太陽光発電
太陽光パネル供給の現状
太陽光パネルは、2000年代前半にはシャープが世界シェア1位で、京セラ、パナソニック、三菱電機などの日本企業が上位5社を占めていた。しかし、中国・韓国企業が2010年前後に急拡大していた欧州市場向けに大幅な設備投資を進めた結果、現在は中国企業が世界シェア1~5位を独占している。
国内では総合電機メーカーが太陽光パネルの生産を担い、海外の専業メーカーに比べて投資規模で劣った結果、原材料のシリコン調達などでコスト競争に負けた。明らかに貿易摩擦が発生し、国内企業の保護が必要な状況にも関わらず、十分な政府支援は行われなかった。
コモディティ化が進むシリコン系太陽光パネルは、他メーカーへの入れ替えが容易なため、毎年上位順位が変動する過当競争市場であり、太陽光パネルの価格は年々低下している。当面は規模の経済によるコスト優位の中国企業がシェア上位を占め、日本企業の再参入は難しい。
政府は2030年までに総出力:103.5~117.6GW(1.035~1.176億kW)の導入目標を掲げる。しかし、その多くは安価な中国製太陽光パネルに依存する。
米中対立を背景に中国一国への過度な依存は、供給遮断などエネルギー安全保障上のリスクを背負う。京セラなど国内生産を継続する太陽光パネルメーカーの支援が急務である。
次世代太陽電池の課題
開発段階で日本が先行している次世代のペロブスカイト型太陽電池(PSC:Perovskite Solar Cell)について、量産への投資に消極的な日本企業を尻目に中国企業が動き始めている。シリコン系太陽電池の二の舞を演じて、同じ失敗を繰り返す可能性が高い。
PSCはフィルム基板に有機無機混合溶液を塗布して製造される。シリコン系太陽電池の1/10程度の重量で折り曲げ可能で、耐荷重の低い工場屋根や湾曲壁面などに設置でき、雨天などの弱い光でも発電できる。積水化学工業、東芝、アイシンなど、2025年以降の事業化に向け研究開発を進めている。
政府は研究開発段階の支援のみならず、企業における事業推進段階においても十分な指導とサポートを行い、世界で通用する専業メーカーを育成する必要がある。一企業だけの損得勘定に任せれば、リスク回避により次世代太陽電池についても早期の縮小・撤退が待っている。
実質的な対策を施さなければ、次世代太陽光パネルも安価な中国製に国内市場は席捲される。地政学的リスクも考え、国産のペロブスカイト型太陽電池の保護・構築に向け、政府は大きく政策転換を図り、早期の社会実装に向けてメーカー育成、ユーザーとの連携を図る必要がある。
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