伸び悩む地熱発電の現状(Ⅷ)

再エネ

 短期的には、小中規模バイナリーサイクルを地産地消の分散電源として拡大させる必要がある。しかし、既設の大規模地熱発電所については、経年的な発電効率の低下対策と老朽更新など「リパワリング」の推進が緊急の課題である。
 中期的には、大規模地熱発電所の新設を加速するために、経験豊富でファンドのしっかりした大手電力会社などを巻き込む動きが必要である。長期的には、強化地熱発電(EGS)の導入に向け、継続的な政府の推進・支援が必須である。

地熱発電の抱える問題

 日本の地熱発電の資源量は出力ベースで2347万kWを保有するにも関わらず、2022年時点で開発された設備容量は62.1万kWであり、開発比率はわずか2.6%にすぎない。政府は2030年までに総出力:150万kWの目標を掲げるが、世界的に見ても出遅れている。
 「なぜ日本の地熱発電の開発は進まないのか?」、この疑問が一番大きな問題である。

 この開発が遅れている理由として、①地熱資源の多くが国定公園内、②住民や温泉事業者からの反対、③開発期間(資源量の掘削調査)が長いなどが指摘されて久しいが、2012年以降に政府が規制緩和や開発支援策を進めてきたことで、ようやく光が見え始めてきたのが現状である。

 大規模地熱発電は運転開始まで10年以上を必要とする。2012年以降に政府が規制緩和や開発支援策を進めてきたが、その結果が出るのはこれからである。国内の地熱発電所の建設は約20年間にわたり停滞した。この反省から短中期的と長期的な視野に立った地熱発電の計画とその確実な遂行が必要である。

短中期的な地熱発電の推進策

 地熱発電の電力量は1997年をピークに年々減少傾向にあり、総発電電力量は3割程度減少している。これは生産井からの蒸気量の減少が主原因とみられるが、機器の経年劣化現象も影響している。地熱発電所の新設に注目が集まっているが、短期的には設備更新や老朽化対策による「リパワーリング」が必要である。

 既設の地熱発電所では、大手電力会社の休止・廃止が目立つ。一方、新設は小中規模のバイナリーサイクルの増設が認められるが、九州電力以外の大手電力会社の動きが見えてこない。固定価格買取制度(FIT)/フィードインプレミアム(FIP)は、買い取る側の大手電力会社には魅力的ではないためであろう。

 しかし、地熱発電所の運営・保守で培ってきた大手電力会社の経験は重要であり、新規参入の地熱発電企業との情報共有の仕組み作りが必要である。また、10年以上を要する大規模地熱発電所の新設には、明確なファンドに基づく長期計画とその遂行が不可欠であり、大手電力会社などの参入が望ましい。

 民間任せとなっている地熱発電の「リパワリング」と「新設」に関して、政府介入による見直しが必要である。特に、大規模地熱発電所の新設に関しては、大手電力会社などを巻き込む動きが有効である。
 環境省が示す地熱導入ポテンシャルが100万kWを超える電力管区は、北海道電力(750万kW)、東北電力(398万kW)、東京電力(141万kW)、九州電力(131万kW)、中部電力(111kW)である。九州電力以外の地熱発電開発の動きが見えてこない。 

表3 電力各社が示す再エネ開発目標値は明らかに低い 出典:電気事業連合会

長期的視野に立つ次世代地熱発電の開発

  今後、大規模地熱発電の開発を加速するために、政府は日本での地熱発電の開発に関して投資に見合う十分な収益性を明確に示す必要がある。これが明らかでなければ、開発に10年以上を要する地熱発電への民間企業からの積極的な投資は望めない。

 特に、強化地熱発電(EGS)の導入により地熱資源量は飛躍的に増加することから、将来に向けた電力貯蔵を必要としないベースロード電源として地熱発電の期待度は高い。過去の過ちを二度と繰り返さないよう、政府による継続的な推進と支援が必要である。 

 短期的には、小中規模バイナリーサイクルを地産地消の分散電源として拡大させる必要がある。しかし、既設の大規模地熱発電所については、経年的な発電効率の低下対策と老朽更新など「リパワリング」の推進が緊急の課題である。
 中期的には、大規模地熱発電所の新設を加速するために、経験豊富でファンドのしっかりした大手電力会社などを巻き込む動きが必要である。
 長期的には、強化地熱発電(EGS)の導入に向け、継続的な政府の推進・支援が必須である。

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