政府は、EVの充電時間を短縮するために200kW超の高出力急速充電器の普及を目指し、2023年をめどに従来規制を50kW超の低出力普通充電器と同じ扱いにすると発表した。企業ではAI技術を導入するなどで、充電時間の短縮や充電料金の低減に向けた開発が進められている。
急速充電器の普及対策
政府は2030年に15万基のEV充電器(普通充電器12万台+急速充電器3万台)の整備を目指して、設置に補助金を出している。今回、200kW超と高出力の急速充電器の普及を目指して、2023年をめどに規制を50kW超と低出力の普通充電器と同じ扱いにする。
現状、20kW以下のEV充電器の設置に規制はないが、安全面から20kW超では電気絶縁性など一定の要件を満たす必要があり、50kW超では建築物からの距離などの制約がある。200kW超は変電設備となり、屋内では壁や天井を不燃材料で区画し、設備形式によって運営者など特定の人しか扱えない。
EV用充電器の開発動向
日産自動車
2022年1月、AI技術を使い再生可能エネルギーの安い時間帯にEVを充電する実証実験を、福島県浪江町の商業施設「道の駅なみえ」で開始した。再生可能エネルギーの出力変動対策にEVを蓄電池として利用し、EVの充放電を自立的に行うシステムを組み合わせて系統電力の安定化を目指している。
道の駅の電力使用量や再生可能エネルギーの発電量に応じ、リーフ5台の蓄電池残量や使用状況(走行距離、出発時刻など)を考慮して車両に優先順位をつけ、必要なタイミングで充放電する。これによりピーク使用量を下げて電気代を抑える。2025年度をめどに自治体や企業向けの実用化を目指す。
米国グラビティー
2022年4月、米国スタートアップのGravity(グラビティー)はAI技術を使い、低電気料金の都市型急速充電ユニット(最大出力:360kW)を開発した。長さ約99cm×幅46cm×奥行き20cmとコンパクトで、オプションにより床、壁、天井へ取り付けるができ、ケーブルは液冷却方式を採用している。
電気料金は充電サイト全体のピーク電力で決まる。開発した充電ユニットは、スマートメーターから建物の電力需要を把握し、各車両の電力需要を考慮して優先順位を付け、各充電器に柔軟に電力を配分してEVに充電することで、サイト全体のピーク電力を下げて電気代を抑える。
アークエルテクノロジーズ
2022年10月、アークエルテクノロジーズは三菱オートリースの本社ビルでEVスマート充電サービスの実証実験を始めた。建物の電力消費量や太陽電池の発電量の予測、各車両の電気残量や今後の走行計画などの多様なデータを使い、EV1台ごとに充電時間帯や充電量を調整して電気料金を低減する。
多くのEVが同時に充電を行うとピーク時の電力使用量が増えるが、AI技術を活用することで2020~2021年度に実施した実験では電気料金を25%程度低減できた。充電サービス利用料はEV1台あたり2000円/月程度とし、2022年12月にテクトムと業務提携して2023年春にサービスを開始する。
パワーエックス
2022年10月、パワーエックスは伊藤忠商事、スズキなどと提携し、来夏から急速充電器事業を本格展開すると発表した。開発した急速充電器は安価な大型蓄電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)を搭載し、蓄電池内で電気を高圧に変換することで一般の急速充電器に比べ短時間充電が可能である。
岡山県玉野市に蓄電池工場を建設しており、2024年から出荷する計画である。まず、蓄電池を搭載した急速充電器は都内を中心に10カ所に設置し、2030年までに全国7000カ所に拡大する計画である。
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