期待の高まる合成燃料(e-fuel)の現状

 運輸部門におけるCO2排出量の削減には輸送効率の改善が重要で、航空機自家用乗用車バス自家用貨物車が対象となる。中でも長距離用のバスや自家用貨物車、EV化やFCEV化が困難な航空機については、液体燃料の脱炭素化(バイオ燃料、合成燃料)が選択肢の一つと考えられる。

 液体合成燃料の製造で、再生可能エネルギー由来の水素を使い、発電所や工場などから排出されたCO2を回収して原料としたものが「e-fuel」である。e-fuelの製造コストは約300〜700円/Lと試算されており、低コスト化とサプライチェーン構築による安定供給体制の整備が検討されている。

 自動車用バイオ燃料➡航空機用SAF➡合成燃料(e-fuel)へと代替燃料の話題が急速に移行している。当初、合成燃料は電動化が難しい航空機や船舶向けが本命と考えられていたが、欧州連合(EU)の新方針を契機に、自動車での合成燃料の需要拡大を見込んだ開発競争が始まっている。

日本のCO2排出量とその抑制対策

運輸部門におけるCO2排出量

 2022年度の国内のCO2排出量(10億3700万トン)のうち、運輸部門からの排出量(1億9180万トン)は18.5%を占めている。自動車は運輸部門の85.8%(日本全体の15.9%)と多く、旅客自動車が運輸部門の47.8%(日本全体の8.8%)、貨物自動車が運輸部門の38.0%(日本全体の7.0%)を排出している。

図1 日本の運輸部門におけるCO2排出量 出典:国土交通省

 当然のことながら、輸送量が増加すればCO2排出量も増加する。輸送量は景気の動向にも左右されるため、運輸部門におけるCO2排出量の削減は、輸送効率の改善が重要となる。実際に、2022年度の排出量は、新型コロナウイルス感染の影響から脱して輸送量が増加し、前年よりもCO2排出量は若干増加している。

 次に、国内の旅客輸送と貨物輸送について、輸送効率の目安となる単位輸送量当たりのCO2排出量を比較する。旅客輸送では各輸送機関から排出されるCO2排出量を輸送量(人数×距離km)、貨物輸送では輸送量(重量トン×距離km)で割ることで、単位輸送量当たりのCO2の排出量を示す。

 旅客輸送では、自家用乗用車の単位輸送量当たりのCO2排出量が最も多く、航空、バス、鉄道の順である。貨物輸送では、自家用貨物車の単位輸送量当たりのCO2排出量が特出して多く、営業用貨物車、船舶、鉄道と続く。
 以上から、自家用貨物車営業用貨物車自家用乗用車航空バスの順にCO2排出量の削減対象とすることが有効である。 

図2 単位旅客輸送量当たりのCO2排出量の比較 出典:国土交通省

バイオ燃料と合成燃料の違い

 バイオ燃料またはバイオマス燃料)は、食品廃棄物・農業廃棄物・家畜排泄物・木質廃材など有機系原料由来であり、化石燃料の代替エネルギーとして注目され、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガス、バイオジェットなどが開発され市販されてきた。

 当初、とうもろこし、さとうきびなどの食料系原料から製造されたバイオ燃料の供給が主体であった。しかし、近年、航空分野の国際的なCO2排出削減に向けた規制等を背景に、持続可能な航空燃料SAF:Sustainable Aviation Fuel)として非食料系原料での重要性が高まった。

 現在、自家用乗用車、短距離用バス・トラックのEV化が進められている。また、長距離用バス・トラックはFCV化が検討されている。しかし、開発途上国を含めて自動車の100%EV化・FCV化は現実的ではなくEV化・FCV化が難しい航空機などでは、液体燃料の脱炭素化が一つの選択肢として重要視されている。

 そのため液体燃料の脱炭素化としてバイオ燃料が推進されているが、バイオマス原料不足が懸念されている。そこで有望視されているのが、「合成燃料(e-fuel)」の活用である。すなわち、CO2とH2を化学合成して製造される液体燃料であり、複数の炭化水素化合物の集合体である。 

図3 次世代燃料(バイオ燃料と合成燃料)の製造プロセス 出典:資源エネルギー庁

合成燃料(e-fuel)とは?

合成燃料の製造プロセス

 合成燃料の原料となるCO2は、発電所や工場などから排出されたCO2を利用し、製造過程でCO2が排出されない再生可能エネルギーなどの電力で水電解により得られたグリーン水素H2を用いる。再生可能エネルギー由来の水素を用いた合成燃料は、「e-fuel」と呼ばれている。

 合成燃料は、回収されたCO2を用いるカーボンリサイクル技術であるため脱炭素燃料とみなせる。将来的には、大気中のCO2を直接分離・回収するDAC技術を使って貯留するDACCS(Direct Air Capture with Carbon Storage)設備の利用も想定されている。

 合成燃料のメリットは、従来の内燃機関(エンジン)や既存の燃料インフラ(タンクローリー、ガソリンフタンドなど)を活用でき、導入コストを抑えられて、市場導入が容易な点である。また、化石燃料と同等の高エネルギー密度を有し、硫黄分や重金属分が少ないため燃焼排ガスにも不純物は含まれない。
 デメリットは、現時点で原料となるグリーン水素の製造とCO2回収に費用を要するために、合成燃料は高価格であり、既存燃料と同様に燃焼条件により有害なCO、NOxが発生する点である。

 ところで、CO2とH2を原料とする合成燃料は、液体合成燃料気体合成燃料とに大分類できる。

気体合成燃料とは

 触媒(Ni、Ruなど)を用いて熱化学的にメタンを製造するサバティエ反応(CO2 + 4H2 →CH4 + 2H2O)を使い、メタネーション技術により製造される合成メタンが「気体合成燃料」である。

 再生可能エネルギーを使いメタンを合成するメタネーション変換効率は55~60%である。最近、再生可能エネルギー電力でSOFCの逆反応であるSOECメタネーションの開発が進められている。水蒸気とCO2を使って電気分解して、SOEC変換効率85~90%を達成している。

 CO2からのメタン合成技術としては、熱化学的手法のほかに、電気化学、光還元、生物学的手法についても研究・開発が進められている。

図4 合成燃料の分類 出典:合成燃料研究会(2021年4月)

液体合成燃料とは

 触媒(Fe、Coなど)を用いて熱化学的にFT(Fischer-Tropsch、フィッシャー・トロプシュ)反応((2n+1)H2+nCO →CnH2n+2 +nH2O)を使い、製造されるのが「液体合成燃料」であり、ナフサ・ガソリン、灯油・ジェット燃料、軽油、重油などの混合物である。

 また、ゼオライト触媒を用いて合成されたメタノールなど多くの含酸素化合物も「液体合成燃料」に分類される。メタノールは、Mobil(モービル)が開発したMTG(Methanol to Gasoline)プロセス(nCH3OH →(CH2)n+nH2O)により、ガソリンにも転換できる。

国内の石油大手2社の動き

 ENEOSホールディングスは、FT合成反応(触媒反応)で中間原料としての合成原油の製造に取り組み、その後、精製して所定の合成燃料を得る。
 2024年度上期中にドラム缶1本分相当の1バレル/日の実証設備を国内に立ち上げ、2025年の大阪・関西万博で自動車のデモ走行に使う。2028年度には300バレル/日規模へ大型化し、商用化への準備を進める。

 出光興産は、中間原料として合成メタノールを製造し、その後、組成転換により所定の合成燃料を得る。
 2024年5月には、米国やチリ、ウルグアイに工場建設を計画する米国HIFグローバル社に約180億円を出資すると表明。2028年にも輸入を始め、2035年には1万バレル/日の供給体制をめざす。
 
 一般に合成原油は航空機や船舶向けの重質留分の燃料、合成メタノールは自動車向けの軽質留分の燃料の製造に向くとされる。今後、製造技術の確立に加え、現状では約300〜700円/Lと試算されている製造コストの引き下げが課題である。

合成燃料(e-fuel)の開発ロードマップ

導入促進に向けた官民協議会の設置

 合成燃料の技術開発・実証は、欧米を中心に急速に拡大し、既に石油会社・自動車メーカー・ベンチャー企業などによるプロジェクトが数多く発足しているため、国内でも早急なキャッチアップが必要な状況にある。

 そのため、2022年9月に「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」が設置され、経済産業省や国土交通省と、石油連盟、日本自動車工業会などの業界団体が参加して初会合が開かれた。
 官民協議会では、合成燃料の商用化に向けて技術面・価格面の課題抽出に加え、認知度向上のための国内外への発信、サプライチェーンの構築、CO2削減効果を評価する仕組みなどの整備を進めている。

 2023年5月、経済産業省は「合成燃料の商用化」の目標を、2030年代前半に前倒しすると発表。これは『2023年3月、欧州連合(EU)はエンジン車の新車販売を2035年から禁止する方針転換し、合成燃料の使用」を条件に販売継続を認めることで合意した』ことが契機となった。

 グリーンイノベーション(GI)基金とMEDO事業により、大規模かつ高効率な製造プロセスの開発を進め、2030年までの合成燃料の大規模製造プロセスの実証をめざすとし、大枠のロードマップを示した。
 2025年までにベンチプラントで1BPD(バーレル/日)、2028年までにパイロットプラントで300BPDを実証する。

図5 「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」の取り組み
出典:「グリーン成長戦略」を資源エネルギー庁が一部加工

合成燃料の商用化に向けた開発ロードマップ

 急遽、2023年6月には、合成燃料の商用化を加速するため、①~④の内容が追加され、より具体的な開発ロードマップ(改定版)が示された。

①グリーンイノベーション(GI)基金による「高効率な大規模FT合成プロセス」への支援拡充で、2025年までにベンチプラントで1BPD(バーレル/日)、2028年までにパイロットプラントで300BPDを実証する。
② 「既存技術等を用いた早期の社会実装」では、合成燃料の供給を試みる国内事業者の設備投資・技術実証への支援国内企業の海外有望プロジェクト参画への出資等支援が追加された。
③「利活用の推進」では、ビジネスモデルの確立に向けた実証社会実証への支援が追加された。
④「国際連携・情報発信」では、各国との連携情報プラットフォームの整備の推進が加えられた。

図6 合成燃料(e-fuel)の商用化に向けたロードマップ(改定版) 出典:資源エネルギー庁 

 GI基金事業の「高効率な大規模FT合成プロセス」に関しては、逆シフト+FT合成が進められており、2024年からの運転実証に向け、ENEOS中央技術研究所(横浜市)にて装置建設が進行中である。

図7 GI基金事業で進められている「高効率な大規模FT合成プロセス」の開発

 NEDO交付金事業の「次世代FT合成プロセス」に関しては、直接合成(Direct-FT)②共電解+FT合成③CO2電解+FT合成の開発が進められており、2024年度からの実証運転に向け、産業技術総合研究所(つくば市)にて装置建設が進行中である。

図8 NEDO交付金事業で進められる「次世代FT合成プロセス

 2024年6月、日本・ドイツ・リトアニアは、合成燃料の普及に向けた連携で合意した。カーボンニュートラルの燃料として、「全ての運輸部門で生産や販売、利用を後押しする」とし、早期商業化をめざす。
 具体的には、航空機、船舶、自動車分野での運用・生産などに関する知識の共有、合成燃料に必要な水素の生産拡大などで協力する。日本ではトヨタ自動車などが開発に着手しており、自動車に加え航空機での利用も視野に入れるドイツ、バルト海に面し船舶での活用を見込むリトアニアと連携する。

合成燃料(e-fuel)の製造技術

開発が進められている製造プロセス

 合成燃料の製造プロセスは、CO2をCOに変換(逆シフト反応)し、COとH2①逆シフト+FT合成する方法が最もよく知られている。しかし、低コスト化をめざした製造効率の向上が課題である。そのため、②CO2電解+FT合成、③共電解+FT合成、④直接合成(Direct-FT)などの研究が進められている。

逆シフト+FT合成
 逆シフト反応に平衡制約があるため、600℃以上で触媒を用いた還元反応(CO2+H2→CO+H2O)にもH2を消費する。その後、触媒(Co、Fe)を用いFT合成反応((2n+1)H+nCO→CH2n+2+nHO)を行う。実用化されているが、目的の合成燃料の留分を高めるため、新たな触媒開発が必要。
CO2電解+FT合成
 CO2の電気分解(CO2→CO+1/2O2)に電力を直接用い、比較的低温で反応し製造コストが抑えられる。長時間安定的にCO生成できる電解装置の開発がポイント。その後、FT合成反応を行う。
共電解+FT合成反応
 共電解反応(H2O+CO2→H2+CO+O2)により、CO2と水の電解分解を同時に行うため効率よく合成ガス(CO、H2)を製造できる。高温で長時間安定的にH2、COを生成できる電解装置の開発がポイント。その後、FT合成反応を行う。
④直接合成(Direct-FT)
 逆シフト反応とFT合成反応を同時に実現する反応(nCO2+mH2→CnH2(m-2n)+2nH2O)で、逆シフト+FT合成に比べて効率よく製造できるが、新触媒を開発する必要があり基礎研究段階。

製造プロセスの関連技術

 2023年7月、日揮ホールディングス(HD)は子会社の日揮触媒化成が、2030年までにCO2と水素からつくる合成燃料の製造に使う触媒を量産すると発表。北九州事業所と新潟事業所の2工場に建屋を増設する。 

 2023年11月、日本ガイシは「eーメタノール」を高効率で製造する触媒を充填した反応器を開発する。メタノールは医薬品や衣料品のほか、ガソリン代替となる合成燃料の原料にもなる。2026年には化学メーカーやエネルギー企業と組みプラント設備に本格的に導入し、2029年の事業化をめざす。
 再生可能エネルギー水素とCO2を反応させて合成するが、副生成物の水を分離できるセラミック製リアクターを開発し、反応効率を2〜3倍に高め、消費電力量も従来の1/3程度に抑えた。 

自動車分野における取り組み

自動車分野でのCO2排出量

 2022年度における自動車全体で日本国内の年間CO2排出量は1.65億トンで、国内運輸部門の85.8%と特出している。運輸部門でのCO2排出量の削減には、自動車分野は避けて通れないことが明らかである。
 その内訳は、自家用自動車では年間CO2排出量が8609万トン(自動車全体に占める割合は44.9%)、営業用貨物車が4142万トン(21.6%)、自家用貨物車が3150万トン(16.4%)、バスが333万トン(1.2%)、タクシーが140万トン(0.7%)、二輪車が78万トン(0.4%)である。 

 2017年の国際エネルギー機関(IEA)の分析によれば、先進国での乗用車のEVシフトは急速に進むと予想している。2030年時点で世界の電動車(BEV、FCEV、PHEV、HEV)が占める割合は32%まで増加する。しかし、エンジン搭載車(PHEV、HEV、CNG、ガソリン車、ディーゼル車)は91%残ると予測している。
 また、トラックやバスなど大型車のEVシフトは、さらに遅れる。全世界でカーボンニュートラル(CN)を実現するには、エンジン搭載車への脱炭素燃料(バイオ燃料、合成燃料)の供給が鍵となる。

図9 IEA 「ETP(Energy Technology Perspectives) 2017」に基づき経済産業省が作成した自動車の電動化シナリオ

 日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、日本自動車工業会は合成燃料をその達成手段の一つと位置付けている。合成燃料の最大の課題は化石燃料並みの低コストの実現であり、政府支援が必須である。今後、サプライチェーンの構築とともに、国際規格の検討を進める必要がある。

自動車向け合成燃料の開発動向

 VWグループの広告塔であるAudi(アウディ)は、2026年からEVのみを上市し、2033年までに内燃機関を搭載した車の製造を原則として終了する。また、Porsche(ポルシェ)は、2030年に世界新車販売の80%以上を電動化する。両社は全面的にEVシフトを進めているが、一方で合成燃料/バイオ燃料の取り組みも進めている。

Audi(アウディ)と□Porsche(ポルシェ)の先駆的取り組み: 
アウディは、2013年6月、 合成メタン「Audi e-gas」精製工場の稼動を発表。グリーン電力、水、CO2から水素合成メタンを精製。水素は水素自動車向け、合成メタンはCNGガスステーションに搬送する。
■2015年4月、グリーン電力、水、CO2から合成する合成燃料Audi e-diesel」の生産を開始した。
■2018年3月、スイスのラウフェンブルクで水力発電の電力を使い「Audi e-diesel」を生産する計画を公表した。パイロットプラントでは約40万L/年を生産する。
■2018年3月、「Audi e-gasoline」の生産を行い、エンジンテストを開始した。Audi e-gasoline」は、バイオマスから2段階のプロセスを経て製造される液体イソオクタン(C8H18である。
■2022年12月、出荷される新車に、シェル、ボッシュと協力して開発したR33バイオ燃料を給油して納車すると発表。工場内の給油所の燃料を、R33ブルーディーゼルR33ブルーガソリンに切り替えた。いずれも第二世代のバイオ燃料で、再生可能成分が33%含まれ、残りの67%は化石燃料である。
□2020年9月、ポルシェは、「e-fuel」の開発を進めると発表。これまで主にEV開発とその販売に注力していたが、世界的に脱炭素化を進めるためにはEVだけでは不十分との見解を示した。
□2022年12月、チリのHIF(Highly Innovative Fuels)やシーメンス・エナジーなどと、風力発電を使い水とCO2から「e-fuel」を生産すると発表。チリ最南端プンタアレナスのハルオニ工場での生産を目指す。約13万L/年を生産し、ポルシェは本格量産後の燃料費を約2ドル/L(約280円/L)と想定。 

図10 アウディはポルシェと協力して開発したR33バイオ燃料を給油して納車

 2020年7月、トヨタ自動車やENEOSなど6社でつくる「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」では、液体合成燃料「e-fuel」の研究開発を進めると公表。アウディポルシェの動きに触発されたと考えられる。
 合成燃料はガソリン燃料やディーゼル燃料に混合して使い、エネルギー生成段階を含むHVのCO2排出量がEVを下回る水準を目指し、2030年に一層厳しくなる環境規制に備えると発表。

 2023年2月、福島県相馬市はメタン燃料のミニバス1台の運行を開始。市内の研究拠点でIHIが製造する太陽光発電によるグリーン水素と外部工場から調達したCO2で合成する「グリーンメタン(e-メタン)」を充塡し、高齢者の足として市内を最低1年間運航し、経費やCO2削減量などのデータを収集する。
 エンジンは変えずに既存のガソリン車を改造し、メタンを充塡するタンクやバルブを搭載。タンクには最大メタン:18Nm3(0℃、1気圧での体積)を充塡し、走行距離:約150kmである。

 2023年3月、欧州連合(EU)は温暖化ガス排出量をゼロとみなす合成燃料の利用に限り、2035年以降もエンジン車の新車販売を容認。EUでは2035年までに全ての新車をゼロエミッション化し、同年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止することを表明しており、大きな方針転換であった。
 EUの再生可能エネルギー指令では、第二世代エタノールなど非食品由来の燃料導入を2030年までに倍増する目標を掲げており、今後、バイオ燃料の利用に関する改正案が出される可能性が高い。

 2023年11月、マツダがロータリーエンジンをプラグインハイブリッド車「MX-30 Rotary-EV」の発電機として採用。ロータリーエンジンの利点は、ガソリン以外にも、水素や合成燃料、液化石油ガス(LPG)、圧縮天然ガス(CNG)など多種類の燃料へ対応しやすい。

 2024年5月、トヨタ自動車、出光興産、ENEOS、三菱重工業は、「カーボンニュートラル(CN)燃料」の国内での導入・普及に向けた協業を発表。2030年頃の導入をめざし、工程表作成や製造可能性の調査を進める。
 CN燃料は、植物由来のバイオ燃料や水素とCO2で作る合成燃料(e-fuel)などの総称で、エンジン搭載車で利用する。出光興産とENEOSはCN燃料の製造や供給を担い、トヨタ自動車はCN燃料に適したエンジン開発、三菱重工はCO2の回収技術に取り組む。

 2024年6月、ENEOSと三菱商事は、水素のサプライチェーン(供給網)整備の共同検討を発表。海外での水素生産拠点の開発や、FCVの普及を念頭に置き、グリーン水素生産拠点の確保が狙い。ENEOSが持つ水素ステーションを活用してトラックや商用車の燃料需要を増やすほか、合成燃料の分野でも協力する。
 素の輸送ではメチルシクロヘキサン(MCH)を使うことを検討する。MCHはガソリンと成分が近く常温でも液体を保つため、既存の石油設備を使える。ENEOSと三菱商事は2022年にSAFでも連携し、ENEOSがSAFの生産、三菱商事が原料調達や販売を手がけ、欧州並みにコストを下げることを目指している。

 アウディポルシェの先駆的取り組みが、EVシフトが加速される中で、2023年3月のEU発表「合成燃料(e-fuel)の利用に限り2035年以降のエンジン車の新車販売容認」につながる。アウディは「内燃機関搭載車の正確な終了時期を決めるのは、最終的には顧客と環境規制」とした。
 当初、合成燃料は電動化が難しい航空機・船舶向けが本命との予測もあったが、運輸部門でのCO2削減に自動車は避けて通れず、HVを含むエンジン搭載車での利用が再認識された。

船舶分野における取り組み

船舶分野でのCO2排出量

 国際海運におけるCO2排出は、国際海事機関(IMO)により国際的な削減策が統一的に検討されており、排出量は国毎ではなく国際海運という分野に計上されている。すなわち、世界全体のCO2排出量335億トンのうち約7億トンであり、国際海運は約2.1%を占めている

 一方、2022年度の内航海運におけるCO2排出は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の枠組みにおける国別の排出量に計上されており、その年間CO2排出量の970万トンは国内運輸部門の5.1%を占めている。内航海運は、国内貨物輸送(輸送量×輸送距離)の40%を担う重要な部門である。

 国土交通省と日本船主協会は「2050年の国際海運カーボンニュートラル」を表明し、その実現に向け、外航船舶燃料について現在の重油から複数の脱炭素燃料への転換を計画している。
 外航船舶各社は、移行期における低炭素燃料としてLNG燃料船の導入を進めている。これは将来的に合成燃料(カーボンリサイクルメタン、e-メタン)への転用が可能である。また、内航海運では、2030年度のCO2排出量を約17%削減(2013年度比)を目標とし、省エネと代替燃料(アンモニア、水素)の活用を推進している。

図11 日本の外航海運業 出典:国土交通省(2022年9月)

 船舶分野では、現用の重油をバイオ燃料へ転換する試みが進められており、合成燃料(e-fuel)への転換の検討は始まったばかりである。

 2024年2月、商船三井、伊藤忠商事、米国HIF Globalの100%子会社HIF Asia Pacific、JFEスチールは、国内でのCO2回収、オーストラリアへの船舶輸送、オーストラリアでの合成燃料(e-fuel)の製造・貯蔵、オーストラリアからの輸出を含めたサプライチェーン構築の事業化調査を共同で実施すると発表した。

 2024年4月、福岡市は博多港の脱炭素化促進の一環として、環境配慮型船舶(LNG燃料船、水素燃料船、バッテリー推進船、アンモニア燃料船、合成燃料(グリーンメタン、グリーンメタノール)を使用する船)の入港料を全額免除する制度導入を開始。バイオ燃料、合成燃料は混合割合に応じて入港料を免除する。

 2024年6月、トヨタ自動車の子会社のトヨフジ海運は、メタノールを主燃料に使う自動車運搬船2隻の2027年度導入を発表。三菱造船と建造契約を結び、内航船として運用する。新導入船は一度に2300台を運べるサイズで、従来よりも積載量が1割増える。将来的には合成燃料(グリーンメタノール)の利用も視野に入れる。
 脱炭素化では供給網全体のCO2排出量削減が重要で、輸送量の増加輸送燃料切り替えで、車1台当たりのCO2排出量は20%減らせる見込み。トヨタ自動車はライフサイクルでCO2排出量を、2030年に2019年比で30%削減する目標を掲げている。一方、外航船はLNG船の採用を進め、2025年に2隻を導入する。

航空分野における取り組み

航空分野でのCO2排出量

 国際航空におけるCO2排出は、国際民間航空機関(ICAO)により「2019年以降、CO2排出量を増加させない」というグローバル削減目標が設定されている。世界全体のCO2排出量335億トンのうち国際航空が約6億トンであり、その占める割合は約1.8%である

 一方、航空分野のうち日本国内のCO2排出量として算定されるのは国内航空のみであり、2022年の年間CO2排出量970万トンは、運輸部門の5.1%を占めている。

 国際航空分野では2021年からICAO CORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)が開始され、カーボンオフセット義務が発生するため喫緊の課題である。
 そのため、低燃費機材の導入・新技術研究開発への協力、運航方式の工夫等に取り組み、カーボンニュートラルな液体燃料である持続可能な航空機燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の導入は、航空分野の脱炭素に必要不可欠である。

 カーボンニュートラルの実現手段として、SAF導入によるCO2削減効果が最も大きく、全体の60~70%を占めると推計されている。今後、経済安全保障の観点からも、SAFの国内生産サプライチェーン構築により、安定的に需要量を供給できる体制の整備が必要である。

 2050年時点のSAFの想定必要量は、国内で2,300万kL/年、全世界では5.5億kL/年と推計されており、バイオ燃料だけでは原材料の確保に限界があり、合成燃料の安定供給が不可欠と考えられている。 

図12 2050年カーボンニュートラルに向けたシナリオ  
出典:定期航空協会(2021年4月)

 2023年6月、航空機の完全電動化は難しい。2050年に目標とするCO2排出量の実質ゼロ達成には、世界のジェット燃料の大半の4.5億kLをSAFに替える必要がある。現在、SAFの原料は廃食油などが主流で、量の確保が難しい。そのため、EUは大量生産できる合成燃料が有望と判断した。

石油・ガス供給分野の取り組み

 既存のエンジンでの使用や燃料インフラ・システムの活用が可能な合成燃料(e-fuel)は、導入コストを抑えられるため産業界には大きなメリットである。特に石油精製業は、石油需要の減少で設備能力削減が求められきた経緯があり、合成燃料への転換は起死回生の機会である。
 合成燃料(e-fuel)は運輸関連(自動車、船舶、航空機)以外にも、一次エネルギーとして化石燃料を使う様々な分野での代替利用が可能である。

図13 石油精製業における合成燃料事業のあり方 
出典:資源エネルギー庁

合成メタノールの製造

 2023年3月、出光興産は苫小牧市の北海道製油所で、グリーン水素を使った合成燃料の実用化を発表した。2030年までに製油所などで排出するCO2とグリーン水素から液体合成燃料を製造する。
 2023年5月には、チリのHIFグローバルと合成燃料の供給で提携した。製造ノウハウを蓄積して、2020年代後半までに北海道製油所での合成燃料の生産をめざす計画である。
 2024年5月、HIFグローバルへ1億1400万米ドルの出資を発表。2035年に国内外の拠点で50万トン規模を目安に、e-メタノールの供給体制を構築する。 

図14 出光興産は苫小牧市の北海道製油所で合成燃料を実用化

 2023年9月、ENEOSは、HIFグローバルと協業の覚書を締結し、チリ・米国などの拠点から合成燃料(e-メタノール)の調達を発表。日本でCO2の回収、e-メタノールから合成ガソリン航空機燃料SAFに加工する拠点の建設、合成燃料の供給サプライチェーン構築を進める。
 HIFグローバルは、世界各地の拠点でe-メタノール15万バレル/日生産する計画を発表している。 

 2024年2月、出光興産、ENEOS、北海道電力は、北海道苫小牧西部エリアでの国産グリーン水素サプライチェーン構築事業の実現に向けて覚書を締結した。
 2030年頃までに、約1万トン/年以上のグリーン水素を製造できる水電解プラント(100MW以上)を建設し、出光興産、ENEOS、および地域の工場にパイプライン供給するサプライチェーンの構築をめざす。 

 2024年2月、伊藤忠商事は、日本で回収したCO2をオーストラリアに輸送し、グリーン水素を使う合成燃料(e-fuel)の製造・輸出の調査を開始した。HIFグローバルの子会社、JFEスチール、商船三井と、コストなどを調べて事業化を検討し、2030年までの製造開始を想定する。
 伊藤忠商事が事業全体を統括し、HIFグローバルが合成燃料の製造地域やコストを調査、JFEスチールは日本でのCO2回収、商船三井は船舶輸送のコストなどを調査する。

合成メタンの製造

 2022年11月、東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・三菱商事は、合成燃料事業の検討を開始した。再生可能エネルギー水素と工場などから出たCO2から、メタネーション技術でe-メタンを製造し、三菱商事が参画する米国ルイジアナ州のLNG製造基地キャメロンの近郊でLNGに混入する。
 2030年には3社の都市ガス販売量の1%に相当する13万トン/年を日本に輸入する計画で、政府支援を得て、2025年度に着工し、2029年度の操業を計画している。

 2023年8月、大阪ガス・ENEOSは、大阪港湾部で合成燃料(e-メタン)の量産を計画。2030年までに6000万m3/年の製造をめざし、大阪ガスが近隣工場から11万トン超/年のCO2を回収し、ENEOSがオーストラリアなどで製造した安価なグリーン水素をトルエンと結合させて2万トン/年のH2を輸入する。 
 しかし、グリーン水素の調達は輸入頼みで、e-メタンの生産コストは240〜250円/Nm3(0℃、1気圧)と試算され、現在のLNG価格の5倍と高価で商用化は難しいのが現状。ガス業界は2030年に120円/Nm3、2050年には40〜50円/Nm3の目標を立て、革新的メタネーション技術の開発を加速している。

 2024年3月、東京ガスや大阪ガスは、都市ガスの脱炭素化を進めるため、合成燃料(e―メタン)の普及に取り組む国際団体「e-NG Coalition(イーエヌジーコーリション)」の設立を発表した。
 欧州で事業開発を進めるベルギーのツリー・エナジー・ソリューションズ(TES)が代表幹事、フランスのエンジー、トタルエナジーズ、米国センプラ・グループ、日本勢は東邦ガスと三菱商事が加盟する。CO2排出を相殺する仕組みや品質を担保する制度など、国際ルールの整備を促して早期の普及をめざす。

 2024年6月、大阪ガスは、高効率のSOECメタネーションの試験装置を大阪市此花区の同社研究施設内に完成させ、試験を開始した。装置の規模を段階的に拡大し、2030年代後半~40年頃の実用化をめざす。

 合成燃料(e-メタン)は都市ガスとほぼ同組成で、都市ガス導管に直接注入できる。国内でe-メタンの製造装置を保有し、現在のガス供給インフラを変えることなく、使用量を拡大する戦略である。
 一方で、欧州では天然ガスのパイプラインに水素を混ぜてCO2を減らす取り組みが増えている。将来の水素社会を見据えての取り組みであるが、水素混焼量には限界がある。 

世界の合成燃料(e-fuel)の開発状況

 2024年5月、先行する欧米での合成燃料製造プロジェクトの動向が、カーボンニュートラル燃料技術センターにより示された。既に、欧州で73件、南北アメリカで24件の製造プロジェクトが始動し、大半が新興企業であり、本格的な製品流通にはまだ時間を要すると報告した。
 実際に3月末時点で稼働しているのは、欧州で5件(英国のZero Petroleum、アイスランドのCRI、ドイツのFairfuels、CAC、P2X-Europe)、南北アメリカで3件(チリのHIF Chile、米国のDimensional Energy、Infinium)としており、航空機や船舶向けの燃料製造計画が先行している。

図15 世界の合成燃料(e-fuel)の開発プロジェクト 出典:資源エネルギー庁

欧州における合成燃料の開発動向

  英国オックスフォードシャーに本拠を置く「Zero Petroleum」は、2023年11月、米国ボーイングとSAF供給を加速するため次世代技術の試験・分析での提携を発表した。直接大気中からCO2を回収し、再生可能エネルギー電力により水電解で水素を製造し、SAFを合成している。 

 アイスランドの「CARBON RECYCLING INTERNATIONAL(CRI)」は、CO2と水素からe-メタノールを合成する技術を有し、中国の麦芬隆上海環境工程技術(MFES)に出資して、2022年9月から商業運転(11万トン/年)を開始している。
 2023年5月、丸紅は、MFESとMFESが出資し販売権を有する安陽順利環保科技(順利)が製造する低炭素排出型メタノール(Circular Methanol)の、中国を除くアジアにおける販売権の取得で合意した。

 ドイツ北西部エムスラントで「Atmosfair Fairfuels」は、2021年10月に航空機向け合成ケロシン(e-kerosene)の商業運転(350トン/年)を開始した。
 PEM水電解装置(Siemens Silyzer、2.5MW)で水素を製造、バイオガスプラントおよび大気中から直接CO2を回収し、INERATEC製のFTモジュールを使用してe-ケロシンを製造する。その後、ドイツ北部ハイデ製油所でジェット燃料に混合してハンブルク空港に輸送している。 

 ドイツの「CAC Engineering」は、旭化成製アルカリ電解槽で水素を製造し、独自のゼオライト触媒プロセスにより合成ガソリン”Synfuel”を製造している。2020年、フライベルグ工科大学敷地内で実証プラント(1000kL/年)を稼働した。2022年には、欧州自動車レーシング燃料として使用された。

 ドイツ・ハンブルグの「P2X-Europe」は、INERATEC製のFTモジュール導入して、2022年9月に実証プラントを稼働し、合成ガソリンや合成ディーゼル”SynZero”を製造している。

 デンマーク南部ボアディンボーの「Arcadia eFuels」は、2022年2月に商業プラント(10万トン/年)の建設計画を発表し、2026年末に商業運転を開始する。FT合成で航空・運輸部門向けに、e-ジェット、e-ディーゼル、e-ナフサの製造をめざしている。

 以上、欧州での動向に関しては、石油エネルギー技術センターの「製油所の事業転換に向けた技術動向に関する調査」(2023年3月)に、数多くの事例が示されている。

 一方、直近では想定したほど需要が伸びず、エネルギー大手の計画見直しが始まっている。
 2024年7月、英石油大手シェル(SHEL)は、市況の低迷のため、オランダのバイオ燃料施設(SAF、82万トン/年)の建設を一時停止すると発表した。
 2024年8月、洋上風力世界最大手デンマークのオーステッドは、スウェーデンでの合成燃料工場の建設中止を発表した。スウェーデン北東部で進めていた合成メタノールの製造工場(約5.5万トン/年)の建設である。

米国・南米における合成燃料の開発動向

  1973年の第一次石油ショック以降、米国はバイオ燃料を重視して急速に増産を進めた。そのため、e-fuelの開発・生産では欧州に遅れをとっている。しかし、最近はメキシコ湾沿岸地域を中心に、多くの合成燃料製造プロジェクトが動き始めている。

 南米チリの「HIF Chile」は、ドイツの支援を受けて2022年12月にマガジャネス州でデモプラント「Haru Oni」を稼働させた。風力発電(出力:3.4MW)を使い水電解装置(Siemens製PEM 1.2 MWe)により水素を製造し、大気中からのCO2回収+バイオCO2から、ExxonMobil MTG法で、e-メタノールを製造(350 トン/年)する。
 2022年4月、「HIFグローバル」は、北米初の生産拠点に米国テキサス州マタゴルダ郡を選定し、約60億ドルを投資して最大約7億6000万L/年のe-メタノール生産拠点「HIF USA」を計画し、2026年の操業開始をめざしている。また、オーストラリアのタスマニア州にe-メタノール製造拠点「HIF Asia Pacific」を計画している。

図16 南米チリのマガジャネス州で稼働したデモプラント「Haru Oni」  出典:Haru Global

 米国の「Dimensional Energy」は、2014年にニューヨーク州イサカを拠点に設立され、大気中や工業用地から回収したCO2と、水電解で得られる水素を原料に、FT合成法で様々な合成燃料を製造する。
 2022年6月、ユナイテッド航空ベンチャーズ(UAV)から投資を受け、20年間で少なくとも3億ガロンのSAF購入契約を締結した。
 また、2023年6月、カナダのブリティッシュ・コロンビア州のリッチモンド・セメント工場に実証用CO2回収プラント(1トン/日)を設置し、約1.5バレル/日のSAF製造をめざしている。

 米国テキサス州の「Infinium」は、アマゾン、米国三菱重工、英国APベンチャーズなどから出資を受け、 水電解でグリーン水素を製造し、独自触媒を使用したリアクターでFT合成法により合成燃料を生成する。
 2022年4月、三菱重工業は、「Infinium」カーボンリサイクル燃料「electrofuels」の製造と日本市場への展開を共同で検討する覚書(MOU)を締結した。2023年、「Infinium」は、eーディーゼルの生産をAmazonの南カリフォルニア州配送トラック向けに開始した。eーSAF、eーナフサも同時生産している。

 2023年2月、CCS・CCUS事業を行う米国デンバリーは、複数のe-fuel関連企業とテキサス州でのCO2輸送・貯蔵契約を締結した。デンバリーは、累計で2200万トン/年以上のCO2を輸送・貯蔵する。
 2023年初めに、ワイオミング州キャンベル郡にCO2貯留サイトとして面積約61km2の土地開発契約を締結した。同サイトの潜在的なCO2貯留能力を4000万トンと見積もっている。

合成燃料(e-fuel)の課題と対策

 合成燃料(e-fuel)の製造プロセスは基本的には確立している。第一段階で、再生可能エネルギー電力を利用して、回収したCO2と水(H2O)から電気分解により一酸化炭素(CO)と水素(H2)を生成する。
 第二段階で、高温(200~300℃)・高圧(5MPa程度)の条件下で、鉄(Fe)などの触媒を用いたフィッシャー・トロプシュ(FT:Fischer-Tropsch process)法により、合成燃料(e-fuel)を製造する手順である。

 経済産業省の試算いよれば、合成燃料(e-fuel)は全て国内で製造する場合は約700円/Lで、ガソリンよりも圧倒的に高い。そのため低コスト化が最実用化のための最大の課題である。
 一方、海外の安価な水素を輸入して、国内でe-fuelを製造する場合は約350円/Lである。さらに、全て海外で製造する場合は約300円/L、将来、経済産業省の2040年目標値である20円/Nm3まで水素価格が下がると、e-fuelのコストは約200円/Lとガソリン価格に近くなる。

図17 合成燃料のコスト試算の結果 出典:資源エネルギー庁

 合成燃料の低コスト化には、①H2の製造・輸送コストの低減、②CO2の分離・回収コストの低減、③合成効率の向上が必要である。現時点では、グリーン水素の製造・輸送コストの占める割合が高く、海外の安価な再生可能エネルギーで水素製造を行い、日本に水素を輸入するサプライチェーンが現実的にみえる。
 しかし、それでは原油を輸入して、国内で精製している現状と変わらない。日本のエネルギー自給率は低いままであり、輸入する再生可能エネルギー水素の価格変動により国内経済が大きな影響を受ける

 そもそも、日本のエネルギー自給率は11.8%(2018年時点)で、世界的にみても極めて低いのが現状である。その原因は、化石燃料(石炭、天然ガス、石油)への依存度が85.5%(2018年時点)と高いからである。これまで化石燃料は国内資源がないため、海外からの輸入に頼らざるを得ないとあきらめてきた。

 しかし、合成燃料(e-fuel)の原料は国内に豊富に産する水とCO2である。問題は遅れている再生可能エネルギーの導入にある。再生可能エネルギー電力の低コスト化が進めば、水電解で製造するグリーン水素の低コスト化も進む。合成燃料の製造プロセスは、原料も含めて国内で全て調達することが可能である。

 次世代エネルギーと位置付けている水素・アンモニアについても、常に安価な海外からの輸入が日本の国是のごとく常識となっているが、水素・アンモニア・合成燃料は、国内資源はないという言い訳は通用しない
 「海外での再生可能エネルギー水素の製造+船舶輸送」のコストに打ち勝つ「国内での再生可能エネルギー水素の製造」は実現できないのであろうか?エネルギー自給率向上の観点から、政府はプレミアを付けてでも「国内での再生可能エネルギー水素の製造」を推奨すべきである。

  また、さらなる低コスト化に向けて、原料となるCO2回収の低コスト化も重要である。また、合成プロセスであるFT法についても、プロセス最適化や新触媒の開発による低コスト化も重要である。

 既に、合成燃料(e-fuel)の技術開発・実証は欧米を中心に急速に広がり、石油会社・自動車メーカー・ベンチャー企業によるプロジェクトが数多く進められている。早急なキャッチアップが必要である。
 国内では、人口減やエコカーの普及でガソリン需要が低迷したことで30年間にわたり集約が進められてきた石油会社であるが、既存システムと燃料インフラをベースに積極的な取り組みが必要である。

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