2020年前後の環境規制とメーカー動向

自動車

 地球温暖化問題に端を発した環境車対応への移行は、2000年前後に各国・各地域でCO2排出量の抑制を目指した規制強化が進められた。日本と米国はHVEを中心に、中国と欧州はBEVとFCEVに、重点を置く方針を表明し、それぞれの国や地域の実情に応じた電動化(EVシフト)目標を設定している。

日本の環境規制とメーカーの対応

 2020年9月、米国カリフォルニア州ではガソリン車の新車販売を2035年までに段階的に禁止して、州内で販売する全ての新車をゼロ・エミッション車両(ZEV:Zero Emission Vehicle)とすることを義務付けてた。ZEVとはBEVとFCEVであり、過渡レベルの車両TZEVはHEVとPHEVである。
 段階的目標は、2022年はZEV8%、TZEV4%で、2025年にはZEV16%、TZEV6%と増加させて、2035年にはTZEVとされたHEV、PHEVは新車販売を不可、BEVとFCEVのみ新車販売を可能とした。

 2022年8月、米国カリフォルニア州環境当局は、2035年にガソリンのみで駆動する新車の販売を全面禁止する新たな規制案を決定した。今秋にも正式決定する。
 ZEVの規制値として2026年式は35%、2030年式は68%、2035年式は100%とし、段階的にガソリン車の販売比率を引き下げる。規制値を満たさなかった車メーカーには、未達成分について1台あたり最大2万ドル(約270万円)の罰金が科される。
 新規制案ではBEV、FCEV、PHEV(電池だけで約80km以上走行可)がZEVとして認められた。PHEVを算入する場合には規制が要求するZEV販売台数の20%以下に抑える。また、規制値を満たせない車メーカーが超過して達成した他社からクレジット(排出枠)を購入する仕組みはない。

 また、2020年11月には、中国政府が2021年から新エネルギー車(NEV:New Energy Vehicle)に関するNEV規制を実施しており、2035年にガソリン車を廃止、新エネルギー車50%以上、それ以外はHEVなどの環境対応車とする方針を公表している。
 これを受け中国汽車工程学会が示したロードマップでは、2025年に全新車販売台数に占めるNEV(BEV、FCV、PHV)の割合を20%前後、2030年にはNEVの割合を40%、HEVを45%、2035年にはBEVを新車販売の主流にし、新車販売の50%以上をNEV、残り全てをHEVにする方針を示した。

 2021年1月には、日本政府が2035年までに乗用車の新車販売の全てを電動車にし、純ガソリン車を廃止する方針を表明している。この電動車にはHEVが含まれており、2035年以降もHEVの新車販売は可能としている。また、東京都は都内でのガソリン車の新車販売について、乗用車は2030年までに、二輪車は2035年までにゼロにすることを目指すとしている。

 以上の国海外の環境規制強化を受け、国内の自動車メーカーが新たな方針を公表している。

2021年1月に日産自動車は、2030年代早期に世界で販売する全ての新型車をBEV、HEVなどの電動車にする目標を打ち出している。同12月には2030年度までに世界で販売する新車のうちBEVなど電動車の販売比率を5割にし、米国では4割に高めるとした。

2021年4月には、本田技研工業が2030年までに北米で販売する新車の40%をBEV、FCEVとし、世界で販売する新車の全てを2040年までにBEV、FCEVにする目標を打ち出した。HEVは販売しない方針である。

2021年5月、トヨタ自動車は2030年にHEV、BEV、FCEVなどの電動車を世界で800万台販売し、このうちBEV、FCEVは200万台を目指す新たな電動化の目標を打ち出した。

欧州の環境規制とメーカーの対応

 2021年7月には、欧州連合(EU)全体で温暖化ガスの排出量を55%削減することを表明しており、自動車分野の規制については走行中のCO2排出量を2035年までに100%削減し、HEV、PHEVを含めて事実上エンジン車の販売を禁止するとした。
 ノルウェーは2025年でZEVの100%、スウェーデンは2030年でガソリン車とディーゼル車を0%、オランダは2030年にZEVの100%を表明した。また、パリ市は、2030年にガソリン車の市内乗り入れ規制を表明。英国は2035年としていたHEVを除くエンジン車0%の目標を、2030年に前倒ししている。

以上の環境規制強化を受け、EU内の自動車メーカーが新たな方針を公表した。 

2021年7月にはドイツのフォルクスワーゲン(VW)が、2030年までに新車販売の半分以上をBEVとし、2040年にほぼ全てで排ガスを出さないZEVとし、子会社アウディをBEVに特化すると表明した。

〇メルセデス・ベンツを製造するドイツのダイムラーは、2030年までに新車販売をBEVのみにすると公表した。

〇スウェーデンのボルボはBEVメーカーになる方針を公表しているが、PHEVなどエンジンを使った発電機能を備えた車種が残る可能性はあるとしている。

〇BMWは、2001年に自社ブランド化したMINIをBEVメーカーにし、BMWの車種すべてにBEVの選択肢を設けると公表した。

 その後、2022年6月、欧州議会は2030年までに欧州連合(EU)域内の温暖化ガスを1990年比で55%減らす目標の実現に向けた複数の関連法案を採決した。2035年までにガソリン車など内燃機関車の新車販売を事実上禁止する法案を賛成多数で可決した。今後、加盟国からなる理事会で合意して法律として成立する。

米国の環境規制とメーカーの対応

 2021年8月には、米国が2030年までに乗用車・小型トラックの新車販売の50%をZEVとする目標を発表している。すなわち、乗用車と小型トラックをBEV、FCEV、PHEVなどの電動車にする方針を明らかにした。

〇これを受けて、ゼネラル・モーターズ(GM)フォード・モーター、クライスラーの親会社ステランティスも同調し、新車販売に占めるZEVの比率を2030年までに40~50%に引き上げるとした。

〇特に、GMは2025年までに北米のBEVの生産能力を100万台超にし、2030年までに北米の生産能力の50%をBEVに転換すると表明し、さらに2035年には新車のすべてを走行中に排ガスを出さないZEV(BEVとFCEV)にする方針を出した。

コメント

タイトルとURLをコピーしました