世界経済フォーラム内の「クリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー・コアリション」は、世界の航空業界で使用する燃料におけるSAFの割合を、2030年までに10%に増加させることを宣言した。
このような民間でのSAF導入拡大の動きと並行して、欧州、米国、英国などは政府レベルでのSAF導入拡大の目標設定や、支援制度の整備などを進めている。
世界のSAF導入拡大の動き
2021年9月、官民両セクターの協力を通じて世界情勢の改善に取り組む国際機関「世界経済フォーラム」では、SAFの導入促進を目指すイニシアティブ「Clean Skies for Tomorrow Coalition」を設立した。世界の航空業界で使用するジェット燃料におけるSAFの使用割合を、2030年までに10%に増加させることを宣言した。
また、ワンワールドは加盟社全体で、各航空会社は自社で使用する燃料10%をSAFに置き換えることを宣言した。
2023年2月、米国ユナイテッド航空がSAFの研究・開発に焦点をあてた投資ファンドを立ち上げた。ユナイテッド航空ベンチャーが運営を担い、当初1億ドル超で3年間で5億ドルにまで拡充し、生ごみや農業廃棄物、廃食油を原料とするSAFの研究開発を行う会社に重点投資する。
このような民間でのSAF導入拡大の動きと並行して、各国では政府レベルでのSAF導入拡大の目標設定や、支援制度の整備などが進められている。
■欧州:
域内の空港を出発する航空燃料へのSAF混合比率を2030年に5%、2040年に32%、2050年に63%と段階的に増加することを義務化。2021年にEU航空業界が発表した報告書では、EU内では2030年に航空燃料の内約370万㎘/年をSAFで代替する目標を示した。
航空会社に「EU域内排出量取引制度(EU-ETS)」への参加を義務づけ、要件を満たすSAFを使用した場合、バイオマス燃料分は「CO2排出量ゼロ」として取り扱えるとした。
●ノルウェーは、2020年に航空会社に対して航空燃料の0.5%をSAFにするよう義務づけ、2030年には、この比率を30%に高める方針を表明した。
●フランス、ドイツ、オランダ、スペインなどもSAF使用の義務化や導入目標の設定を進めており、規制強化の動きが拡大している。
■米国:
2030年までに最低30億ガロン(約1140万㎘)/年のSAF生産目標を設定し、2030年に航空燃料の10%をSAFにする目標を設定した。
インフレ抑制法(IRA)には、生産にかかる税額控除や、SAFを使用することによる既存ジェット燃料とのCO2削減量を「クレジット」として売買できる制度がある。
■英国:
2050年までに、航空燃料の75%をSAFとする目標を設定した。2024年4月、2025年以降に燃料事業者に義務付けるSAFの使用割合を、2025年は2%、2030年10%、2035年15%、2040年22%とした。議会の承認を経て2025年1月から施行される。
■シンガポール:
2024年2月、「SAF税」を2026年に導入する。同国出発便の航空運賃に上乗せし、チャンギ空港などで供給するSAFの購入費用に充てる。SAF混合比率を2026年に1%、2030年に3〜5%に引き上げる。
■日本:
2030年に国内航空燃料の10%をSAFにする目標を設定。2030年時点の国内SAF利用見込みは172万㎘と試算されている。(詳細は後述する)
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