日本の高速炉の開発現状(Ⅲ)

原子力

 高速炉は、使用済み燃料に含まれるプルトニウムを分離・回収して再利用する「核燃料サイクル」の中核となる。国内では、1977年に初臨界を達成した基礎段階の実験炉「常陽」、1994年に初臨界を達成した発電できる原型炉「もんじゅ」を開発した。しかし、トラブルが相次いだ「もんじゅ」は、2016年に廃炉が決定した。

日本の高速炉開発動向(1) 

高速増殖原型炉「もんじゅ」の失敗

 日本原子力研究開発機構(JAEA)の 「もんじゅ」(電気出力:28万kW)の原子炉本体は、燃料集合体(炉心燃料、ブランケット燃料)制御棒集合体、中性子反射体(中性子遮蔽体)などを、液体ナトリウム(Na)を浸した鋼製の原子炉容器に納めている。

 原子炉容器上部には制御棒駆動機構燃料交換機などを取り付けた遮蔽プラグを設置し、液体Naの液面上部には不活性なアルゴンガスが封じ込められている。また、原子炉容器からNa漏洩事故が生じた場合でも、炉心の崩壊熱除去に必要なNa液位を保つため、ガードベッセルが容器外周に設置されている。

 炉心で発生した熱を原子炉冷却材(一次主冷却系)の液体Na(529℃)により除去し、一次主冷却系中間熱交換器に伝え、放射化されない原子炉冷却材(二次主冷却系)である液体Na(505℃)が過熱器・蒸発器で蒸気(483℃、12.5MPa)を発生させ、蒸気タービンを回転させて発電する。

図5 高速増殖原型炉「もんじゅ」の発電システム構成

 1994年4月に高速増殖原型炉「もんじゅ」は初臨界を達成した。しかし、1995年12月には原子炉冷却材であるNa漏れによる火災事故が発生して停止した。2000年5月に試験運転を再開したが、同8月には点検停止中に核燃料交換用装置を原子炉容器内に落下させる事故を起こした。

 運転再開の準備中、2012年11月に立ち入り検査した原子力規制庁が、4万9千点近くある機器の約1万点の点検期間設定などが適切でないと指摘。2013年5月、原子力規制委員会が運転再開の準備停止を命じ、11月にはJAEAに代わる運営主体を探すよう、監督官庁の文部科学省に勧告した。

 原子力規制委員会は、新たな運営主体が見つからない場合は廃炉を含む抜本的な見直しを求めた。結局、総事業費約1兆1313億円をかけて開発した「もんじゅ」は運転実績がほとんどなく、会計検査院による研究達成度は16%に留まり、2016年12月に廃炉が正式に決定された。JAEAの運営体制が否定された。

 廃炉は第一段階(2018~2022年)で核燃料の取り出しと2次系Naの抜き取り、第二段階(2023年以降)に最も困難とされる1次系Na冷却材の取り出しなど、第三段階(未定)ではNa機器の解体・撤去、第四段階(~2047年度完了)で建物などの解体・撤去の手順で進められる。

図6 ナトリウム冷却高速中性子型増殖炉「もんじゅ」 
出典:日本原子力研究開発機構

増大するプルトニウム問題

 一方、核燃料サイクルが機能してプルトニウムを燃やさない限り、核兵器に転用可能なプルトニウム保有量は増え続ける。日本は使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理ができる唯一の非核保有国である。1988年に発効された日米原子力協定は、2018年7月に30年の期限を迎えて自動延長された。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」の失敗で、日本の核燃料サイクル政策は行き詰まりを見せた。米国は核不拡散の観点から日本にプルトニウム量の削減を求めている。これを受け、日本の原子力規制委員会はプルトニウム保有量を減らし、現在のプルトニウム保有量約46トンの水準を越えない方針を決めた。

 日本が保有するプルトニウムのうち約37トンは、使用済み燃料の再処理を委託する英国とフランスにある。米国は海外の在庫も問題視しており、日本政府内では英仏譲渡案も浮上しているが、交渉は始まっておらず実現は見通せない。現在は、再稼働している原発でのMOX燃料消費のみが行われている。

図7 分離プルトニウム保有量 出典:長崎大学核兵器廃絶研究センター

 2022年6月、JAEAは廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(出力:16.5万kW)の使用済み燃料を、フランスで再処理して抽出したプルトニウムをフランスに譲渡すると公表した。JAEAは2023年から搬出を開始し、2026年までに完了させる計画で、フランスでは譲渡されたプルトニウムを民生用原発の燃料として使う。

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