水力発電システムの総合効率に最も大きな影響を及ぼす。従来から流水状況に合わせて多くの水車方式が開発されており、衝動水車」反動水車」周流水車」重力水車」に分類できる。

 「衝動水車」は、水の速度エネルギーによる衝撃力で水車を回転させる方式で、大水力から中小水力まで幅広く採用されている。
 ペルトン水車は、ノズルから噴射した水流をバケットと呼ばれる受水部に衝突させてランナを回転させる。
 ターゴインパルス水車は、ペルトン水車を改良して比速度(ノズル1個あたりの出力)を2倍にした。
 クロスフロー水車は、流水入口のガイドベーンで流量調整を可能とし、低流水量でも効率低下が少ない。

 「反動水車」は、流水が翼を通過する時の圧力エネルギーで水車を回転させる方式で、大水力に多く使われている。
 フランシス水車は、外側の渦巻状ケーシングから導入される流水をガイドベーンで流量調整し、その内側に位置するランナを回転させる。
 プロペラ水車では、翼が可動式のカプラン水車や固定式のチューブラ水車などが開発されている。

 「周流水車」と「重力水車」は、古くから灌漑用や製粉用に利用されてきた小水力向けの方式である。いずれの方式も開放型水路に設置され、周流水車は水流のエネルギー、重力水車は水が落下するときの重力エネルギーにより水車を回転させる。 

図5 水力発電の水車の様々な方式

 以上のように、水力発電システムの水車は設置される地形(落差や流量等)に対応して、様々な種類の水車方式が開発されている。水車により得られた回転運動は、水力発電機に伝えられて発電が行われる。

図6 縦型フランシス水車型の水力発電機 
出典:東芝エネルギーシステムズ

水車方式の選定について

 次に、水車方式の選定に使われる有効落差と使用水量関係を示す。高落差・大容量の水力発電には「フランシス水車」、「ペルトン水車」、「ターゴインパルス水車」が使われ、低落差の中小水力発電の主力は「クロスフロー水車」、「プロペラ水車」が主力である。

 例えば、一般に水力発電設備の出力は、次式により求めることができる。      P=9.8×He×Q×ηWT×ηHG 
ただし、P:出力(kW)、He:有効落差(m)、Q:流量(m3/s)、ηWT:水車効率、ηHG:発電機効率

 すなわち、有効落差(He=31.2m)と使用流水量(Q=1.3m3/S)の河川条件の場合には、水車形式は横軸フランシス水車、クロスフロー水車などが選択できる。その場合の発電出力は上式を計算することにより、水車効率(ηWT=0.88)、発電機効率(ηHG=0.93)とすると、約325kWとなる。

図7 水車方式の選定に使われる有効落差―使用水量関係図 
出典:NEDO再生可能エネルギー技術白書(第2版)

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