伸び悩むバイオマス発電の現状(Ⅳ)

再エネ

 資源エネルギー庁によると、2022年4月にフィード・イン・プレミアム(FIP)制度が始まり、2022年6月末時点でバイオマス発電所は全国560カ所、計361万kWが稼働した。(認定数量は、全国895カ所、計835万kW) 
 中でも、2012年以降には、東南アジアからの安価なパーム椰子やヤシ殻(PKS)などの輸入に基づき、バイオマス発電所285カ所の導入計画が進められている。2019年からは出力:11.2万kW以上の大型のバイオマス発電所が登場し、2021~2023年頃がピークとなる。

国内バイオマス発電の導入状況

 環境エネルギー政策研究所(ISEP)の調査では、固定価格買取制度(FIT)/フィードインプレミアム(FIP)の追い風を受け、2011年度に比べて、2021年度の太陽光発電の年間発電電力量は約18倍に増加し、天候などの影響を受ける太陽光発電と風力発電が総発電電力量に占める割合は10.4%に上昇した。

 一方、天候などの影響を受けにくい小水力発電、地熱発電、バイオマス発電についても年間発電電力量が占める割合は徐々に増加している。中でもバイオマス発電は2011年度と比較して3.7倍に増加しており、総発電電力量に占める割合は4.3%となった。

 第6次エネルギー基本計画で掲げた2030年度の再生可能エネルギーの達成目標は36~38%(内訳、太陽光:14~16%、風力:5%、バイオマス:5%、地熱:1%、水力:11%)であり、再稼働の進まない原子力発電と比べて、バイオマス発電の伸長は優等生であるかに見える。

図8 日本国内での自然エネルギーおよび原子力の発電量の割合のトレンド 出典:ISEP

バイオマス発電の導入状況

 1990年代にさかのぼって、バイオマス発電の導入状況を振り返ってみよう。

■経済産業省によると、バイオマス発電設備の導入量は1990 年代初期から徐々に増加した。その内訳は一般廃棄物発電(各自治体のごみ発電設備)と、産業廃棄物発電(製紙会社による黒液を燃料とした自家発電)が主体であった。
■2002 年、RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)が施行され、木屑、建築廃材、古タイヤ、廃プラスチック類を主とした固形燃料のRPFなどが開発され、地域からの産業廃棄物を燃料としたバイオマス発電が増加する。
■2004 年以降、木質バイオマス発電食糧・畜産などのバイオガス発電が増加するが、2008 年以降に経済性のある国内廃材が減少し、木質バイオマス発電は行き詰まる。
■2012年、東日本大震災後に固定価格買取制度(FIT)が始まり、東南アジアから安価なパーム椰子やヤシ殻(PKS)などを輸入して燃やす大型の木質バイオマス発電所の建設石炭火力発電所でのバイオマス混焼が急進する。
■2016年度末で、バイオマス発電の累積設備は出力:約417万kWに達した(石炭などの大規模混焼発電は除く)。2016年度に新規導入設備は出力:約33.3万kWで、内訳は木質バイオマス:28.2万kW、一般廃棄物発電:4.9万kW、バイオガス発電:1.1万kW、産業廃棄物発電:0万kW)である。
 燃料別内訳は、一般廃棄物発電が48.6%、産業廃棄物発電が27.9%で、いわゆる「ごみ発電」が全体の76.5%を占めた。累積導入量の伸びは、21.6%を占める木質バイオマス発電の影響が大きく、食品・畜産などは2%に留まる。
■バイオマス発電事業者協会によると、一般木質などを燃料とするバイオマス発電の導入量は2022年3月時点で271万kWである。2025年の導入量は2022年比で7割増えると見込むが、2025年から2030年までの5年間の伸び率は2割に留まるとした。

図9  日本国内でのバイオマス発電の導入状況と累積導入量 出典:ISEP

 資源エネルギー庁によると、2022年4月にフィード・イン・プレミアム(FIP)制度が始まり、2022年6月末時点でバイオマス発電所は全国560カ所、計361万kWが稼働した。(認定数量は、全国895カ所、計835万kW) 

図10 再生可能エネルギー固定価格買取制度におけるバイオマス発電の稼働・認定状況
出典:資源エネルギー庁資料よりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

 2012年以降に公表された木質バイオマス発電所285カ所の設備導入量(計画分を含む)の推移を示す。2019年から出力:11.2万kW以上の大型のバイオマス発電所が登場し、2021~2023年頃がピークとなる。 

図11 木質バイオマス発電の設置容量(計画分を含む) 出典:資源エネルギー庁資料

 使用燃料の内訳は輸入材の合計割合が48.3%に達し、その内、大型機(出力:11.2万kW以上)での使用分は15.8%である。国産材の合計割合は29.7%で、その内、大型機での使用分は1.9%とわずかである。石炭火力発電所での混焼分を含めると、輸入材は59%に達し、国産材は41%に留まる。

図12 木質バイオマス発電所の使用燃料の内訳 
出典:資源エネルギー庁資料 

 2012年以降、輸入材(木質ペレット、パーム椰子殻(PKS))の増加傾向が顕著である。木質ペレットは、2021年の311.7万トンから2022年の440.8万トンへと前年比41%の大幅な増加、PKSも435.4万トンから510.3万トンへと増加した。
 また、木質ペレットの2022年の平均輸入価格(CIF価格)は30.5円/kg、PKSは20.1円/kgであるが、2021年の木質ペレット19.7円/kg、PKS14.8円/kgから大幅に上昇している。

図13 パーム椰子殻(PKS)および木質ペレット輸入量の推移
出典:On-site Report No.548ほかよりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

石炭火力のバイオマス転換

 世界的な脱石炭火力トレンドが進む中、国内では2013年1月にイーレックスが、休止していた太平洋セメントの石炭火力を取得し、バイオマス発電に転換した。2021年6月には大手電力会社などから4基の石炭火力を買い取りバイオマス発電に転換する方針を発表している。

 2019年12月、中部電力、三菱商事エナージー・ソリューションズ、日本製紙は、出資する静岡県富士市の石炭火力(出力:11.2万kW)をバイオマス発電(出力:8.54万kW)に転換し、2022年4月の稼働を発表した。

 脱石炭火力を推進する欧米では、早くから石炭火力のバイオマス転換が始まっている英国の電力大手ドラックスは、2013年以降に保有する石炭火力6基のうち4基をバイオマス専焼に切り替え、2021年4月にはカナダのバイオマス燃料大手ピナクル・リニューアブル・エナジーを買収し、燃料確保を図っている。

 また、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーションは、2014年にオンタリオ州の石炭火力をバイオマス専焼に切り替えている。デンマークの電力大手オーステッドも保有する石炭火力7基のうち6基をバイオマス専焼に切り替え、2023年までに石炭火力の全廃をめざしている。

 プラント解体事業者によると、石炭火力発電所の休廃止工事には50億~100億円/基程度を要する。そのため、世界的に進む脱石炭火力のトレンドを受け、石炭火力を持つ発電事業者には、新電力などへの売却バイオマス発電への転換が、経済性を考慮した場合の道となる。
 高効率な最新鋭石炭火力発電への建て替えには1000憶円/基程度の投資が必要であり、いずれCO2回収・貯留(CCS)装置の設置を義務付けられるため、投資の判断は難しい。

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