2020年代に入り、中国メーカーを中心に主力のシリコン系太陽電池は多結晶から単結晶へと移行する。2021年には、太陽光パネルの全生産量の97%が結晶シリコン(236GW)で、内訳は単結晶シリコン(215GW、89%)の増加が継続し、多結晶シリコンが大きく減少した。
2022年には、太陽光パネルの生産量の97%を単結晶シリコンが占めるに至り、多結晶シリコンは1%を切り、薄膜太陽電池のシェアを下回った。また、単結晶シリコンについても従来のp型PERCは減少し、n型PERCが総生産量の半分以上となった。
シリコン系太陽光パネルの技術展開
2012年に中国などのメーカーが、「裏面不動態型セル」(PERC: Passivated Emitter and Rear Cell)の生産を開始した。変換効率向上のため、PERCはセル裏面側にパッシベーション層(不活性化層)を形成して、キャリア(電子と正孔)の再結合で生じる発電ロスを低減できる。
当初、PERCは単結晶シリコンと多結晶シリコンの両方に適用されたが、より変換効率が向上する単結晶シリコンに注目が集まり、2015年からシリコン(Si)にホウ素(B)をドープしたp型半導体を使ったp型PERCの生産が増強され、2019年には本格生産に拡大した。
その後、p型PERCの変換効率が限界に近づいたため、Siにリン(P)をドープしたn型半導体を使ったn型PERCの生産に移行し、2022年にはp型PERCの生産量を上回った。n型PERCは低照度でも発電でき、高温時の発電量低下が少なく、劣化しにくい特長を有している。
実際、2021年には、太陽光パネルの全生産量の97%が結晶シリコン(236GW)で、内訳は単結晶シリコン(215GW、89%)の増加が継続し、多結晶シリコンが大きく減少した。
また、薄膜太陽電池は変換効率の伸び悩みで結晶シリコンとの価格競争に負け、薄膜シリコンとCIGSはメーカー各社が相次いで事業を撤退し、CdTe薄膜は米国ファーストソーラーのみの生産となった。
2022年には、太陽光パネル生産量の97%を単結晶シリコンが占めるに至った。その結果、多結晶シリコンは1%を切り、薄膜太陽電池のシェアを下回った。また、単結晶シリコンのp型PERCは減少し、n型PERCが総生産量の半分以上となった。
また、2022年には、多くの太陽光パネルメーカーがn型PERCの製品化を発表し、n型TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contac、量産型トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト)を中心に、さらなる高出力・高効率化に向けた開発が進められている。
■ジンコソーラーのn型TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contac):
2022年12月、バルクデフェクトパッシベーション技術、新型ポリシリコンコンタクト、金属シリコン界面再結合抑制技術などを開発し、大型化した182mm角のn型TOPConセルで最大変換効率26.4%を達成。最新シリーズ「Tiger Neo」は、このn型TOPConを量産化したモデルで変換効率は23.23%である。
■チントソーラーのn型TOPCon(量産型トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト):
182mm角のn型TOPConセルの量産化で先行し、「ASTRO N」の名称で販売。p型とのコスト差を最小に抑えながら、2023年中に生産するモジュールの60%、2025年には90%をn型に切り替える。
■トリナソーラーのn型TOPCon“トリプルカット”:
大型の210mm角のn型TOPConセルを採用し、1枚のセルを3分割することで電流値を国産パワコン適合レベル(11A以下)に抑えたn型TOPCon“トリプルカット”セルを実用化した。210mm×182mmの特殊セルによるモジュールもラインアップ。
■ライセンエネルギーのn型HJT(Heterojunction technology、超高効率ヘテロ結合技術):
2019年から158mm角のn型HJTセルの開発・生産を進め、2022年には210mm角セルを採用した大出力(700W)の「Hyper-ion」シリーズを販売。表裏対称の構造で両面発電が可能、温度係数が低く、独自の封止技術で、劣化率を0.25%/年に抑えている。
■ロンジのn型TOPConとn型HJT、p型HPBC(Hybrid Passivated Back Contact)
2021年4月にn型TOPConで換効率25.09%、同6月にn型HJTで25.26%を達成。ただし、2022年11月に182mm角のp型HPBCセルを採用した「HI-MO6」を発表し、当面はp型半導体で高出力・高効率化をめざす。同製品はセル表面に配線がなく高出力で、配線は裏面側に一直線とし信頼性を高めている。
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