回転翼機ではドローン型の場合、All electric VTOLが主流で開発が進められている。しかし、現在の蓄電池性能では大型化と飛行距離に制限が生じるため、燃料電池+蓄電池システムへと進化が始まっている。
ヘリコプター型の場合、飛行速度を上げるためにメインローターと左右両舷に主翼やプロペラを持つ複合型ヘリコプターが開発されたが、現在は中断されている。
回転翼機(ドローン型)
中国イーハン
2021年6月、岡山県「笠岡ふれあい空港」で、中国EHang Holdings Limited(イ―ハン)が開発した2人乗りのAll electric VTOL「EHang 216」の無操縦者飛行デモが行われた。最大積載量:220kg、飛行速度:130km/h、飛行距離:30~40kmで、同モデルは世界で80台以上が販売されている
2016年、世界初の空飛ぶタクシーとして1人乗りAll electric VTOL「Ehang 184」を発表、2018年に有人飛行を公開。2020年、中国民間航空局(CAAC)から商用パイロット運用許可を取得し、2020年8月から、オーストリア・リンツで「EHang 216」のUAM(都市型航空交通)試験運用を開始した。
ドイツのボロコプター
Volocopter GmbH(ボロコプター)が開発したAll electric VTOL「Volocity(ボロシティー)」は、世界で初めて有人ドローンとして欧州連合航空安全局(EASA)から設計組織承認(DOA)を取得し、2019年にはシンガポールで空飛ぶタクシーの有人試験飛行に成功している。
9基の独立した強制空冷式LIBシステムを搭載し、充電時間:120分以内、急速充電:40分以内で、最大飛行距離:27km、飛行時間:27分程度である。モーターとローターはそれぞれ18基が搭載され、ブラシレスの三相永久磁石同期モーターが採用されている。日本航空は合計100機の購入を決定した。
米国アラカイ・テクノロジーズ
2019年7月、米国Alaka’i Technologies(アラカイ・テクノロジーズ)が、液体水素を燃料とする燃料電池搭載の5人乗りAll electric VTOL「Skai(スカイ)」を発表した。緊急着陸用パラシュートがついており、燃料切れの場合にはオートローテーションに頼らず安全に着陸できる。
BMW傘下のデザインワークスと提携して、燃料電池駆動の回転翼を6基(計450馬力)搭載し、飛行時間:最大4時間、飛行距離:約644kmである。燃料補給は水素ステーションにおいて10分以内で可能としている。
日本のスカイドライブ
2020年8月、SkyDrive(スカイドライブ)と有志団体CARTIVATORは、All electric VTOL「SD-03」による有人飛行の公開試験を実施した。1人乗りで飛行時間は約4分間であった。ローターを4か所に配置し、1か所あたり2つのローターを電動モーターで回転して駆動力を生み出す。
2022年9月、開発中のAll electric VTOLの商用機「SD-05」のデザインを発表した。2人乗りで、最大飛行距離:約10km、最高巡航速度:100km/hで、日本で初の国土交通省の型式証明取得、2025年の大阪・関西万博での飛行実現を目指している。
機体の上部には、12基のモータとプロペラが配置されており、LIBシステムは米国Electric Power Systems, Inc製を採用する。また、2022年3月には、スズキと空飛ぶクルマの事業化を目指して連携協定を締結している。
回転翼機(ヘリコプター型)
オランダのパルヴィ・インターナショナル
PAL-V International B.V.(パルヴィ・インターナショナル)のエンジン駆動のSTOL「PAL-V Liberty(パルヴィ・リバティー)」は、地上走行時はメインローターを折りたたみ三輪車形状で走行し、飛行時にはヘリコプター形状に戻る。2020年11月には欧州公道での走行許可を取得した。
PAL-V Libertyは重量:664kg、寸法は走行時が全長4m、全幅2m、全高1,7m、飛行時は全長6.1m、全幅2m、全高3.2m、ローター径:10.75m。180m滑走して離陸、高度3500mを飛行速度:140~160km/h、飛行距離:400~500km、最大離陸重量:910kg、着陸滑走距離:30mである。
川崎重工業
2020年10月、モーターサイクル「Ninja H2R」のスーパーチャージドエンジンを搭載する無人VTOL機「K-RACER」の飛行試験に成功した。K-RACERは、直径4mのメインローターと、左右両舷に主翼やプロペラを持つ複合型ヘリコプターである。固定翼によりスピードを出せるのが特徴である。
現在、固定翼をなくした「K-RACER-X2」の開発を進めており、山岳輸送をターゲットに、無人VTOL機による自動運航で高度3100mの地点に200kgのペイロードを運搬でき、飛行距離:100km、サービス運行は2026年を予定している。
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