期待の高まる合成燃料(e-fuel)(Ⅶ)

エネルギー

 航空機分野では、持続可能な航空機燃料(SAF)の導入によるCO2削減効果が最も大きく、全体の60~70%を占めると推計されている。今後、経済安全保障の観点からも、SAFの国内生産サプライチェーン構築により、安定的に需要量を供給できる体制の整備が必要である。

 しかし、2050年時点のSAFの想定必要量は、国内で2,300万kL/年、全世界では5.5億kL/年と推計されており、バイオ燃料だけでは原材料の確保に限界があり、合成燃料の安定供給が不可欠と考えられている。

航空分野における取り組み

航空分野でのCO2排出量

 国際航空におけるCO2排出は、国際民間航空機関(ICAO)により「2019年以降、CO2排出量を増加させない」というグローバル削減目標が設定されている。世界全体のCO2排出量335億トンのうち国際航空が約6億トンであり、その占める割合は約1.8%である

 一方、航空分野のうち日本国内のCO2排出量として算定されるのは国内航空のみであり、2022年の年間CO2排出量970万トンは、運輸部門の5.1%を占めている。

 国際航空分野では2021年からICAO CORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)が開始され、カーボンオフセット義務が発生するため喫緊の課題である。
 そのため、低燃費機材の導入・新技術研究開発への協力、運航方式の工夫等に取り組み、カーボンニュートラルな液体燃料である持続可能な航空機燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の導入は、航空分野の脱炭素に必要不可欠である。

 カーボンニュートラルの実現手段として、SAF導入によるCO2削減効果が最も大きく、全体の60~70%を占めると推計されている。今後、経済安全保障の観点からも、SAFの国内生産サプライチェーン構築により、安定的に需要量を供給できる体制の整備が必要である。

 2050年時点のSAFの想定必要量は、国内で2,300万kL/年、全世界では5.5億kL/年と推計されており、バイオ燃料だけでは原材料の確保に限界があり、合成燃料の安定供給が不可欠と考えられている。 

図12 2050年カーボンニュートラルに向けたシナリオ  
出典:定期航空協会(2021年4月)

 2023年6月、航空機の完全電動化は難しい。2050年に目標とするCO2排出量の実質ゼロ達成には、世界のジェット燃料の大半の4.5億kLをSAFに替える必要がある。現在、SAFの原料は廃食油などが主流で、量の確保が難しい。そのため、EUは大量生産できる合成燃料が有望と判断した。

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