東電管内で夏の節電要請が始まった!

原子力

 昨年、2022年6月30日、経済産業省が東京電力管内に発令していた「電力需給逼迫(ひっぱく)注意報」が解除された。しかし、2022年7月1日には9月末まで、政府により家庭や企業に生活や経済活動に支障のない範囲での「全国節電要請」が出された。

 2023年7月1日~8月31日の予定で、東京電力管内の家庭や企業を対象にした夏の「節電要請」が始まった。昨年に引き続き2年連続となる。政府は数値目標は設けずに、無理のない範囲での節電協力を要請している。今夏の節電要請は、東京電力管内だけが対象である。

 『何故、東京電力管内だけなのか?』

 政府は10年に一度の厳しい暑さを想定し、電力需要に対する供給力の余力を予備率(=(供給力-需要)/需要)で示すが、東京電力管内は7月が3.1%、8月は4.8%で、昨年6月に初めて出された「電力需給逼迫注意報」の発令水準5%を下回り、安定供給に最低限必要な3%は何とかクリアした。

 一方、西日本では原子力発電所の稼働率が改善され、東北地方では昨年3月に福島県沖で発生した地震で運転停止した火力発電所の復旧が進められ、東京電力管内以外では予備率5%をクリアした。

表1 2023年夏の電力予備率の見通し 出典:経済産業省資料

 東京電力管内では、石炭火力の磯子火力発電所新1号機(出力:56.4kW)の定期点検延長、石炭ガス化複合発電プラントの勿来IGCC(52.5kW)と広野IGCC(54.3kW)の大規模トラブル対策工事で、2023年度夏季の稼働は見込めない。また、原子力発電所は1基も再稼働できていない

 『石炭火力稼働と原発再稼働待ちで良いのか?』

 東京電力管内では、石炭火力発電所の定期点検やトラブル続きのIGCCの補修が完了して稼働すれば、予備率は改善されるであろう。しかし、いずれも石炭を燃料とする発電所であるため、稼働を始めれば明らかにCO2排出量が増大する。石炭火力頼みの現状からの早急な脱却が必要である。

 一方、東京電力管内に電力を供給する東電柏崎刈羽原子力発電所(1~7号機までの合計出力:821.2万kW)ではテロ対策上の重大な不備などが相次いで発覚し、日本原子力発電の東海第2発電所(110万kW)では津波対策である防潮堤の設置工事中など安全対策の遅れで、再稼働の見通しが立たない

 『再生可能エネルギーの導入再拡大を目指す必要がある!』

 再生可能エネルギーの導入再拡大が必須である。最近になり停滞しているバイオマス発電、太陽光発電、地熱発電など再生可能エネルギーの再立ち上げが急務である。2025年4月から始まる東京都の太陽光発電”設置義務化”も、重要な一歩であるがさらに加速する必要がある。

 夏場はエアコン使用などで電力需要が多くなる日中は、太陽光発電による発電量も増えるため電力需給は逼迫しない。電力需給のひっ迫は太陽光発電の発電量が落ち、照明・料理などで電力需要が増える夕方から夜の時間帯である。太陽光発電の導入と共に電力貯蔵システムの導入を忘れてはならない。

 『見えてこない東京電力の自主性と成長戦略』

 2011年3月11日の福島第1原子力発電所事故を契機に、東京電力が政府の管理下に置かれたのは2012年7月31日である。実質国有化されて10年超を経過する間に、持ち株会社制の導入、中部電力との火力発電事業統合(JERAの発足)などの経営改革が進められてきたが、電気料金は高騰している。

 他電力会社に比べて自管内の電力需給に対する責任感が感じられない。電力安定供給を既定路線の石炭火力発電に依存し、収益改善は原子力発電所の再稼働を待つ体質からの早急な脱却が望まれる。自主的に成長戦略を描き推進できなければ、これからの10年も停滞を続けることになる。

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