2022年6月27日~6月30日に起きた電力需要ひっ迫
電力需要ひっ迫の原因は何か?
今夏に起きた電力需要ひっ迫の原因は、2022年8月25日に開催された経済産業省第30回総合資源エネルギー調査会電力・ガス分科会原子力小委員会で提出された資料に明記されている。
すなわち、図3で示すように6月にしては異例の暑さ(異常気象)となり電力需要の増大が生じ、6月27日の最大需要電力は5,254万kWを記録した。過去10年間の6月における最大需要電力(4,727万kW)を1割以上も上回る異例の高水準であった。
一方で、この6月には夏の電力需要期(7,8月)に向けて補修点検のため多くの火力発電所が停止していたのである。今回、ひっ迫注意報を発令した6月には2,000万kW弱の補修計画が予定されていた。
電力需要の高まる夏季(7、8、9月)に備えて補修点検を端境期(4、5、6月)に集中的に実施するのは定例であるが、今夏は早くも6月に異例の暑さがやってきたのである。近年は異常気象が頻発する傾向にあり、異常事態に対応できる仕組みを作っておく必要を痛感する。同じことを繰り返さないために。
電力会社のひっ迫時の対応は?
電力会社は、①運転中の火力発電所や自家発電所の出力増加、②補修点検中の発電所の再稼働、③東北地方や中部地方からの電力融通を実施した。しかし、これらの施策では十分でないと判断し、国による東京エリアへの電力需給ひっ迫注意報の発令(6月26日~6月30日まで継続)に至ったのである。
その後、休止火力発電所の運転再開(追加供給力公募)等により、7月の東京エリアを含む東北から九州エリア全域の予備率は3.7%に改善された。(最低限必要な予備率は3%とされる)
原発の再稼働との関係は?
直接にデータなどによる説明はなかったが、第30回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会では、資源エネルギー庁より、原⼦⼒⼩委員会の中間論点整理(案)が報告された。
内容は電力需要ひっ迫に関連するものではなく、原子力発電の将来を危機を憂い、その必要性を訴えるものである。具体的な方針や施策を提案するものでないため、主要な表現を抜き出して次に示す。
●多くの企業等が、「中長期的な事業の予見性」を持てないまま、将来を見据えた設備投資や人材投資に踏み切れない状況が続き、将来の選択肢としての 原子力は危機に瀕しているのではないか。
●各国は、世界の原子力伸張を見据え、自国のエネルギー安全保障強化や グローバル市場の獲得に向けて、革新炉開発の支援にリソースを投下。●世界で原子力利用が伸張する中、各国は、研究開発への戦略的支援、国内市場での事業環境整備の双方を進めながら、内外一体の市場獲得による産業の維持・強化を進めつつある。
●原子力に対する不安が残る一方で、電力の安定供給に関する不安も高まりつつあり、年齢層等によって原子力に対する見方は様々に変化しつつある。 こうした実態を踏まえ、画一的な情報提供を超えて、コミュニケーションを 行う目的、対象の整理・明確化を行うことが必要ではないか。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/030_04_00.pdf
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