英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用のため、経済性が見出せないとし、高速炉を開発せずに、使用済核燃料を直接処分する方針を打ち出してた。
一方、日本は当初の計画をはるかに超える再処理工場への投資や、原型炉「もんじゅ」の大失敗にも懲りずに、高速炉の実証炉開発をめざし、将来的には再び高速増殖炉の開発をめざすとしている。莫大な費用を必要する核燃料サイクルの開発を再開するには、当然のことながら確実な見通しが必要である。
核燃料サイクルの抱える課題
軽水炉サイクルを実現するための再処理工場の中核施設である青森県六ケ所村の核燃料の再処理工場の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したが、許認可手続きと安全対策などで、2022年9月には26回目となる工事完成の延期を発表。日本原燃は「2024年度のできるだけ早くに操業」と宣言した。
再処理工場の建設費は当初計画の4倍の3兆1000億円になり、建設開始から2040年頃までの総事業費は14兆4000億円と多額である。
また、2018年6月、日本原子力研究開発機構(JAEA)の東海再処理施設(1981~2007年に約1140トンの使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理を実施)が、福島第一原発事故を発端に新規制基準が施行され1000億円を超す安全対策費が見込まれたため廃止を決定した。
総廃止の総費用は約1兆円と試算され、作業は約70年の長期にわたり、機器や配管の除染、機器の解体や廃棄物の搬出、建屋の洗浄などが行われる。再処理は核燃料の切断や溶解、分離精製など様々な工程があり、300億~800億円/基の商業用原発の廃炉に比べ、桁違いに膨大な費用が見込まれる。
一方、高速炉では、使用済み燃料から再処理工場でプルトニウムを分離・回収して製造されたMOX燃料を高効率で燃やすことができる。しかし、1994年に初臨界を達成した原型炉「もんじゅ」では、トラブルが相次ぎ2016年に廃炉が決定した。
総事業費約1兆1313億円をかけて開発した「もんじゅ」は運転実績がほとんどなく、現在、解体作業中である。2047年の廃炉完了までには、さらに3750億円を要する。
英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、高速炉を開発せずに、使用済核燃料を直接処分する方針を打ち出している。
一方、日本は当初の計画をはるかに超える再処理工場への投資や、原型炉「もんじゅ」の失敗にも懲りずに、高速炉実証炉の開発を目指し、将来的には再び高速増殖炉の開発を指向している。莫大な費用を要する核燃料サイクルの開発を再開するには、当然のことながら確実な見通しが必要である。
コメント