軽水炉で燃やした使用済み燃料を直接に廃棄処分する場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを含むために全てを「高レベル放射性廃棄物」として処分することになる。一方、使用済み燃料の再処理を行うことで高レベル放射性廃棄物を減らすことができ、放射線の影響を1/10程度に低減できる。
なぜ、高速炉を開発するのか?(2)
核燃料サイクルのメリット
「軽水炉サイクル」を使わずに使用済み燃料を直接処分する場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを含む使用済み燃料を全部「高レベル放射性廃棄物」として処分する必要がある。一方、使用済み燃料の再処理を行えば高レベル放射性廃棄物を減らすことができ、放射線の影響を1/10程度に低減できる。
将来的に「高速増殖炉サイクル」が確立できれば、核兵器に転用可能なプルトニウムを効率よく燃やすことができ、プルトニウム燃料の増殖ができる。特に、使用済み燃料中の半減期の長い超ウラン元素(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)も、燃焼させることができ、放射線廃棄物の低減が期待できる。
原子力を平和利用に限る日本は、余剰プルトニウムを保有してはならない。そのため、使用済み燃料中のプルトニウムを再び核燃料として利用する核燃料サイクルを確立する必要がある。国際社会から疑念を持たれないよう、余剰プルトニウムの非保有を示す必要がある。
プルサーマル計画の現状
日本では、使用済み燃料を再利用できる高速炉開発には早くから取り組んできたが、発電ができる原型炉「もんじゅ」の開発に失敗した。そのため原子力政策では、民間事業として「軽水炉サイクル」を確立し、将来に向け国レベルで研究開発を推進して「高速増殖炉サイクル」を確立すると改変した。
福島第一原発事故以前からプルサーマル計画は進められ、日本原子力発電敦賀原子力発電所1号機、関西電力美浜原子力発電所1号機で実証試験が行われた。
その後に、東京電力福島第一原子力発電所3号機、九州電力玄海原子力発電所3号機、中部電力浜岡原子力発電所4号機、四国電力伊方原子力発電所3号機、北海道電力泊原子力発電所3号機、関西電力高浜原子力発電所3、4号機でプルサーマル運転が進められた。
福島第一原発事故以降は、2023年2月時点で再稼働した四国電力伊方原子力発電所3号機、関西電力高浜原子力発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3号機でプルサーマル運転が進められている。2020年12月、大手電力会社は、新プルサーマル計画を策定し、2030年度までに少なくとも12基の計画を掲げた。
現在、建設中断している電源開発の大間原発(138.3万kW)はMOX燃料100%で運転できる。しかし、他の認可原発ではMOX燃料は全燃料の1/3程度しか使えないため、大幅なプルトニウム削減には至っていない。
再処理工場の現状
ところで、軽水炉サイクルを回すためには、青森県六ヶ所村で日本原燃が建設を進めている「六ヶ所再処理施設」を稼働させる必要ある。六ヶ所村には、1992年から操業しているウラン濃縮工場と低レベル放射性廃棄物埋設センター、1995年から操業している高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターある。
しかし、施設の中核である核燃料の再処理工場の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したが、許認可手続きと安全対策などで、2022年9月に26回目となる工事完成の延期を発表。日本原燃は「2024年度のできるだけ早くに操業」とした。MOX燃料工場も、2024年度上期に竣工の予定である。
六ヶ所再処理工場が完成すれば、フル稼働時には約800トン/年の使用済み燃料を処理できる。使用済み燃料は各原発などで管理保管されており、2023年の総量は約1.9万トンに達している。全施設の管理容量は合計約2.4万トンのため約80%にまで達している。遅れている再処理工場の早期の稼働が待たれる。
ところで、六ケ所再処理工場の操業が大幅に遅れたため、長年にわたり再処理は英国とフランスに委託している。既に再処理は終了しており、現在フランスにあるプルトニウムはMOX燃料にして徐々に送り返されている。英国ではMOX燃料工場がトラブルで閉鎖したため、プルトニウムは英国で貯蔵されている。
2020年12月末の日本のプルトニウム保有量は、英国に21.805トン、フランスに15.411トン、日本国内に8.854トンで、合計46.07トンである。この量は、IAEAの計算方法に従えば核兵器5800発分に相当する。
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