原発の建て替え・運転期間の延長!?

原子力

 2022年12月、エネルギー政策の大転換が報じられた。政府はGX実行会議でまとめた脱炭素社会へ向けた基本方針の中で、原子力発電所の建て替えや、運転期間の延長を表明したのである。安部元首相の国葬儀問題、防衛費の大幅増額と財源問題に続き、またしても国民を無視した動きが始まったのか?

 2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所事故以来、政府は「可能な限り原発依存度を低減する」として原発の新増設の議論を行わなかった。それが急に「将来にわたって持続的に原子力を活用する」と方針の大転換を表明したのである。十分な議論と丁寧な説明に欠けた決定と言わざるを得ない。

GX 実行会議とは?

 そもそもGX実行会議とは
 産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわち、GX(グリーントランスフォーメーション)を実行するべく、内閣官房が開催する会議である。有識者には各界の社長、会長、理事、相談役など13人+αが名を連ねている。

図1 GX実行推進会議の構成

『GX実行会議の開催状況』
(1)第1回GX実行会議(2022年7月27日)で、萩生田GX実行推進担当大臣から「GX実行会議における議論の論点」が説明された。
 岸田首相は電力・ガスの安定供給に向け、再エネ、蓄電池、省エネの最大限導入のための制度的支援策や原発の再稼働とその先の展開策など、具体的な方策の明確化を関係閣僚に指示した。

(2)第2回GX実行会議(2022年8月24日)で、西村GX実行推進担当大臣から「日本のエネルギーの安定供給の再構築」が説明された。
 岸田首相は再稼働した原発10基に加え、来夏以降に追加で7基の再稼働を目指すとし、原発の新増設や建て替え、次世代型原子炉の開発についても年末までに具体的な結論を出すよう指示した。

(3)第3回GX実行会議(2022年10月26日)で、西村GX大臣から「GXを実現するための政策イニシアティブ」と「需要側からのGXの実現・成長志向型カーボンプライシング構想注釈)の検討の視点」が説明された。
 岸田首相は、次回に成長志向型カーボンプライシングの具体的な制度案を提示するよう指示した。

(4)第4回GX実行会議(2022年11月29日)で、西村GX大臣から「GXを実現するための政策イニシアティブの具体化について」が説明された。
 岸田首相は①カーボンプライシングの具体的な進め方、②再エネ・省エネ、原子力などの専門家や与党による検討を経た提案、③分野別の支援・制度一体型のGX投資促進策の提示を指示した。

(5)第5回GX実行会議(2022年12月22日)で、西村GX大臣から「GX 実現に向けた基本方針(案)~今後 10 年を見据えたロードマップ~」と参考資料(図表)が説明された。
 (岸田首相の発言については、現時点で議事録が公表されていない。)

 以上、合計5回(各会議の所要時間は1時間弱)のGX実行会議が開催された。議事録を見る限り、本題である成長志向型カーボンプライシングの進め方に関する検討に多くの時間を要しており、原発の建て替えや、運転期間の延長に関する議論はなく、政府案通りに採択された。

 運転延長については有識者からも「科学的合理性を検討した上で、見直しが必要だ」などの賛同が目立つ一方で、一度決めたルールの変更になるため「人によっては唐突に感じる。延長することによるリスクなど、情報発信も重要となる」と、国民に向けた丁寧な説明が必要という意見も聞かれた。

 驚くのは、第5回GX実行会議の翌日(2022年12月23日)に、GX 実現に向けた基本方針~今後 10 年を見据えたロードマップ~について、政府専用サイトでのパブリックコメント受付が開始されたことである。「命令などの案」として掲示されており、まさに上位下達。なぜ、これほどまでに急ぐのか? 

注釈)カーボンプライシング(CP)とは?
 気候変動問題の主因である炭素に価格を付ける仕組みのこと。これにより、炭素を排出する企業などに排出量見合いの金銭的負担を求めることが可能になります。CPの具体的な制度は、「明示的CP」と「暗示的CP」に分類され、このうち明示的CPは排出される炭素量に直接的に値付けする点が特徴。各国が精力的に導入・整備を進めているのも明示的CPで、代表的には「炭素税」と「排出量取引制度」が注目されています。

https://www.nomuraholdings.com/jp/sdgs/article/006/

GX 実現に向けた基本方針

 GX実行会議により決定された「GX 実現に向けた基本方針」~今後 10 年を見据えたロードマップ~は、全26ページ(図表なし)に及び素人には難解な読みものである。

 政府は、第5回GX実行会議で出された資料の一部を、翌日(2022年12月23日)に、急遽、パブリックコメントとして配信した。しかし、真に国民の理解を求めるのであれば、時間軸など図表を含めて分かりやすくロードマップにまとめ、国民に丁寧に示す必要があったのではないか?

 今回の基本方針の全体像を示すため、次に目次を示す。実際に読み込んでみると、新しい技術情報も入っているが、多くは昨年10月に策定された第6次エネルギー基本計画を踏襲したものである。ただ、「3) 原子力の活用」に関して策定された1ページでは大きな方針転換が示されている。

『GX 実現に向けた基本方針』~今後 10 年を見据えたロードマップ~

ー目次ー
1.はじめに
2.エネルギー安定供給の確保を大前提とした GX に向けた脱炭素の取組
(1)基本的考え方
(2)今後の取り組み
  1) 徹底した省エネルギーの推進、製造業の構造転換(燃料・原料転換)
  2) 再生可能エネルギーの主力電源化
  3) 原子力の活用
  4) 水素・アンモニアの導入促進
  5) カーボンニュートラル実現に向けた電力・ガス市場の整備
  6) 資源確保に向けた資源外交など国の関与の強化
7) 蓄電池産業
  8) 資源循環
  9) 運輸部門の GX
① 次世代自動車
   ② 次世代航空機
   ③ ゼロエミッション船舶
   ④ 鉄道
   ⑤ 物流・人流
  10) 脱炭素目的のデジタル投資
  11) 住宅・建築物
  12) インフラ
  13) カーボンリサイクル/CCS
   ① カーボンリサイクル燃料
   ② バイオものづくり
   ③ CO2 削減コンクリート
   ④ CCS
  14) 食料・農林水産業
3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行
4.国際展開戦略
5.社会全体の GX の推進
6.GX を実現する新たな政策イニシアティブの実行状況の進捗評価と見直し

基本方針の大転換とは?

何故、このタイミングで?

 地球温暖化問題に端を発して、二酸化炭素(CO2)を発生する化石燃料からクリーンエネルギーへの移行(GX、グリーントランスフォーメーション)が必要とされることは世界的なトレンドとなっている。それに加えて新たに次の2点が、今回の基本方針の大転換の理由として示されている。

『基本方針の大転換の理由』(2.(1)基本的な考え方)

①ロシアによるウクライナ侵略によるエネルギー情勢のひっ迫を受け、欧米各国では再生可能エネルギーの更なる導入拡大を行いつつ、原子力発電の新規建設方針を表明するなど、エネルギー安定供給確保に向けた動きを強めている。
②一方で、国内では、電力自由化の下での事業環境整備、再生可能エネルギー導入のための系統整備、原子力発電所の再稼働などが十分に進まず、国際的なエネルギー市況の変化などと相まって、2022 年 3 月と 6 月には東京電力管内などで電力需給ひっ迫が生じ、エネルギー価格が大幅に上昇している。

GX 実現に向けた基本方針~今後 10 年を見据えたロードマップ~ 2022年12月22日 GX実行会議

 すなわち、欧米諸国が原子力発電の新規建設方針を表明していること、国内で電力需要のひっ迫が生じているため、このタイミングで急遽、原発の建て替え・運転期間の延長に踏み切ったのである。

 原子力発電を推進している欧米諸国と、毎年のごとく地震、津波、火山などの自然災害に見舞われる日本との違いを、東京電力福島第一発電所事故で認識したが、その後の10年間で政府のエネルギー政策は十分に進められず、再び原子力発電にも頼らざるを得ない状況に陥ったということである。

『基本方針でのGXの進め方』(2.(1)基本的な考え方)

 今後、エネルギー安定供給の確保を大前提として、脱炭素社会の実現に向けて取り組む「グリーントランスフォーメーション(GX)」を推進する。そのため、化石エネルギーへの過度な依存からの脱却を目指し、需要サイドにおける徹底した省エネルギー、製造業の燃料転換などを進めるとともに、供給サイドにおいては、足元の危機を乗り切るためにも再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。

GX 実現に向けた基本方針~今後 10 年を見据えたロードマップ~ 2022年12月22日 GX実行会議

政府は大転換ではないと言っている!?

 ところで、今回の基本方針では原子力発電所の建て替えや、運転期間の延長を表明しているが、これを政府は第6次エネルギー基本計画の方針の範囲内としている。

『大転換ではないという政府の言い訳』(2.(2)今後の対応の注記)

 2021 年 10 月に閣議決定した第 6 次エネルギー基本計画においては、2030 年度の温室効果ガス 46%削減、2050 年のカーボンニュートラル実現を目指す上でも、安定的で安価なエネルギーの供給を確保することは日本の国力を維持・増強するために不可欠であるとの前提の下、「再生可能エネルギーについては、主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組み、水素・CCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)については、社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。こうした取組など、安価で安定したエネルギー供給によって国際競争力の維持や国民負担の抑制を図りつつ 2050 年カーボンニュートラルを実現できるよう、あらゆる選択肢を追求する」ことを明記している。
 第 6 次エネルギー基本計画では、2050 年カーボンニュートラル実現という野心的な目標の実現を目指す上で、あらゆる可能性を排除せず、利用可能な技術は全て使うとの発想に立つことが我が国のエネルギー政策の基本戦略であることを示しており、今回、ここに改めて示すエネルギー安定供給の確保に向けた方策は全て、この第 6 次エネルギー基本計画の方針の範囲内のものであり、この方針に基づき「あらゆる選択肢」を具体化するものである。

GX 実現に向けた基本方針~今後 10 年を見据えたロードマップ~ 2022年12月22日 GX実行会議

 政府は、第 6 次エネルギー基本計画の大方針で「原子力については必要な規模を持続的に活用していく」としており、「2050年カーボンニュートラルを実現できるよう、あらゆる選択肢を追求」した。その結果、原子力発電所の建て替えや、運転期間の延長が必要と判断したということである。

第 6 次エネルギー基本計画との整合性は!?

 それでは、2021 年 10 月に閣議決定した第 6 次エネルギー基本計画と今回のGX実現に向けた基本計画とを、大転換が行われたと報道されている原子力に関して比較してみる。

第 6 次エネルギー基本計画の『②原子力における対応』

 東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。
 現状、実用段階にある脱炭素化の選択肢である原子力に関しては、世界的に見て、一部に脱原発の動きがある一方で、エネルギー情勢の変化に対応して、安全性・経済性・機動性の更なる向上への取組が始まっている。
 我が国においては、更なる安全性向上による事故リスクの抑制、廃炉や廃棄物処理・処分などのバックエンド問題への対処といった取組により、社会的信頼の回復がまず不可欠である。このため、人材・技術・産業基盤の強化、安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求、バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めていく。東京電力福島第一原子力発電所事故の原点に立ち返った責任感ある真摯な姿勢や取組こそ重要であり、これが我が国における原子力の社会的信頼の獲得の鍵となる

第6次エネルギー基本計画(2021年10月に閣議決定)から

 以上のように、第 6 次エネルギー基本計画では「可能な限り原発依存度を低減する」や「更なる安全性向上による事故リスクの抑制」などが明記されている。また、次世代炉の新増設に関する表記は全く見当たらない。

GX実現にむけた基本計画での『3) 原子力の活用』

 原子力は、出力が安定的であり自律性が高いという特徴を有しており、安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う。このため、2030 年度電源構成に占める原子力比率 20~22%の確実な達成に向けて、安全最優先で再稼働を進める。
 着実な再稼働を進めていくとともに、円滑な運営を行っていくため、地元の理解確保に向けて、国が前面に立った対応や事業者の運営体制の改革等を行う。具体的には、「安全神話からの脱却」を不断に問い直し、規制の充足にとどまらない自主的な安全性向上、地域の実情を踏まえた自治体等の支援や防災対策の不断の改善等による立地地域との共生、手段の多様化や目的の明確化等による国民各層とのコミュニケーションの深化・充実に取り組む。
 将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。地域の理解確保を大前提に、まずは廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替えを対象として、六ヶ所再処理工場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく。
 既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は 40 年、延長を認める期間は 20 年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。
 あわせて、六ヶ所再処理工場の竣工目標実現などの核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備を進めるとともに、最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働きかけを抜本強化するため、文献調査受け入れ自治体等に対する国を挙げての支援体制の構築、実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の体制強化、国と関係自治体との協議の場の設置、関心地域への国からの段階的な申入れ等の具体化を進める。

GX 実現に向けた基本方針~今後 10 年を見据えたロードマップ~ 2022年12月22日 GX実行会議

 以上のように、今回のGX実現に向けた基本方針では「将来にわたって持続的に原子力を活用」「次世代革新炉の開発・建設に取り組む」「廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」「一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める」などが明記されている。

 加えて、パブリックコメント用に配信されたGX実現に向けた基本方針には添付されていないが、第5回GX実行会議で提示された資料には、図2に示す原発再稼働に関するロードマップと、図3の次世代革新炉の開発・建設に関するロードマップが含まれている。

図2 GX実現に向けた基本方針(案)参考資料、第5回GX実行会議(2022年12月22日)
図3 GX実現に向けた基本方針(案)参考資料、第5回GX実行会議(2022年12月22日)

やはりエネルギー政策の大転換!!

 2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所事故以来、政府は「可能な限り原発依存度を低減する」として原発の新増設の議論を行わなかった。それが急に「将来にわたって持続的に原子力を活用する」と大転換を表明したのは、どうやら事実である。

 なぜ政府は第 6 次エネルギー基本計画の方針の範囲内などと言い訳をする必要があるのか?原子力に関するエネルギー政策の大転換であることは誰の目にも明らかである。この大転換をストレートに発信して国民に正しい情報を与えることで、理解を得ることが重要である。

 そのためにも、この10年間において国内では、「電力自由化の下での事業環境整備」「再生可能エネルギー導入のための系統整備」「原子力発電所の再稼働」などが、なぜ十分に進められなかったか?その結果として、電力のひっ迫を招いている現状の反省から始める必要がある。

 これらの反省なくして、原子力の再稼働や建て替えなどを推進しても問題は解決しない。そもそも再稼働が進まない最大の原因は、原発の安全性に関する国民の理解が十分に得られていない点にあり、電力会社による安全対策がタイムリーに進められてこなかったことが原発不信を深めているのである。

 また、電力自由化に関しても新電力の倒産・撤退が相次ぐような現状では、当初に期待していた電気料金の値下げ効果は望むべくもない。大手電力会社の設備投資の促進策も含めて、新電力の新たな支援策が必要な段階にきているのは明らかである。

 2030 年度電源構成に占める再生可能エネルギー比率36~38%の目標達成には、系統整備に加えて、電力貯蔵の重要性を忘れてはならない。出力変動の大きな太陽光、風力発電では蓄電池規模から大規模電力貯蔵システムの導入、出力変動の少ない水力、地熱、バイオマスでは導入拡大策が必要である。 

基本方針の決定プロセスの疑惑!?

 ところで、昨年12月22日には「原発運転期間延長めぐり原子力規制庁 経産省と事前にやりとり」とのNHK報道が流れ、多くのマスコミでも疑惑として取り上げられた。
 GX実行会議で示された原発の運転期間延長に関して、原子力規制委員会が安全性を確認する制度の検討を指示する前に、事務局である原子力規制庁が推進側の経済産業省から検討状況などを聞き、制度作りの体制を整えていたとのことである。

 何が問題なのか?を考えてみよう。

 そもそも、東京電力福島第一原子力発電所の事故後に、「原子力規制委員会設置法」の公布に伴い、2012年9月に国家行政組織法3条2項に基づき、環境省外局に独立性の高い行政委員会として「原子力規制委員会」が新たに発足した。原子力村と揶揄・批判された隠ぺい体質を刷新するのが狙いである。

  原発推進母体の経済産業省から原発規制部門を切り離して、より安全性を追求するのが目的で、原子力規制委員会の活動範囲は①原子力利用に関する安全規制、②原子力防災、③福島第一原子力発電所事故への対応から構成され、その活動はHP(https://www.nsr.go.jp/)などで一般公開している。

 12月21日、反原発であるNPO法人の原子力資料情報室が会見を開き、事務局である原子力規制庁が原子力規制委員会の指示を受ける前から経済産業省資源エネルギー庁と連絡を取り、原発運転期間延長の詳細な検討をしていたとみられる内部文書の提供を受けたと発表した。

 これを受けて原子力規制庁は、7月28日(第1回GX実行会議の翌日)~9月28日までの間に少なくとも7回、資源エネルギー庁と面談による情報交換を行い(内容は非公開)、9月1日には職員3名に原発運転期間延長に必要な法改正や新たな規制制度作りを担当する部署への併任を発令したことを認めた。

 9月19日の週に、初めて山中原子力規制委員(次期委員長)へ経済産業省とのやりとりについて説明が行われ、9月26日に 山中新原子力規制委員長就任会見において、運転期間延長について利用政策側の意見を聞いた上で、原子力規制委員会で議論する考えを表明した。

 10月5日、山中委員長は原子力規制庁に対して運転期間が見直された場合の規制について検討を指示し、経産省とのやりとりは透明性を確保することも求めた。原子力規制庁はこれ以降の面談録はホームページで公表しているが、指示前の面談内容は公表していない。

 大きな問題は、原子力規制委員会への報告をしないままに、経済産業省との面談による情報交換を進めた事務局原子力規制規制庁の動きである。当然のことながら、事務局である原子力規制規制庁と原子力規制委員会とは一体でなければならない。

 東京電力福島第一原子力発電所事故を教訓として、原発推進側の経済産業省から原発規制側の原子力規制委員会を分離したが、その流れが反転を始めたと捉えられても仕方ない。原子力村と揶揄・批判された昔の隠ぺい体質に逆戻りすることは、絶対に避けなければならない。

 それにしても政府が、これほどまでに「原発の建て替え・運転期間の延長」を急ぐ理由は何であろうか?GX実現に向けた基本方針の策定において不透明な事前交渉を進めるなど、2011年以前の原子力村でのやり方が見え隠れすることで、国民の真の理解は遠のくばかりである。 

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