水素エンジン車の開発動向(Ⅱ)

自動車

 1970年 、武蔵工業大学(現東京都市大学)が、水素燃料でレシプロエンジンを駆動し、1975年、液体水素燃料で米国 SEEDラリー出場 して2800kmを走破した。
 2006年、マツダはロータリーエンジンの「RX-8ハイドロジェンRE」をリース販売した。デュアルフューエルシステム採用で、水素とガソリンのどちらでも走行できる。

過去を振り返る

 1970年 、武蔵工業大学(現東京都市大学)が、水素燃料でレシプロエンジンを駆動した。1975年、液体水素燃料で米国 SEEDラリーに出場 して2800kmを走破。2009年、日野自動車・岩谷産業の協力で水素エンジンバス(排気量:4728cc)を開発し、ナンバープレートを取得して走行を実現した。

 2006年、マツダはロータリーエンジンの「RX-8ハイドロジェンRE」をリース販売した。デュアルフューエルシステム採用で、水素とガソリンのどちらでも走行できる。 110L 、350気圧の 高圧水素と 61Lガソリンタンクを搭載し、航続距離は水素 100km/ガソリン 549kmであった。
 2009年には、ロータリーエンジンのハイブリッド車「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」をリース販売した。水素ステーションがない時代で、デュアルフューエルシステムを採用した。

図7 マツダのロータリーエンジン車「RX-8ハイドロジェンRE」

 2006年、ドイツBMWは、既存のガソリン用5リッターV型12気筒エンジンを搭載した7シリーズをベースに、レシプロエンジン車「ハイドロジェン7」を100台限定でリース販売した。液体水素8㎏/ガソリン74Lタンクを搭載したデュアルフューエルシステムを採用し、航続距離は200km程度であった。

図8 BMWの液体水素タンクとガソリンタンクを搭載した「Hydrogen 7」
出展:BMW

 2013年4月、アストンマーティンもオーストリアのアルセット・グローバルと共同開発した水素/ガソリンのデュアルフューエル車「ラピードS」で、ニュルブルクリンク24時間レースに出場した。ツイン・ターボの6リッターV型12気筒エンジンがベースである。

 2015年にミュンヘンで起業したスタートアップKEYOUは、既存トラック・バスの水素エンジン化を進めた。2022年9月IAA Transportationで、水素エンジン搭載の18トントラックと12mシティバスを一般公開した。エンジン寿命は最低70万kmとし、航続距離は500km以上であった。
 既存のディーゼルエンジンの一部を、水素用に適合した燃焼室/圧縮機・インジェクター・点火システムを備えたシリンダーヘッドに交換し、ターボチャージャー、燃料供給系統排気ガス再循環エンジン制御システムなどの追加・見直しが行われて、NO問題も解決した。

 2021年、ドイツで事業者団体「水素エンジン連盟」が発足した。 エンジンメーカーのDEUTZ、パワートレインのAVL、トラックのMAN、水素インフラのBP、産業界、大学・研究所から約30団体が加盟し、水素エンジン車の普及・拡大を目指す。

水素エンジン自動車の開発

 2022年6月、トヨタ自動車は、「水素エンジン車」の市販を目指すと発表した。2021年5月からカローラで耐久レースに参戦して技術実証を続けている。新型Mirai向けの水素タンク(圧縮水素:70MPa)を後部座席と荷室に4本詰め込み、排気系のNOx処理の開発を進めた。
 この水素カローラは、水素タンクや水素をエンジンに導く補機類を新型MIRAIから流用し、エンジンは「GRヤリス」を転用、ただし、デンソー開発の水素インジェクターを取り付けて水素直噴エンジンとし、4WDシステムで4輪を駆動する。

図9 水素エンジン車には新形MIRAIの水素タンクを後部座席と荷室に搭載

 2022年8月、ベルギーのイープルで開催された世界ラリー選手権(WRC)第9戦で、トヨタ自動車が開発中の水素エンジン車「GRヤリス」がデモ走行を実施した。欧州での初披露である。

 2022年9月、フラットフィールド・東京都市大学・トナミ運輸・北酸・早稲田大学アカデミックソリューションは、環境省の2021年度「水素内燃機関活用による重量車等脱炭素化実証事業」を行い、水素エンジン車に改造したトラックでディーゼルエンジン並みの出力を得られたと発表した。
 2022年度後半には富山県で耐久試験を実施し、2026年度の販売を目指して、ベース車両の70%以上の積載量を確保するための車両開発を継続している。

 2023年5月、トヨタ自動車は、富士スピードウェイの24時間耐久レース決勝に液体水素燃料のカローラで参戦し、燃料の搭載量を増やし航続距離を従来の約2倍とした。液体水素タンクは二重真空層構造で、容量は140L、質量は160kgである。
 液体水素(沸点:-253℃)タンクへの補充・保存技術が鍵で、プレ冷却システムや高圧ポンプ、減圧弁、配管、温度調整部、水素液面センサーなど周辺装置も増える。液化すると密度は3倍になり貯蔵スペースも小さくなるが、停止中も極低温を維持するための電力が必要である。

図10 レースに参戦した液体水素エンジン車(富士スピードウェイで)
出典: 読売新聞

 2023年5月、Daimler Truck(ダイムラートラック)・トヨタ自動車は、三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の統合で基本合意したと発表。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)領域のうち、電動化で規模のメリットを生かすことを目的とした。
 トヨタ自動車は、「商用車の未来を共に作るのが狙いで、両社の統合により商用車の電動化を加速させる。水素モビリティーの普及にも取り組む」と宣言した。

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