浮体式太陽光発電の現状(Ⅲ)

再エネ

 大手電力会社が管理する水力発電所のダム湖への大規模な浮体式太陽光発電の設置は、送電系統も含めて最も適した設置形態といえる。今後の、設置拡大が期待される。

 しかし、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を拡大するにあたり、大量の太陽光パネルを輸入することになる。しかし、昨春以降の急激な円安に加えて世界的なインフレの影響で、メガソーラーの建設コストの増大は明らかであり、国内でのサプライチェーン再構築が必要である。

浮体式太陽光発電の課題

 2023年4月、「水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2023年版」が、NEDOにより公開された。今後も、必要に応じて浮体式太陽光発電の設計・施行ガイドラインは見直しが必要であろう。
 少なくとも、ため池と海上では大きな差がある。洋上太陽光発電に関しては、潮位の変化や高波などを考慮した設置ガイドラインを策定し、海水腐食や海生生物の付着などへの対策が必要である。

 一方、浮体式太陽光発電の設置に関する環境アセスメントも重要な課題となる。太陽光パネルや浮体(フロート)などの経年劣化による水質汚染の可能性もあり、材料規制が必要となる。また、太陽光をさえぎるために水中の生態系に及ぼす影響も明らかにしておく必要がある。

 自然保護の観点からは、現在進められている農業用ため池やダム湖など人工的な貯水池への浮体式太陽光発電の設置が好ましいと考えられる。特に、大手電力会社が管理する水力発電所のダム湖への大規模な設置は、送電系統も含めて最も適した設置形態といえる。今後の、設置拡大が期待される。

 千葉県では、水面面積 3600km2 の君津市郡ダムについても、2 カ所目となる浮体式太陽光発電所(出力:8200kW)の検討を実施したが、送電線に空き容量がなく発電設備を接続できないため断念した。
 系統運用の新ルール「日本版コネクト&マネージ」を進めることにより、平常時には空き容量がある送電線の有効活用を可能とする必要がある。

 2023年8月、オーストラリア国立大学では、洋上太陽光発電所の設置に最適な、穏やかな海と風がある場所をヒートマップとして公表した。 それによれば、赤道に近い熱帯地域で、”無風帯”と呼ばれる緯度に位置するナイジェリアやインドネシアの近辺が、洋上太陽光発電に最適であることが示された。

 洋上太陽光発電に関して、国内で展開するためには十分な台風対策が必要である。この対策の経済性が陸上設置に比べて高コストとなれば、洋上に設置する意味は薄れる。

図5 浮体式太陽光発電の適正ヒートマップ、赤が最も良く、黄色、緑、濃い青の順、灰色の線は熱帯低気圧の進路
出典:オーストラリア国立大学、Blakers / Silalahi

 ところで、肝心の太陽光パネルの国内市場は、安価な中国・韓国メーカーがシェアを高めている。生産規模の小さい日本企業の太陽光パネル価格は30~50%以上割高である。そのため日本企業は生産規模を縮小し、市場からの撤退が相次いだ。
 今後、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を拡大させるにあたり、大量の太陽光パネルを輸入することになろう。しかし、昨春以降の急激な円安に加えて世界的なインフレの影響で、メガソーラーの建設コストの増大は明らかであり、再生可能エネルギー導入拡大のネックになる。

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