なぜ?再燃する宇宙太陽光発電(Ⅲ)

再エネ

 2000年代には地球温暖化問題を背景に、米国防総省(CNN)が宇宙太陽光発電の開発に乗り出している。 2019年には空軍研究所(AFRL)が、海軍調査研究所(NRL)、ノースロップ・グラマンと共同で1億ドルの予算で「SSPIDR(スパイダー、Space Solar Power RF Integrated Tile Experiment)」プロジェクトを開始した。電力インフラがない戦場の部隊やシスルナ(地球と月との間)空間を移動する衛星への電力供給をめざしている。

米国での宇宙太陽光発電

 1970年代には石油ショックを背景に、米国航空宇宙局(NASA)などが宇宙太陽光発電の開発に取り組んだが、実用化には至らなかった。2000年代には地球温暖化問題を背景に、米国防総省(CNN)が宇宙太陽光発電の開発に乗り出している。

 2020年5月、低軌道を周回する国防総省の無人衛星「X37B」に、太陽光発電高周波アンテナモジュール(PRAM)が搭載され打ち上げられた。宇宙空間向けに青色光も含む強力な太陽光エネルギーを吸収できる12インチ(約30cm)四方の特殊な太陽光パネル(出力:10W)が搭載された。
 2021年3月、米国防総省の研究チームが、宇宙空間で太陽光パネルの発電試験に成功と発表。ただし、地球に直接送電は行っていない。90分で地球を1周する「X37B」は、その約半分は太陽光を受けない。今後、地球から36000km離れた1日で地球を1周する対地同期軌道での発電実証が必要である。

 米国防総省研究チームは、レトロディレクティブ・ビーム制御技術を活用することで、マイクロ波の伝送技術は実証済みとしている。すなわち、地上の受電アンテナから宇宙空間の太陽光パネルに向けてパイロット信号を送り、地上の受電機の準備が整っていることが確認された場合のみ送電する。

図4 試験中に熱真空チャンバー内に設置されたPRAMの関連設備
出典:ワシントンの米海軍調査研究所/Jonathan Steffen/U.S. Navy

 2021年12月、航空宇宙・防衛メーカーの米国Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、無線エネルギーをビーム状に送信する技術実証に成功したことを発表した。
 2019年に空軍研究所(AFRL)が、海軍調査研究所(NRL)、ノースロップ・グラマンと共同で1億ドルの予算で開始した「SSPIDR(スパイダー、Space Solar Power RF Integrated Tile Experiment)」プロジェクトの成果。電力インフラがない戦場の部隊やシスルナ(地球と月との間)空間を移動する衛星への電力供給をめざした。

図5 AFRLが2025年に打ち上げる予定の軌道上実証衛星「Arachne(アラクネ)」
出典:米国空軍研究所(AFRL)

 2023年6月、米国電気電子技術者協会(IEEE)は、「宇宙太陽光発電は、技術的な課題はあるものの、将来人類にとって重要なエネルギー源になる」と提言した。米国では、宇宙太陽光発電(SSPS:Space solar power system)は、SBSP(Space-based Solar Power)とも呼ばれている。 

 2023年6月、米国カリフォルニア工科大学が宇宙から地上への送電に成功したと発表。同年1月に宇宙空間に打ち上げた人工衛星「VIGORIDE」に搭載した小型実証機「SSPD-1」により、5月からマイクロ波による送電を開始し、キャンパス内の建物の屋上で受電した。マイクロ波の出力や伝送効率は不明である。
 32個の種類が異なる太陽光パネルとマイクロ波送受電モジュール「MAPLE」を人工衛星に搭載し、シールドなしの宇宙空間の厳しい環境下で、マイクロ波変換→送電→約30cm離れたアンテナでの受電→直流変換が正常に動作することを確認している。
 同大学は2013年に実業家ドナルド・ブレンから1億ドル(約140億円)超の寄付や、ノースロップ・グラマンから2014〜2017年に1250万ドルの研究費を得ており、軌道上展開型超軽量複合材料実験機(DOLCE)と呼ばれる自己組み立て型太陽光パネルアレイモジュール式コンポーネントの研究やL-SPSSの研究も進めている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました