原発の再稼働は遅れてはいない!
2021年10月、第6次エネルギー基本計画が閣議決定された。
原子力に関する対応は、「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」との方針のもと、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」として進められてきた。(第六次エネルギー基本計画から)
2012年に発足した原子力規制委員会は、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、環太平洋火山帯に位置して地震や火山、台風など自然災害が多い日本の原発の安全性確保のため「新規制基準」を策定して実施し、原子力村と揶揄された閉鎖的な組織からの脱却を目指して活動を行っている。
その結果、2030年度の野心的な目標である全発電電力量に占める原発比率20~22%に対して、2020年度で原発比率は4%である。既に、原発全33基中の10基を再稼働させ、定期点検や安全対策による停止状況を考慮すると、厳重な安全審査のもとで地元の理解を得ながら着実に再稼働は進められている。
また、再生可能エネルギーに関しては、2030年の野心的な全発電電力量に占める比率36~38%に対して、2020年度で20%(地熱および新エネ12%+水力8%)と飛躍的に増加していることは、図2からも明らかである。
実際に、電力需要ひっ迫が生じた6⽉27⽇〜7⽉1⽇の東京電⼒管内の発電量は、7割前後を⽕⼒発電が占める⼀⽅、揚水発電を含む⽔⼒、太陽光、風力など再生可能エネルギーが3割前後を占めていた。
一方で、明らかに遅れているのはCO2排出量の観点から削減が期待される火力発電である。2030年の目標であるLNGが20%、石炭19%、石油など2%に対して、2020年度でLNGが39%、石炭が31%、石油などが6%で、この10年間で削減はわずかである。
電力需要ひっ迫の隠れた原因
図2から明らかなように、日本における年間発電電力量は、2010年以降は微減傾向にある。これは民間における再生可能エネルギーの導入も影響しているが、実質的には企業を主体とした省エネ努力の結果と認識されている。この10年間は電力需要は増えていないのである。
この10年間に電力需要が増えていないのに、なぜ電力需要ひっ迫が起きたのか?
今夏は異常気象による気温上昇と、たまたま補修点検による火力発電所の停止時期が重なったのが電力需要ひっ迫の原因とされているが、隠れた原因としてに太陽光発電や風力発電など出力変動の大きい再生可能エネルギーが急増し、その出力変動分を主に火力発電によって調整している点があげられる。
出力変動の大きい再生可能エネルギーの導入に際しては、電力貯蔵システムの導入が不可欠である。しかし、新たな設備投資が必要なため大容量電力貯蔵システムの導入は遅れ、既存の火力発電と揚水発電により出力変動調整を行い、オーバーフローした再生可能エネルギーを電力会社は買い取らない。
再生可能エネルギーを急増させた分だけ出力変動調整用の火力発電を必要とする矛盾が、電力需要ひっ迫の隠れた原因である。定格出力で高い効率を出すよう設計された火力発電機器を使って、低効率となる出力変動運転や出番待ちの待機運転を行っている現状を早急に解決する必要がある。
必要とされる容量に応じて、図3のように各種の電力貯蔵システムが開発されている。再生可能エネルギー向けの中小容量電力貯蔵システムとしては各種の蓄電池が、普及が遅れている大容量電力貯蔵システムには水素電力貯蔵、蓄熱発電などが期待される。
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