国際線でのSAF導入の義務化

航空機

 2022年12月、国土交通省から航空分野の脱炭素化の基本方針が出され、SAFに関しては2025年の国産開始、2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%を置き換える目標が設定された。

 2023年5月、経済産業省は、2030年から日本の空港で国際線に給油する燃料の10%をSAFにすることを石油元売りに義務付けると発表した。国際線を発着する日本の航空会社にもSAFを10%利用すると、国土交通省に提出する脱炭素事業計画に明記するよう求める。 

日本でのSAF導入の基本方針

航空機燃料の脱炭素化

 2022年9月、新たな「バイオマス活用推進基本計画」(第三次)が閣議決定された。特筆されるのは、航空分野における脱炭素化の取組に寄与する持続可能な航空燃料(SAF : Sustainable Aviation Fuel)の社会実装に向けた取組の推進である。

4.脱炭素化を促進する技術の研究開発
 航空分野における脱炭素化の取組に寄与する持続可能な航空燃料(SAF)の社会実装に向け、HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)技術、ATJ(Alcohol to Jet)技術、多様な原料利用の可能性があるガス化・FT(FischerTropsch process)合成技術、カーボンリサイクル技術を活用した微細藻類の大量培養技術等の技術開発及び実証を加速させる必要がある。加えて、食料や飼料用原料等の既にある需要先の安定供給を行いつつ、廃食用油、古紙、木くず等の国内における持続可能な航空燃料(SAF)の原料を安定的に確保するためのサプライチェーンの構築を推進する。

バイオマス活用推進基本計画(第三次)p.20より

 2022年9月、国土交通省は航空分野の脱炭素化に関する基本方針案をまとめた。すなわち、2050年までに航空分野でCO2の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル(CN)の達成を目指す。
 基本方針には、持続可能な航空燃料(SAF : Sustainable Aviation Fuel)の導入促進飛行ルートの効率化空港施設の省エネと再生可能エネルギー導入などの対策が盛り込まれ、関連事業者の意見も取り入れて、2022年12月に正式決定された。

 また、基本方針では、2030年までに達成する目標として、国際航空でCO2総排出量の増加を制限し、国内航空では単位輸送量当たりのCO2排出量を対2013年度比で16%削減すると規定した。各空港でも温室効果ガス排出量を対2013年度比で46%以上削減する。

 SAFに関しては、2025年の国産開始、2030年までに国内航空会社の燃料使用量の10%を置き換える目標を設定した。国土交通省や経済産業省などが連携して国際競争力のある国産SAFの安定供給に向けて作業部会を設置し、SAFの国際認証取得など関連企業の支援に乗り出す。

SAFへの置き換えの課題

 世界全体における2020年のSAF供給量は6万kL/年程度であり、ジェット燃料の供給量の0.03%程度である。国内でのSAF生産量は極めて寡少で、現時点で航空会社は輸入に頼っている。

 国土交通省によると国内でのSAF需要は、2030年に2025年比で約6倍の171万kL(海外航空会社向け:83万kL、国内航空会社向け:88万kL)と拡大するが、将来的に国内供給できるのは7割程度に留まる見通しであり、生産体制の強化が急がれている。そのためSAFの課題は調達といえる。

 また、SAFは従来の航空機エンジンを変更することなく使えるメリットは大きいが、調達が限定的なこともあり、現時点で価格がジェット燃料の2〜5倍と高いのが第二の課題である。今後、量産効果による低コスト化が期待されている。

 一方、SAFの使用は、原料の調達から消費までの過程でのCO2排出量を、石油由来のジェット燃料と比べて7~9割減らせるとされる。しかし、燃料をすべてSAFに替えても、現状に比べて1~3割程度のCO2排出が残ることは自明であり、小型機の電動化中大型機の水素燃料の開発も重要である。

SAF導入の義務化

 2023年5月、経済産業省は、2030年から日本の空港で国際線に給油する燃料の1割をSAFにすることを石油元売りに義務付けると発表した。国内でのSAF生産体制の強化の一環である。官民協議会に提案し、2023年度中にエネルギー供給構造高度化法(エネ高度化法)の政令改正を目指す。

 石油元売りに対し販売する航空燃料の1割をSAFにするよう法律で定めて、罰則も検討する。また、国際線を発着する日本の航空会社にもSAFを1割利用すると、国土交通省に提出する脱炭素事業計画に明記するよう求める。

図5 国内でのSAFの需要見通し(出典:読売新聞 2022年11月18日)

参考:進み始めた国産SAFにより実証飛行
●2021年6月、国土交通省航空局が保有・運用する飛行検査機「サイテーションCJ4」で、サステオを使用し、羽田空港から鳥取空港を経由し、中部国際空港に着陸する約2時間半の飛行を実施した。●また、同年6月、Japan Biz Aviationが運航管理するプライベートジェット機「HondaJet Elite(ホンダジェット エリート)」でサステオを使用し、鹿児島空港から羽田空港へ約90分間の飛行を実施した。
● 2022年3月、定期旅客運航のフジドリームエアラインズのジェット旅客機(エンブラエルERJ175)に鈴与商事がサステオを給油し、富士山静岡空港と県営名古屋空港間のチャーター運航を実施した。
●また、同年3月、アジア航測が保有・運航する低翼ターボプロップ双発機(テキストロン・アビエーション式C90GTi型)にサステオを給油し、大阪・八尾空港を発着地として小豆島上空を約60分間の周回飛行を実施した。
●2022年6月、ユーグレナ、中日本航空、エアバス・ヘリコプターズ・ジャパンは、中日本航空が保有するヘリコプターH215(エアバス社製AS332 L1型)にサステオを給油し、名古屋空港より約30分の飛行を実施した。
●また、同年6月に国土交通省が保有する飛行検査機にサステオを使用し、初フライトが行われた。羽田空港から鳥取空港を経由し、中部国際空港に着陸する約2時間半の飛行である。
●2023年1月、防衛省が運航する政府専用機2機(ボーイング777-300ER)にサステオ(SAF)が給油され、岸田首相の欧州および北米訪問に運航された。政府専用機にSAFが使用されるのは、2022年11月のフライトに続き2度目である。

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