はじめに

エネルギー

期待の高まる合成燃料(e-fuel)(Ⅲ)

2022年9月、合成燃料の導入促進に向けた官民協議会が設置された。グリーンイノベーション(GI)基金とMEDO事業により、大規模かつ高効率な製造プロセスの開発を進め、2030年までに合成燃料の大規模製造プロセスの実証をめざすとし、大枠のロードマップが示された。2025年までにベンチプラントで1BPD(バーレル/日)、2028年までにパイロットプラントで300BPDを実証する。
エネルギー

期待の高まる合成燃料(e-fuel)(Ⅱ)

合成燃料(e-fuel)のメリットは、従来の内燃機関(エンジン)や既存の燃料インフラ(タンクローリー、ガソリンフタンドなど)を活用でき、導入コストを抑えられて、市場導入が容易な点である。また、化石燃料と同等の高エネルギー密度を有し、硫黄分や重金属分が少ないため燃焼排ガスにも不純物は含まれない。一方、デメリットは、現時点で原料となるグリーン水素の製造とCO2回収に費用を要するために、合成燃料は高価格であり、既存燃料と同じように、燃焼条件により有害なCO、NOxが発生する点である。
エネルギー

期待の高まる合成燃料(e-fuel)(Ⅰ)

運輸部門におけるCO2排出量の削減には輸送効率の改善が重要で、航空機、自家用乗用車、バス、自家用貨物車が対象となる。中でも長距離用のバスや自家用貨物車、EV化やFCEV化が困難な航空機については、液体燃料の脱炭素化(バイオ燃料、合成燃料)が選択肢の一つと考えられる。自動車用バイオ燃料➡航空機用SAF➡合成燃料(e-fuel)へと代替燃料の話題が急速に移行している。当初、合成燃料は電動化が難しい航空機や船舶向けが本命と考えられていたが、欧州連合(EU)の新方針を契機に、自動車での合成燃料の需要拡大を見込んだ開発競争が始まっている。
はじめに

航空機開発の失敗と成功(Ⅳ)

今後、空飛ぶクルマなどの次世代航空機の開発は避けて通れない。「HondaJet」の開発は、これらを成功に導くための興味深い事例といえる。 航空機業界では機体メーカーとエンジンメーカーは、それぞれ別個に存在しているが、本田技研工業は両方を独自に開発した。時間を要したが、航空機の全体像を把握するためには必要なプロセスであった。全体像が分かれば、ショートカットが可能である。次の一手が待ち遠しい。
はじめに

航空機開発の失敗と成功(Ⅲ)

「HondaJet」は、主翼上面に独自に開発したエンジンを取り付けて、従来は胴体内部に必要であったエンジン支持構造が不要となり、胴体内のスペースが30%以上も拡大し、客室内の騒音や振動が軽減された。また、機体には軽量化のために炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用している。
はじめに

航空機開発の失敗と成功(Ⅱ)

当初、2011年に初飛行、2013年に最初の顧客となる全日本空輸へ機体納入の予定であった。しかし、2009年9月に型式証明(TC)取得に絡む設計変更を理由に納入延期、2015年11月に実験機での初飛行に成功するが、設計変更、検査態勢の不備、試験機の完成遅れが相次ぎ、合計6度の納期延期を繰り返した結果、2023年2月にMSJの開発中止に至った。
はじめに

航空機開発の失敗と成功(Ⅰ)

近年、航空機開発においては、「三菱スペースジェットの失敗」と「ホンダジェットの成功」は大きな注目を浴びた。対象がリージョナルジェット機と小型ビジネスジェット機で単純比較は難しい。しかし、戦闘機やヘリコプターを製造し、航空機部品の一次サプライヤーでもある重工メーカーが失敗し、航空機とは無縁の自動車メーカーが成功したのである
はじめに

2050年カーボンニュートラル(Ⅳ)

国内のCO2排出量の10%を占める業務・家庭部門の脱炭素化も重要であり、⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネージメント産業、⑬資源循環関連産業、⑭ライフスタイル関連産業がリストアップされている。2023年時点で、水素の大規模サプライチェーン構築、水素の水電解装置、次世代船舶、次世代航空機、ベロブスカイト型太陽電池、洋上風力など17件の開発プロジェクトが進行中である。
はじめに

2050年カーボンニュートラル(Ⅲ)

 国内のCO2排出量の25%を占める産業部門、17%を占める運輸部門の脱炭素化は重要課題である。グリーン成長戦略では、輸送・製造関連産業では⑤自動車・蓄電池産業、⑥半導体・情報通信産業、⑦船舶産業、⑧物流・人材・土木インフラ産業、⑨食料・農林水産業、⑩航空産業、⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業がリストアップされている。
はじめに

2050年カーボンニュートラル(Ⅱ)

エネルギー関連産業においてリストアップされたのは①洋上風力・太陽光・地熱、②水素・燃料アンモニア、③次世代熱エネルギー、④原子力である。国内のCO2排出量の37%を占める電力部門の脱炭素化は必須であり、再生可能エネルギーについては最大限の導入を目指す必要がある。そのためには系統整備、発電コストの低減、周辺環境との調和、出力変動の平準化のための蓄電池の活用が重要となる。2020年時点で総発電量の20%弱である再生可能エネルギーを、2050年には約50~60%への増設を目指す。