次世代原子力(新型炉)の開発現状(Ⅷ)

原子力

 韓国は、新型炉を含むSMR市場を主導するため「SMRアライアンス」を発足させ、サプライチェーン構築や関係事業への参画を推進している。
 日本は、小型軽水炉について2030年代から国内で実証炉の製造・建設を始め、2040年代に運転を開始する目標を掲げている。また、新型炉(高速炉、高温ガス炉、核融合)についても、実証炉の製造・建設・運転について、おおよその目標を示した。

韓国の新型炉開発動向

 2023年7月、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、SMR市場を韓国が主導するため官民の総力を統合した「SMRアライアンス」を発足させ、サプライチェーン構築や関係事業への参画を推進する。2024年前半には、「SMR協会」の発足をめざす。

韓国のSMR関連アクティビティ:
■2012年半ばに、韓国原子力研究院(KAERI)は海水脱塩と熱電併給が可能なPWRタイプのSMR「SMART」炉(熱出力33万kW、電気出力10万kW)を開発し、韓国規制当局から標準設計認証を取得。
■斗山エナビリティは米国ニュースケール・パワーのSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の開発に出資し、主要機器の製造契約を獲得。
■SKグループのSKイノベーションと韓国水力・原子力会社(KHNP)は、米国でナトリウム冷却式の小型高速炉「Natrium」を開発中のテラパワーに事業協力。
■現代E&C(現代建設)は、米国ホルテック・インターナショナルのPWRタイプのSMR「SMR-160」の商業化と建設プロジェクトに協力。
■サムスン重工業は、デンマークのシーボーグ製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計に協力。「CMSRパワー・バージ」は、電気出力:10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能で、2028年までの商業化をめざしている。

日本の新型炉開発動向

 2022年7月、経済産業省が示した工程表では、小型軽水炉について、2030年代から国内で実証炉の製造・建設を始め、2040年代に運転を開始する目標を掲げている。また、新型炉(高速炉、高温ガス炉、核融合)についても、実証炉の製造・建設・運転について、おおよその目標を示した。
また、2023年1月、経済産業省と米国エネルギー省(DOE)は、SMRと新型炉の開発・建設などの原子力協力の機会を、各国内および第三国において開拓することを表明した。

表5 GX会議で示された次世代原子炉の工程表  出典:経済産業省

東芝の「MoveluX」

 2022年12月、東芝は小型水素化物冷却高温炉「MoveluX(ムーブルクス)Mobile-Very-small reactor for Local Utility in X-mark)」(熱出力:1万kW、電気出力:3000~4000kW、炉心出口温度:700℃以上)の開発を発表。水素化カルシウム(CaH2)を原子炉冷却材と中性子減速材に用いる。

 冷却機構は電源を必要としないナトリウム・ヒートパイプを採用し、事故時にポンプなしで自然循環により炉心を冷却して安全性を高める。また、原子炉容器(高さ6m×直径2.5m)をコンクリート製の地下室に設置し、発電設備を地上に置き、燃料交換なしで約20年間稼働させる。主要部品は、コンテナ2個分の体積に収まる。

図14 小型水素化物冷却高温炉「MoveluX™」
出典:東芝

三菱重工業の「全固体原子炉

 2022年4月、トラックで運べる超小型の全固体原子炉(マイクロ炉、熱出力:1000kW、電気出力:500kW)を、2030年代に商用化する。船舶への動力供給や災害地域での分散型電源として有効で、地下設置も容易で事故耐性に優れている。建設費は数十億円/基を想定している。

 真空二重構造のカプセル型格納容器には、直径1m×長さ2mの炉心(ウラン濃縮度20%を上限とするHALEU燃料を蜂の巣状に埋め込んだ黒鉛の燃料積層体)、核分裂熱を抽出する高熱伝導黒鉛体と伝熱管、中性子吸収材による核分裂反応の制御ドラムと非常用制御棒が内在し、不活性ガスが満たされ密閉している。

 伝熱管にはCO2が満たされており、最高850℃に加熱されたCO2を格納容器外に取り出して、タービンを回して発電する。マイクロ炉は燃料交換なしで25年前後運転し、その後、格納容器ごと回収して廃棄する。

図15 トラックで運べる大きさの超小型原子炉 
出典:三菱重工業

 その他、高温ガス炉(HTTR)使い三菱重工業はガスタービン発電システム、東芝・富士電機は蒸気タービン発電システム、また、小型ナトリウム冷却高速炉の開発を三菱重工業が公表している。

表6 日本で開発中の小型軽水炉と新型炉

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