何故、急速に高まる核融合熱!(Ⅸ)

再エネ

 核融合スタートアップ各社の開発動向についてレビューを続ける。日本発のスタートアップである京都フュージョニアリングEX-Fusion(エクスフュージョン)、Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)の3社をレビューする。

京都フュージョニアリング

 2019年に設立された京都フュージョニアリングは、京都大学発の日本初となる核融合ベンチャーで自社で核融合炉そのものの建設を担うのではなく、核融合炉に不可欠な消耗の激しい部品の開発・生産、コンサルティングに特化した企業として注目されている

 炉内部で中性子と反応して熱エネルギーを取り出すブランケット、マイクロ波でプラズマを加熱するジャイロトロン、プラズマ反応で生成される不純物を排気して未反応のトリチウムを取り出す機能を持つダイバータなど、消耗が大きく2~3年で交換が必要な部品に有効な商品である。

 2020年代末を目指して、ユーザーと核融合設備の検討ができる試験プラント UNITY-1 (UNique Integrated Testing facilitY for fusion 、サーマル/パワーサイクル)、UNITY-2(核融合燃料サイクルのためのUNITY統合試験施設)を設置する計画を公表している。
  UNITY-1向けには、2023年にはSiCf/SiC(炭化ケイ素複合材料)モジュールモックアップや、SCYLLAトリチウム増殖ブランケットのプロトタイプを設置している。

 2021年10月には英国、2023年2月には米国に現地法人を設立して、スタートアップや関連事業者との接点を増やし、受注活動を活発化している。

 2021年11月には、UKAEAへ核融合炉技術を提供する受注契約を締結した。英国オックスフォード近郊カルハムの核融合炉実験施設(MAST:Mega Amp Spherical Tokamak)のアップグレード計画に、2周波数帯のジャイロトロンを納入する。
 また、英国が2040年に稼働を目指す商用核融合炉のプロトタイプを建設する計画(STEP)にも、設計段階から参画することが決定している。

 2023年3月、UKAEAと核融合開発における連携協定を、カナダ原子力研究所(CNL:Canadian Nuclear Laboratories)と核融合開発のための共同研究契約に向けたMOUを締結した。

 2023年5月、政府系ファンドのJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱商事や三井物産、関西電力のグループ会社など17社から、105億円の資金調達を発表した。

EX-Fusion(エクスフュージョン)

 2021年に設立されたEX-Fusionは、大阪大学発の核融合スタートアップで、レーザー核融合の商用炉開発を目指している。2029年に商用炉の技術実証を完了し、2035年に原型炉(出力:200MWe)、2045年に大規模商用炉( 1.4GWe)を建設する計画を掲げている。

 レーザー核融合では高出力レーザーを短時間に繰り返し照射し、断続的に核融合反応を起こす必要がある。1秒間に約10回の核融合反応を目指して技術実証のため世界初の実証炉を大阪に建設し、2030年代の商用炉開発に向けて技術の蓄積を進めている。

 2023年7月、ベンチャーキャピタル(VC)など11社を引受先とする第三者割当増資で18億円を調達した。増資は大手VCのANRI、ニッセイ・キャピタル、デライト・ベンチャーズ、三井住友海上キャピタルなどが引き受け、事業会社のニコンも加わった。今回の資金調達で実証炉の開発を加速する。

 レーザー核融合は燃料球へのレーザー照射数を秒単位で調整することで、発電量の調整が可能であり、太陽光や風力など変動性再生可能エネルギーと組み合わせた電源としての期待も大きい。
 米国核融合産業協会の報告書(2022年7月)によると、世界で核融合関連の企業は30社を超え、資金調達額は計48億ドルに上る。このうちレーザー核融合に取り組むのは世界で6社程度とみられる。 

Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)

 2021年に設立されたHelical Fusionは、核融合科学研究所発のスタートアップであり、ヘリカル型磁場閉じ込め核融合炉の開発を進めている。核融合炉に必要な部材や要素技術の実証を進め、2027年に実験炉、2034年に原型炉(出力:50~100MWe)を建設・運転する計画を掲げている。

 これまで核融合科学研究所が実証してきたプラズマ技術などを応用して、核融合炉を構成する機器を開発する。プラズマ中の不純物を排気するダイバーターや、プラズマを閉じ込めるための超電導マグネット、中性子を受け止めて熱を回収するブランケットの開発で強みを持つ。

 ダイバーターやブランケットには液体金属を循環させることで効率的に熱回収でき、メンテナンスの頻度を下げられる。また、高温超電導大電流導体「STARS(スターズ)」を開発し、超電導マグネットのコンパクト化を進めている。2023年4月には、約8億円の資金調達を実現している。

 数ある核融合ベンチャーの中で、トカマク型磁気閉じ込め核融合炉をベースに高温超電導(HTS)コイルを採用する米国Commonwealth Fusion Systemsと英国Tokamaku Energyと、FRC型プラズマ方式核融合炉を目指す米国のTAE TechnologiesHelion Energyが、資金調達面と技術開発面から一歩先んじている。
 国内核融合ベンチャーでは、京都フュージョニアリングが、コア部品の開発・生産で受注を進めており、注目度が高い。

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