空飛ぶクルマ(Ⅰ)

航空機

 世界中で様々な「空飛ぶクルマ」が開発されているが、現時点で、空飛ぶクルマに明確な定義はない。無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる「ドローン」を乗車可能にしたものや、EVベースに翼・プロペラや自動制御システムを備えたものなどが開発されている。 

空飛ぶクルマとは?

 現時点で、「空飛ぶクルマ」に明確な定義はないが、一般には無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる「ドローン」を乗車可能にしたものや、EVベースに翼・プロペラや自動制御システムを備えたものなどが開発されている。
 中でも注目されているのは、「短距離離着陸機(STOL:Short Take Off and Landing)」「垂直離着陸機(VTOL:Vertical Take-Off and Landing aircraft)」と呼ばれており、その電動タイプは「eSTOL」「eVTOL」と略称されている。

 2018年8月、空飛ぶクルマの実現に向けた「空の移動革命に向けた官民協議会」が設立された。第1回協議会では日本において取組むべき技術開発や制度整備などについて協議が行われ、同年12月には実用化に向けたロードマップの素案が示されている。

 ロードマップでは、事業者による利活用の目標として2019年から試験飛行や実証実験を行い、実証結果や事業者が提示するビジネスモデルを踏まえて制度や体制の整備を進め、2023年を目標に事業をスタートさせ、2030年代から実用化をさらに拡大させていく方針を示した。

 特に重要な制度面では、実証実験の結果をフィードバックしながら、試験飛行のための離着陸場所や空域の調整・整備、技能証明の基準や機体の安全基準など必要となる制度について、国際的な議論を踏まえながら整備していく。

 また、2019年8月には、実証試験の促進などに向け「地方公共団体による空の移動革命に向けた構想発表会」が開催され、福島県、東京都、愛知県、三重県、大阪府の5都府県が空の移動革命に向けた構想を発表した。

 2022年3月には、2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)に導入される「空飛ぶクルマ」の運航計画の概要が発表された。会場と周辺の空港や大阪市内などを結ぶ8つの路線を候補とし、1時間に20便程度の運行を目指す。

空飛ぶクルマの分類

 世界各国で様々な「空飛ぶクルマ」が開発されており、図1には現時点での分類を示す。空飛ぶクルマは、固定翼を持つタイプか、回転翼(プロペラ)を持つタイプ、両機を複合化したタイプに大きく分類される。

図1  「空飛ぶクルマ」の分類

固定翼機

 主翼を持つのが特徴で、道路走行時は主翼を折りたたんで格納し、走行時に展開するのが一般的である。代表的な固定翼機をスロバキアのAeroMobilha(エアロモービル)が開発しており、2014年にプロトモデル「AeroMobil3.0」を完成させて試験飛行に成功し、欧州での飛行認可を取得している。

固定翼/回転翼複合機

 固定翼/回転翼複合機は、主翼を持っているが垂直離着陸が可能な航空機である。代表的な複合機を米国Kitty Hawk(キティーホーク)が開発しており、2019年6月にボーイングと提携している。2人乗り電動垂直離着陸機「Cora」の飛行はすべてコンピュータ制御で行われ、パイロットを必要としない。

回転翼機

 プロペラを持つ回転翼機は、ドローンをそのまま大きくして乗車を可能にしたドローン型と、道路走行を可能としたヘリコプター型に分けられる。ドローン型は個々の羽根の回転数を制御して移動するが、へリコプター型はメインロータが回転する位置で翼の傾きを変化させることにより移動する。

●ドローン型の回転翼機

 ドローン型の回転翼機は、ドイツのVolocopter GmbHが開発した「Volocopter(ボロコプター)」が著名である。世界で初めて有人ドローンとして欧州連合航空安全局(EASA)から設計組織承認(DOA)を取得し、2019年にシンガポールで空飛ぶタクシーの有人試験飛行に成功している。

●ヘリコプター型の回転翼機

 ヘリコプター型の回転翼機は、オランダのPAL-V International B.V.(パルヴィインターナショナル)が生産している「PAL-V Liberty」が著名である。地上走行時はメインローターを折りたたみ三輪車の形状で走行し、ヘリコプターの形状に復元して飛行する。

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