2022年11月、経済産業省は2021年度のエネルギー需給実績(速報)を公表した。最終エネルギー消費は前年度比2.0%増加で、新型コロナウイルス感染拡大の落ち込みから若干戻した。一次エネルギー供給は、前年度比3.4%増加で、内訳は化石燃料が8年ぶりに1.4%増加である。
その結果、エネルギー由来のCO2排出量は、前年度比1.2%増加して9.8億トンとなった。
エネルギー需要動向
2021年度のエネルギー消費
日本の最終エネルギー消費は図1に示すように2005年度をピークに減少傾向にあり、年々減少傾向にある。政府はこれを省エネ効果と呼んでいるが、少なくとも2010年以降のエネルギー消費量の低下には国内産業停滞の影響が含まれていることに注意を要する。
2021年4月、日本は2030年度において温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指し、さらに50%に向けて挑戦することを表明した。2021年の最終エネルギー消費12,330PJは2013年度比12.5%減少で46%達成にはまだ遠い、内訳は石油が17.2%減少、石炭が14.3%減少、電力が5.8%減少である。
しかし、2021年度の最終エネルギー消費12,330PJは前年度比2.0%増加した。内訳は石炭が12.1%増加、都市ガスが4.5%増加、電力は2.0%増加、石油は0.4%減少であった。2020年の新型コロナウイルス感染拡大によるエネルギー消費の急減が、少し落ち着きを取り戻した結果と考えられる。
注釈:図中のエネルギー量は、エネルギー単位(ジュール)を使用。原油換算klに換算する場合には、図中のPJ(ペタジュール:1015ジュール)の数字に0.0258を乗じることで、原油換算百万klとなる。
(原油換算:原油1リットル = 9,250kcal = 38.7MJ。1MJ = 0.0258リットル)。
部門別のエネルギー消費
最終エネルギー消費を部門別に示したのが図2である。企業・事業所他が63%、運輸が14%、家庭が22%の比率に関しては、過去15年間で大きな変化は見られない。
前年度比増減については、企業・事業所他が前年度比4.5%増加(うち製造業は5.6%増加)、運輸が1.0%増加、一方で家庭は6.5%減少となった。新型コロナウイルス感染の落ち着きにより、企業・事業所他部門は回復基調で増加、運輸の回復は遅れ気味、家庭部門は在宅時間減小などの影響を受けた。
エネルギー供給動向
全エネルギーの供給
新型コロナウイルス感染の落ち着きにより、図3のように一次エネルギーの国内供給は18,575PJで前年度比3.4%増加した。内訳は8年ぶりに化石燃料が1.4%増加、原子力は82.6%増加、再生可能エネルギー+廃棄物発電などの未活用エネルギーは9年連続の増加で7.3%、水力は0.1%減少である。
化石燃料の内訳は、石炭がは前年度比6.8%増加、石油は2.9%増加、天然ガス・都市ガスは6.4%減少である。また、再生可能エネルギー(水力を除く)は、太陽光発電がけん引し10.3%増加となった。その結果、化石燃料シェア83.2%となった。
発電電力の供給
発電電力量のみに注目すると、2021年度は1兆327億kWhで前年度比3.2%増加しており、その構成は、火力発電が72.9%(前年度比3.4%減少)、再生可能エネルギー発電が20.3%(5.6%増加)、原子力発電が6.9%(82.7%増加)であり、火力発電比率の高さは相変わらずであった。
火力発電のシェアは72.9%と前年度比3.4%減少したが、その燃料構成は天然ガスが34.4%(前年度比8.8%減少)、石炭が31.0%(3.3%増加)、石油が7.4%(20.1%増加)であった。これは2021年度に老朽火力発電所の休廃止が相次いだためで、2022年の電力ひっ迫の原因にもつながる。
火力発電シェアは低下したが、CO2排出量の多い石炭と石油の発電量が増えたのが問題である。
再生可能エネルギー発電のシェアは20.3%と初の20%台で、その構成は太陽光発電が8.3%(前年度比8.9%)、水力発電が7.5%(0.8%減少)、バイオマス発電が3.2%(15.3%増加)、風力発電が0.9%(5.1%増加)、地熱発電が0.3%(0.5%増加)と、出力変動の大きい太陽光発電に偏っている。
原子力発電のシェアは6.9%と増加した。2021年6月には関西電力美浜3号機が国内初の40年超運転を開始し、再稼働したプラントは総計10基で出力:995.6万kWとなった。しかし、定期点検や司法判断などによる休停止で、2021年の国内原子力発電の設備利用率は22.1%と極めて低い状況である。
エネルギー起源のCO2排出動向
日本のCO2排出量
CO2排出量は前年度比1.2%増加して9.8億トンとなり、7年連続で減少したものの上昇に転じた。これは新型コロナウイルス感染拡大による産業活動の落ち込みが若干回復したためで、一次的な増加とも考えられるが、要注意である。
CO2排出量は東日本大震災後の2013年度に12.35億トンまで増え、その後は減少傾向にある。政府は2030年度に2013年度比で46%削減する目標を掲げているが、2021年度は2013年度比で20.7%の削減に留まっている。そのため、今後も継続的にCO2排出量を低減する施策が必要である。
部門別のCO2排出量については、企業・事業所他が前年度比3.8%増加、運輸が1.0%増加、家庭が8.3%減少である。新型コロナウイルス感染の落ち着きにより、企業・事業所他部門は回復基調で増加、運輸の回復は遅れ気味、家庭部門は在宅時間減小などの影響を受けた結果である。
CO2排出量の低減に向けて
温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、2021年に第6次エネルギー基本計画で2030年度の電源構成の目標値を閣議決定された。
火力発電(天然ガス20%、石炭19%、石油2%)を低減し、再生可能エネルギーを36~38%(太陽光14~16%、風力5%、地熱1%、水力11%、バイオマス5%)、原子力を20~22%に増強する。
2021年のCO2を排出する火力発電のシェアは72.9%と依然として高止まりしている。火力発電所の休廃止はCO2排出量削減に直接効いてくるため、目標41%に向けた具体的な施策が必要である。
また、CO2を排出しない再生可能エネルギーの増強は不可欠である。2021年における再生可能エネルギー発電のシェアは20.3%である。図5に2019年の主要国電源別発電電力量の構成比を示すが、ドイツ、イタリア、英国、中国などと比較して、日本はまだまだ低いのが現状である。
太陽光発電のシェアが8.3%で風力発電のシェアが0.9%と目標には程遠いのが現状である。共に出力変動が顕著なため、現状は火力発電により出力平準化を行っているが、本格的な太陽光・風力発電の導入拡大には電力貯蔵システムの設置が不可欠である。
また、出力変動のない地熱発電のシェアが0.3%、バイオマス発電が3.2%と低調であることから、増強のための具多的な施策が必要である。
一方、原子力発電のシェアは6.9%と増加したが、やはり目標には程遠いのが現状である。「原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」とのエネルギー基本計画に基づいて、再稼働ならびに稼働率の向上を進める必要がある。
最近起きている電力ひっ迫による政府からの節電要請は、政府の長期エネルギー政策の見通しの甘さによるものである。今後、ロシアからの天然ガス供給途絶も想定され、エネルギー需給動向は厳しさを増す方向にある。目標設定だけの成り行き任せではなく、より緻密な精度・施策が求められる。