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原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅴ)

英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、高速炉を開発せず使用済核燃料を直接処分する方針を打ち出している。一方、日本は当初の計画をはるかに超える再処理工場への投資や、原型炉「もんじゅ」の失敗にも懲りずに、高速炉実証炉の開発を目指し、将来的には再び高速増殖炉の開発を指向している。莫大な費用を要する核燃料サイクルの開発を再開するには、より確実な見通しが必要である。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅳ)

エネルギーの安定供給確保は重要な政策課題であるが、核燃料サイクルは、国ごとのエネルギー事情により独自の政策が進められている。米国は一度は開発を中止したが、その後、核燃料サイクルに再び着目し高速炉開発を推進している。フランス、ロシア、中国、インドは、積極的に高速増殖炉の開発を進めている。一方で、英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、使用済み燃料を直接処分する方針を打ち出している。現状ではウラン燃料の価格が安く、核燃料サイクルによるプルトニウム燃料での発電が高価となるためである。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅲ)

高速炉は、使用済み燃料に含まれるプルトニウムを分離・回収して再利用する「核燃料サイクル」の中核となる。国内では、1977年に初臨界を達成した基礎段階の実験炉「常陽」、1994年に初臨界を達成した発電できる原型炉「もんじゅ」を開発した。しかし、トラブルが相次いだ「もんじゅ」は、2016年に廃炉が決定した。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅱ)

軽水炉で燃やした使用済み燃料を直接に廃棄処分する場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを含むために全てを「高レベル放射性廃棄物」として処分することになる。一方、使用済み燃料の再処理を行うことで高レベル放射性廃棄物を減らすことができ、放射線の影響を1/10程度に低減できる。
原子力

日本の高速炉の開発現状(Ⅰ)

原子炉(核分裂炉)は、核分裂反応によって生じる高速中性子を減速して核分裂反応を生じさせる熱中性子炉と、減速しないで核分裂反応を生じさせる高速中性子炉に大別される。高速中性子炉は、当初「核燃料サイクル」を実現するための重要な炉と位置付けられ、高速増殖炉(FBR)として開発が進められた。高速増殖炉は原子炉冷却材として液体金属ナトリウム(Na)が使用され、発電しながら消費した以上の核燃料(プルトニウム)を生成することができる。しかし、プルトニウムが過剰で増殖に意義を見出せなくなり、最近では単に高速炉(FR or FNR)と呼び、プルトニウム焼却用原子炉と位置付けられている。
原子力

日本の高温ガス炉の開発現状(Ⅲ)

現在、高温ガス炉(HTGR)の発電所としての実績は、中国が2023年12月に実証炉を商業運転に移行しているのみである。米国は2028年を目指して小型モジュール炉として実証炉の建設を進めている。日本の実験炉(HTTR)は、2010年に950 ℃で50日間の連続運転による熱供給以降に目立った成果は見られない。実証炉の開発には数兆円規模の投資が必要である。日本は実験炉(HTTR)の研究成果を基に、英国・ポーランドに協力して実証炉建設のノウハウを吸収し、2029年から実証炉の製作・建設を開始する計画で、2030年代後半の実証炉の運転開始を目指している。
原子力

日本の高温ガス炉の開発現状(Ⅱ)

国内では、茨城県大洗町に日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構、JAEA)の高温工学試験研究炉(HTTR)が建設され、1998年11月に初臨界を達成した。2004年4月には、原子炉出口冷却材温度:950℃での全出力(熱出力:3万kW)運転に成功した。高温ガス炉(HTTR)からの高温熱供給を生かし、三菱重工業はガスタービン発電と新たに水素製造施設の接続を開始している。また、東芝は、蒸気タービン発電と蓄熱システムを組み合わせた電力供給、高温水蒸気電解プラントによる水素製造の概念を公表している。
原子力

日本の高温ガス炉の開発現状(Ⅰ)

次世代炉として注目される高温ガス炉は、中性子減速材に黒鉛、原子炉冷却材に高温ヘリウムガス(He)を使う熱中性子炉である。ウラン燃料を黒鉛などで被覆するため、燃料温度が高くなると自然に中性子を吸収して核反応が減衰する。また、化学的に安定なHeガスを使うため、水素爆発や水蒸気爆発の危険性が無い。原子炉出口のHeガス温度が700〜950℃と高く、直接にガスタービンに導いて発電できるほか、熱の多用途展開(熱化学法水素製造、高温熱供給による原子力製鉄、地域暖房、海水淡水化)が可能とされている。中でも、水素社会の実現に向けて、水を原料としたカーボンフリーの高効率水素製造が注目を集めている。
再エネ

伸び悩むバイオマス発電の現状(Ⅵ)

2010年以降、順調に木質系バイオマス発電所の建設が進む一方で、バイオマス発電所の中止・撤退の発表が相次いでいる。その理由は、周辺住民からの反対、バイオマス燃料の供給不足、建設費の高騰である。東南アジアからのバイオマス燃料の大量輸入に基づくバイオマス発電を推進したFIT/FIP支援に問題がある。
再エネ

伸び悩むバイオマス発電の現状(Ⅴ)

バイオマス発電では、ごみ焼却発電設備(一般廃棄物発電と産業廃棄物発電)が、設備容量で300万kWに達しており、主に「ストーカ炉」でごみを燃やし、生じた熱を使ってボイラで蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させて発電する。一方、2010年以降は、FIT/FIPの政府支援を受けて、木質バイオマス発電システムの導入が急増傾向にあり、大企業から中小企業まで、様々なバイオマス発電関連メーカーが参画している。