カナダは北部遠隔地域でのエネルギー源として小型軽水炉(SMR)と新型炉に注目しており、カナダ原子力研究所、3州(オンタリオ州・ニュー・ブランズウィック州・サスカチュワン州)への導入を推進している。
英国では、Rolls-Royce(ロールス・ロイス)が主導する企業連合が、小型軽水炉「UK-SMR」の開発を推進している。一方で、政府は先進モジュール炉(AMR)の開発に向け、TokamakEnergyの核融合炉、Westinghouse Electric Company UKの鉛冷却高速炉開発、U-Battery Developmentsの高温ガス炉を選定した。
カナダの新型炉の開発現状
カナダ原子力研究所(CNL)の導入計画
カナダ政府は北部遠隔地域でのエネルギー源として小型軽水炉(SMR)と新型炉に注目しており、2018年11月にロードマップを策定し、2020年12月にアクションプランを公表した。
2026年までに、カナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトあるいはホワイトシェル・サイトに実証炉を建設する計画で、2018年に溶融塩炉のTerrestrial Energy、高温ガス炉のStarCore Nuclear、Global First Powerチーム 、U-Battery カナダの4社が選定され、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が審査中である。
なお、Global First Powerチームは、カナダGlobal First Power(GFP)、カナダOntario Power Generation(OPG)、米国USNCで構成。U-Batteryカナダは、ウラン濃縮大手の英国URENCOが率いる企業連合のカナダ支社。Terrestrial Energy(TEUSA、テレストリアル・エナジー)は、カナダを本拠地とする米国企業。
州政府の導入計画
2019年12月、3州(オンタリオ州・ニュー・ブランズウィック州・サスカチュワン州)の州政府がカナダ国内でSMR を開発・建設するための協力覚書を締結。これを受けて、2021年4月、3州の電気事業者が共同で実施したSMR開発の実行可能性調査結果が公表された。また、アルバータ州も協力覚書に参加した。
オンタリオ州では、GEH 製の小型軽水炉「BWRX-RX300」(電気出力:30万kW)の初号機を、2028年までに建設する。また、次フェーズで最大4基のSMRの最初の1基を、2032年までにサスカチュワン州内で完成させる。
ニュー・ブランズウィック州では,米国ARC 製のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」(電気出力:10万kW)の実証炉を2030年までに完成させる。
また、英国Moltex Energy製の燃料ピン型溶融塩炉「SSR-W:Stable Salt Reactor-Wasteburner」(電気出力:30万kW)と廃棄物リサイクル施設を、2030 年代初頭までに稼働可能にする。
2024年1月、カナダのプロディジー・クリーン・エナジーは、米国ウェスチングハウス(WH)と協力し、2030年までにWH製マイクロ原子炉「eVinci」(熱出力:1.4万kW、電気出力:0.5万kW)を搭載する洋上可搬型原子力発電所の、カナダでの初の設置をめざすと発表。
ヒートパイプ冷却式原子炉「eVinci」の燃料交換は約8年間隔で、単一または複数の原子炉を搭載した可搬型発電所を、海岸線の設置場所に曳航して設置し、60年後の運転終了時に撤去する。既に、概念設計と規制要件の調査は完了している。
英国の新型炉の開発動向
英国では、Rolls-Royce(ロールス・ロイス)主導の企業連合が、既存技術をベースにPWRタイプの小型軽水炉「UK-SMR」(熱出力:127.6万kW、電気出力:47万kW)の、2031年運転開始を目指している。
一方で、2017年12月、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、次世代新型原子炉プログラム開発で世界のリーダー的地位を獲得するため、原子力産業界に対する包括的支援公表し、「AMR実行可能性・開発プロジェクト」を開始した。
英国政府は、2018年から先進モジュール炉(AMR)の実行可能性調査を進め、2020年7月、最終的に核融合炉開発でTokamakEnergy、鉛冷却高速炉開発でWestinghouse Electric Company UK、高温ガス炉開発でU-Battery Developmentsの3社を選定した。
また、2020年11月、CO2排出量実質ゼロ実現のため、「グリーン産業革命に向けた10ポイント計画」を発表。計画には先進原子力基金(最大3.85億ポンド:SMR設計開発に最大2.15億ポンド、AMR研究開発に最大1.7億ポンド)の創設が含まれ、2030年代初頭までにSMR初号機とAMR実証炉の導入をめざす。
2021年7月、BEISは「グリーン産業革命に向けた10ポイント計画」と「エネルギー白書」に基づき、2030年代初頭までの「AMR RD&Dプログラム」を発表。最も有望なAMRとして、高温の熱利用が可能な高温ガス炉を選定し、実証スケジュールを公表した。
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