英国ではロールス・ロイスが主導する企業連合が、PWR型の小型軽水炉「UK-SMR」を開発中である。ロシアでは、国営原子力総合企業ロスアトムが、世界初の海上浮揚式原子力発電所の「アカデミック・ロモノソフ号」を開発・建造した。中国核工業集団公司(CNNC)は、国産のPWR型SMR実証炉「玲瓏一号(ACP100)」の建設開始を発表した。
英国の小型軽水炉「SMR」の開発
ロールス・ロイスSMRの「UK-SMR」
Rolls-Royce(ロールス・ロイス)が主導する企業連合は、既存技術をベースにPWR型の小型軽水炉「UK-SMR」(熱出力:127.6万kW、電気出力:47万kW)を開発中で、2031年の初号機の稼働をめざしている。その後、政府の関与を前提に2035年までに10基、2050年までに最大16基の建設をめざしている。
2021年7月、ロールス・ロイスと英国原子力エンジニアリング会社のCavendish Nuclear(キャベンディッシュ・ニュークリア)は、SMRの設計・許認可、製造等の協力覚書を締結した。
2021年11月、ロールス・ロイスは米国エクセロン・ジェネレーション、フランスのBNFリソーシズUKと、英国内のSMR開発に今後3年間で合計1.95億ポンド(約295億円)投資すると発表。これを受けて英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、2.1億ポンド(約318億円)を提供する方針を表明した。
2022年3月、英国原子力規制庁(ONR)は、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)からロールス・ロイス子会社のロールス・ロイスSMR製の小型モジュール炉設計について、包括的設計認証審査(GDA)の実施を要請されたことを発表。
2022年8月、ロールス・ロイスSMRは、オランダでのSMR建設に向けて協力していくため、オランダの新興原子力事業社であるULC-エナジーと独占契約を締結した。今後、オランダでSMRの建設準備を進める。また、海外受注をめざし、トルコ、チェコ、エストニアとは実行可能性調査の覚書を締結した。
ロシアの小型軽水炉「SMR」の開発
ロスアトムの海上浮揚式原子力ユニット
国営原子力総合企業ROSATOM(ロスアトム)は、世界初の海上浮揚式原子力発電所の「アカデミック・ロモノソフ号」を開発・建造した。小型PWR「KLT-40S」(熱出力:19万kW、電気出力:3.5万kW)2基から成る海上浮揚式原子力ユニット(NFPU)が搭載され、2019年12月、極東チュクチ自治区管内ペベクに送電を開始した。
2020年5月、営業運転を開始してロシア原子力発電所に正式承認された。世界初のSMR発電所である。
また、ロスアトム傘下のOKBMアフリカントフが「KLT-40S」を基に開発した「RITM-200」(電気出力:5万kW)2基から成るNFPUを、アトムエネルゴマシが4隻の船体に搭載する計画が進められている。2022年8月、船体部分の起工式が中国の造船所で行われた。
船体は長さ140m×幅30m、総重量:2万トン近くなる見通しで、1隻目はチュクチ自治区のバイムスキー銅鉱山に近いナグリョウィニン岬に係留され、運転開始は2026年末頃である。
一方、「RITM-200」(電気出力:5万kW)は、2020年10月就航の最新式原子力砕氷船「アルクティカ」に搭載された。また、2020年12月には陸上設置版である「RITM-200N」(電気出力:5.5万kW)が、極東サハ共和国北部ウスチ・ヤンスク地区のウスチ・クイガ村で、2028年までに完成する計画が発表された。
中国の小型軽水炉「SMR」の開発
CNNCの「玲瓏一号(ACP100)」
2021年7月、中国核工業集団公司(CNNC)は海南省の昌江原子力発電所で、国産のPWR型SMR実証炉「玲瓏一号(ACP100)」(電気出力:12.5万kW)の建設開始を発表。国際原子力機関(IAEA)の安全性評価も通過し、発電のみならず多目的用途(暖房、蒸気生産、または海水淡水化)に設計されている。
一方、2016年11月、中国広核集団有限公司(CGN)は海上浮揚式原子力発電所「ACPR50S」(熱出力:20万kW)を開発するため、PWR型実証炉(6万kW)の原子炉容器購入契約を東方電気と締結した。2020年の発電開始を目指していたが、開発に遅れが生じている。
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