塩化物溶融塩高速炉はテラパワーとサザン・カンパニーの「MCRE」がアイダホ国立研究所内、液体金属高速炉はオクロの「Aurora」がオハイオ州南部、また、フッ化物塩冷却高温炉はケイロスパワーの「KP-FHR」がテネシー州オークリッジの東部テネシー技術パークでの設置に向け開発を加速している。
米国の新型炉開発動向(3)
テラパワーの「MCFR」とサザン・カンパニーの「MCRE」
テラパワーが開発する塩化物溶融塩高速炉「MCFR(Molten Chloride Fast Reactor)」は、燃料と冷却材に塩化物溶融塩を使う。高温運転(炉心出口温度:755℃)が可能で発電効率が高い。
2021年11月、米国大手電力のThe Southern Company(サザン・カンパニー)は、高速炉タイプの溶融塩実験炉「MCRE(Molten Chloride Reactor Experiment)」の設計・建設・運転を行う協力協定をエネルギー省(DOE)と締結した。「MCRE」は、共同開発を実施するテラパワー「MCFR」の商業版である。
テラパワーのほか、アイダホ国立研究所(INL)、コア・パワー、オラノ・フェデラルサービス、米国電力研究所(EPRI)、3M(スルーエム)が参画する共同プロジェクトで、INL敷地内に「MCRE」(熱出力:500kW未満)を建設して、2026年の運転開始をめざしている。
2023年5月、米国務省と原子力規制委員会は、93%の高濃縮ウランを使う「MCRE」計画の低濃縮ウランへの変更を要請。海外諸国に新型炉開発でウラン濃縮度を核兵器級に上げる口実を与えないためである。
オクロの「Aurora」
Oklo(オクロ)が開発するヒートパイプ冷却方式の液体金属高速炉「Aurora(オーロラ)」(熱出力:4000kW、電気出力:1500kW、炉心出口温度:>500℃)は、「マイクロ炉」である。HALEU燃料を使い、燃料交換なしで20年間の熱電併給を行う。アイダホ国立研究所(INL)に設置し、2025年の運転開始をめざす。
2020年2月、アイダホ国立研究所は、初号基用燃料を使用済燃料から回収して提供することを確約。DOE支援を受けて、電解精製技術を使い放射性廃棄物を転換して先進的原子炉燃料を製造するほか、使用済燃料のリサイクルを図る技術の商業化を進める計画である。
2023年5月、商業用のマイクロ高速炉「オーロラ」(電気出力:0.15~1.5万kW)を2基建設する立地点としてオハイオ州南部を選定し、同地域の4郡で構成される「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地利用に関して合意した。
2023年8月、ウラン濃縮企業セントラス・エナジーと協力拡大の新たな覚書を締結。既に、2021年にHALEU燃料の製造施設建設に向けた協力で基本合意書を交わしていたが、今後は、「オーロラ」建設とHALEU燃料の製造を協力して進め、オハイオ州南部を重要ハブとする内容である。
ケイロスパワーの「KP-FHR」
Kairos Power(ケイロスパワー)が開発するフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR:Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor)」(熱出力:32万kW、電気出力:14万kW、炉心出口温度:650℃)は、冷却材に低圧のフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した溶融塩を使用する。
燃料には、高温ガス炉で使われるTRISO燃料粒子を使用し、運転中の供給を可能とする。
2030年代初頭の商業規模完成をめざしており、現在は、低出力の非発電実証炉「Hermes(ヘルメス)」(熱出力:3.5万kW)を、テネシー州オークリッジの米国エネルギー省の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設し、2026年の運転開始をめざしている。
2023年12月、米国原子力規制委員会(NRC)は、実証炉「ヘルメス」(熱出力:3.5万kW)の建設許可を発給すると発表した。現在、NRCは「ヘルメス」の隣接区域で、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中である。
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