エネルギー

原子力

原子力の未来予測(Ⅳ)

英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、使用済み核燃料を直接処分する方針を打ち出した。一方、日本は当初の計画をはるかに超えた再処理工場への投資や、原型炉「もんじゅ」の失敗にも懲りずに、高速炉の実証炉開発を目指しており、将来的には再び高速増殖炉の開発を指向している。莫大な費用を要する「核燃料サイクル」の開発を再開するには、より確実な見通しが必要である。
原子力

原子力の未来予測(Ⅲ)

スケールメリットを発揮できる大型軽水炉と比べて、小出力の小型軽水炉(SMR)は発電単価で不利となる。期待が先行するSMRであるが、現在主流の大型軽水炉に置き換わるのは難しい。既に、2023年11月、米国ニュースケール・パワーは、西部アイダホ州で2029年稼働を計画していたSMR6基の建設中止を発表した。主な原因は経済性が見込めないためとされている。
原子力

原子力の未来予測(Ⅱ)

2023年4月、宣言通りにドイツが「脱原発」を完了した。一方、欧州の多くの国ではエネルギー安全保障を強化するため「脱ロシア」を念頭に置き、原発回帰の動きが活発化している。また、米国では35年振りに新規建設の原発が本格稼働を開始した。一方、日本では原発の建て替えや新増設の有力候補として「革新軽水炉」の開発が進められている。従来の大型軽水炉を改良して安全対策を強化し、運転開始の目標時期は2030年代中頃である。既存技術の延長線上にあるため技術的な問題点が少なく、発電単価も安価になると期待されている。
原子力

原子力の未来予測(Ⅰ)

原子力の未来予測を語る上で、福島第一原発の廃炉処理の問題を無視することはできない。廃止措置終了までの期間として30~40年後とされており、2050年頃である。鍵は燃料デブリの取り出しで、これらを完全に遂行して、ようやく原点に回帰できる。原子力発電は運転でCO2を排出しないため、ゼロエミッション発電の実現には有効である。しかし、重大事故を招かないための安全対策は不可欠である。福島第一原発事故を教訓として開発中の「革新軽水炉」を早期に実現し、従来の大型軽水炉の置き換えを進める必要がある。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅴ)

英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、高速炉を開発せず使用済核燃料を直接処分する方針を打ち出している。一方、日本は当初の計画をはるかに超える再処理工場への投資や、原型炉「もんじゅ」の失敗にも懲りずに、高速炉実証炉の開発を目指し、将来的には再び高速増殖炉の開発を指向している。莫大な費用を要する核燃料サイクルの開発を再開するには、より確実な見通しが必要である。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅳ)

エネルギーの安定供給確保は重要な政策課題であるが、核燃料サイクルは、国ごとのエネルギー事情により独自の政策が進められている。米国は一度は開発を中止したが、その後、核燃料サイクルに再び着目し高速炉開発を推進している。フランス、ロシア、中国、インドは、積極的に高速増殖炉の開発を進めている。一方で、英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、使用済み燃料を直接処分する方針を打ち出している。現状ではウラン燃料の価格が安く、核燃料サイクルによるプルトニウム燃料での発電が高価となるためである。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅲ)

高速炉は、使用済み燃料に含まれるプルトニウムを分離・回収して再利用する「核燃料サイクル」の中核となる。国内では、1977年に初臨界を達成した基礎段階の実験炉「常陽」、1994年に初臨界を達成した発電できる原型炉「もんじゅ」を開発した。しかし、トラブルが相次いだ「もんじゅ」は、2016年に廃炉が決定した。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅱ)

軽水炉で燃やした使用済み燃料を直接に廃棄処分する場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを含むために全てを「高レベル放射性廃棄物」として処分することになる。一方、使用済み燃料の再処理を行うことで高レベル放射性廃棄物を減らすことができ、放射線の影響を1/10程度に低減できる。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅰ)

原子炉(核分裂炉)は、核分裂反応によって生じる高速中性子を減速して核分裂反応を生じさせる熱中性子炉と、減速しないで核分裂反応を生じさせる高速中性子炉に大別される。高速中性子炉は、当初「核燃料サイクル」を実現するための重要な炉と位置付けられ、高速増殖炉(FBR)として開発が進められた。高速増殖炉は原子炉冷却材として液体金属ナトリウム(Na)が使用され、発電しながら消費した以上の核燃料(プルトニウム)を生成することができる。しかし、プルトニウムが過剰で増殖に意義を見出せなくなり、最近では単に高速炉(FR or FNR)と呼び、プルトニウム焼却用原子炉と位置付けられている。
原子力

日本の高温ガス炉の開発現状(Ⅲ)

現在、高温ガス炉(HTGR)の発電所としての実績は、中国が2023年12月に実証炉を商業運転に移行しているのみである。米国は2028年を目指して小型モジュール炉として実証炉の建設を進めている。日本の実験炉(HTTR)は、2010年に950 ℃で50日間の連続運転による熱供給以降に目立った成果は見られない。実証炉の開発には数兆円規模の投資が必要である。日本は実験炉(HTTR)の研究成果を基に、英国・ポーランドに協力して実証炉建設のノウハウを吸収し、2029年から実証炉の製作・建設を開始する計画で、2030年代後半の実証炉の運転開始を目指している。