太陽光パネルメーカーの動向(Ⅱ)

再エネ
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 太陽光パネルの国内市場の大幅縮小と中国メーカーによる低コスト攻勢を受けて、日本の太陽光パネルメーカーはいずれも経営不振に陥り、米国のセーフガードような政府支援の発動も行われず、国内生産量の大幅縮小が続いている。
 その結果、国内市場は安価な中国製パネルがシェアを高めている。生産規模の小さい日本企業の太陽光パネルの価格は30~50%以上割高である。

国内太陽光パネルメーカーの縮小と撤退

 日本企業は主に総合電機メーカーが太陽光パネルの生産を手掛け、専業メーカーに比べて投資規模で劣り、原材料であるシリコンの調達などでコスト競争に負けたのである。

 その結果、国内市場は安価な中国製パネルがシェアを高めている。生産規模の小さい日本企業の太陽光パネルの価格は30~50%以上割高である。そのため日本企業は高価格でも売れる国内住宅向けに販売をシフトして生産規模を縮小するが、価格が一層高くなる悪循環に陥った。

 太陽光パネルの国内市場の大幅縮小と中国メーカーによる低コスト攻勢を受けて、日本の太陽光パネルメーカーはいずれも経営不振に陥り、米国のセーフガードような政府支援の発動も行われず、国内生産量の大幅縮小が続いている。

三菱電機

 2018年3月、長野県中津川製作所飯田工場でのセル生産を終了し、同製作所京都工場で外部調達したセルのパネル組み立てのみに縮小した。2020年3月、自社ブランドの太陽光発電システムの製造販売を終了
 再生可能エネルギー分野の事業は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)、V2X(自動車用充放電器)などの領域に注力し、太陽光発電システムの調達は京セラと連携することを発表した。

パナソニック

 2018年、大阪府二色の浜工場のセル生産を停止し、滋賀工場を閉鎖してパネル組み立てをマレーシア工場に移管した。2019年5月、マレーシア工場を中国企業GSソーラーに売却し、研究開発機能を分離してGSソーラーと新会社を設立した。
 その後、2021年1月、太陽光パネルの生産から撤退し、2021年度に主力のマレーシア工場や島根県の工場での生産を終了し、スマートシティー向けの電力管理システムなど独自技術を生かした再生可能エネルギー事業を目指すと発表した。

ソーラーフロンティア

 市場で主流の結晶シリコン系太陽電池とは異なり、金属化合物系のCIS型太陽光パネルが事業の中心である。 結晶シリコン系と比べて光の吸収能力が高く、発電層の厚さを1/100程度薄膜タイプにできる特徴があるが、高コストである。

 中国・韓国企業の低コスト攻勢により経営状況が悪化し、宮崎工場や宮城県東北工場での太陽光パネル生産を宮城県国富工場に集約。2021年10月、ソーラーフロンティアは太陽光パネル生産からの撤退を発表し、CIS型太陽電池の生産を2022年6月末で終了した。

 今後、太陽光発電所の設計・調達・建設事業、運用保守事業、自家消費システムの提案、リサイクル事業などを強化する。研究開発は出光興産次世代技術研究所に集約し、CISの高放射線耐性を生かせる宇宙空間用途、電動自動車や通信用ドローンなど移動体用のタンデム型太陽電池への活用を検討する。

 2022年10月、住宅向けの単結晶シリコン太陽電池モジュールの新製品「SFB250-88A」を発表したが、OEM調達によるもので国内生産されている。

京セラ

 2015年度以降、太陽光パネルの生産量が低下傾向となり、収益性も悪化したため、2017年4月、三重県伊勢市のパネル組み立て工場を休止し、国内生産拠点である滋賀県野洲工場への集約を進めると公表した。自社製太陽光パネルの生産は規模を縮小して継続されている。

シャープ

 経営不振から、2016年8月、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の傘下に入った。2016年度における太陽光パネルの生産量は70万kWで、2014年度と比較すると60%の減少で、太陽光パネル事業からの撤退も報道されたが、鴻海の生産力や販売網を生かせば黒字化が可能と判断し、事業は継続されている。

 その後、住宅用太陽光発電システム「サンビスタ」の販売を始めた。BLACKSOLARと呼ばれる新しい太陽光パネルが核で、エネルギー変換効率は19.6%と業界最高レベルである。

東芝エネルギーシステムズ

 2023年2月、東芝エネルギーシステムズは住宅用太陽光発電システムの新規販売の終了を発表した。東芝は2010年に提携した米国サンパワー製の太陽光パネル(変換効率:20%超)を使い発電システムの供給を進めてきたが、国内外の多くのメーカーが市場参入し、競争が激化した結果の撤退である。
 産業用太陽光発電事業については継続を表明しているが、大型のパワーコンディショナーや受変電設備に強みがあるためで、安価な中国製太陽光パネルの拡大は止まらない。

 日本はエネルギー自給率が12.1%と世界的にみても低い。これは石炭・石油・天然ガスなど化石燃料への依存度が高く、そのほとんどを輸入に頼るためである。その結果、輸入先の社会情勢や国家間の関係性などの影響を受け、「電力ひっ迫」や「電気料金高騰」などが起きている。
 エネルギー自給率を上げるためには、再生可能エネルギーの導入が有効であるが、その旗頭である太陽光発電について、自前の優れた太陽光パネル技術を有するにも関わらず、安価な中国製を導入しているのが現状である。国産パネルの保護・育成に向け、政策転換の潮時ではないか?

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