日本メーカーの動向
現時点でEVシフトは世界的なトレンドであるが、BEV市場での日本勢の存在感は薄い。2021年に24万8000台を販売した日産自動車・ルノー・三菱自動車連合でもBEV比率が3%と低く、本田技研工業は1万5000台を販売しBEV比率が0.3%、トヨタ自動車は1万4000台を販売しBEV比率が0.1%である。
経済産業省が究極のクリーンエネルギーとして水素を重視する姿勢を鮮明にし、水素の運搬やFCEV開発で日本の技術の優位性を生かせるとして普及策拡大や予算増額などを進めているが、FCEVへの過度な傾倒はガラパゴス化を危惧する声が高まっている。
日産自動車
2020年1月、新型BEV「リーフe+(イープラス)」を発売した。蓄電池容量を既存モデルの40kWhから60kWhに増やし、航続距離を322kmから458kmと42%も伸ばした。モーターの最高出力は110kWから160kWへ45%引き上げ、価格は416万2320円と472万9320円(2グレード)である。
また、2022~2026年の5年間で電動化に約2兆円を投じ、2030年までにBEV15車種を含む計23種類の電動車を発売し、販売車種に占める電動車割合を全世界で半分以上に高める方針を表明した。
2022年5月、スポーツ用多目的車(SUV)「アリア」を発売した。アリアB6(WD)は価格:539万円、最高出力:160kW、航続距離:最高470kmで、テスラのモデルY(RWD)の643万円、220kW、507km、メルセデス・ベンツのEQA250の733万円、140kW、423kmと遜色のないレベル。
2022年5月、軽自動車タイプのBEVの発売を日産自動車と三菱自動車が表明している。日産自動車「サクラ」と三菱自動車「eKクロスEV」は、航続距離:最大180km、価格:230~290万円台(国からの補助金:最大55万円)と低コストである。
三菱自動車
2022年3月、2030年に世界販売に占める電動車の割合を50%にする目標を掲げる三菱自動車は、2024年からタイ工場(年産能力:約40万台)で生産する乗用車をすべて電動車にすると発表した。
ガソリン車が中心の東南アジアでも電動化が加速してきており、乗用車はPHEVやBEVのみを市場投入し、商用車を除きガソリン車の販売を停止する。すなわち、商用車のピックアップトラックはディーゼル車の製造を続け、タイから輸出する乗用車の一部にガソリン車を残す可能性はある。
本田技研工業
2021年6月、GMと共同開発した大型SUVタイプのBEV「プロローグ」を2024年に北米で販売すると発表した。また、2022年4月には量販価格帯(3万ドル以下)のBEVを共同開発し、2027年以降に世界で発売する計画を示した。
GMが開発したリチウムイオン電池「アルティウム」を使い、車台や生産設備の共通化も進める方針で、これまでの北米限定から、国内や中国、欧州などに販売エリアを拡大していく方針を示した。
2022年4月、今後10年間でBEVを含めた電動化やソフトウェアなどに5兆円を投じ、2024年に商用の軽EVを発売するなど2030年までにBEV30車種を投入、200万台/年以上のBEV生産を目指すとした。
トヨタ自動車
2022年3月、初の量産型BEV「bZ4X」を発売した。また、2030年までに研究開発や設備投資に4兆円を投じて、2030年までに小型車から大型SUVまで30車種を発売し、BEVの世界販売目標を350万台/年とした。加えて、急速充電器も2025年をめどに全国のトヨタ販売店に設置する方針を示した。
2020年に発売した小型スポーツ用多目的車(SUV)「UX300e」に続き、2022年4月には、高級ブランドのレクサスで初のBEV「RZ」を発表した。航続距離:450kmである。2035年には全レクサスをBEVにする方針を示している。
スズキ自動車
2022年3月、インド西部グジャラート州の乗用車工場隣接地にBEVと車載用蓄電池の新工場建設を発表した。約1500億円を投じて2025年から順次に開設し、インド市場への軽EV投入を計画している。世界販売の半分を占める屋台骨のインドからBEVの本格展開を始め、出遅れを巻き返す。
同様に、ダイハツも2025年までに軽EVの発売を計画している。
SUBARU
2022年5月、(株)SUBARUは電気自動車(BEV)の工場を新設すると発表した。スバル初の量産BEV「ソルテラ」はトヨタ自動車に生産委託するなどでEVシフトが遅れていたが、2025年を目途に群馬県矢島工場にBEV組立ラインを併設、2027年以降に大泉工場内にBEV生産建屋の建設を目指す。
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